第60話 増える魔皇
教会前でアキナと別れ、そのまま教会に入った。
ソフィアとモニカがいるなら、パーティへの参加の有無と空いている日を直接聞けそうだしな。
教会に入ると、入口付近にはモニカではない年配のシスターさんがいた。
ソフィアとモニカがまだいるか聞いてみると、ソフィアはいつもの部屋に、モニカは作業中のようだ。
モニカを呼んできましょうか? と尋ねられたので、作業の区切りいい時にソフィアのいる部屋に来てほしい、と伝言をお願いした。
シスターにお礼を告げソフィアの部屋に向かうと、そこにはソフィアとメイがいた。
……本当にいつも来ているな。
「こんばんわ、ソフィア、メイ。ちょっとソフィアに確認したいことがあるんだが」
「すみません、ハクトさん。スリーサイズは測ったことがないのでわかりません」
「いや、全然違うよ!」
突然何を言い出すんだろうか。
というか、異世界にその概念はあるのだろうか?
……まあ、漫画からの知識だるうな。
「……ハクト、さいてー」
「メイ!? いや、だから違うからね!」
いつもならソフィアにつっこんで終わりなのに、今日はメイが反応してしまった。
「……ふふ、冗談」
と、なんとなくいたずらっぽい表情で笑っていた。
……びっくりさせないでほしい。
というか、異世界の漫画で変な知識を覚えてないか心配になってきた。
いや、ソフィアじゃないし大丈夫か。
「えっと、それでな。さっきクレアから連絡があったんだけど、内容としてはな……」
と、魔道具の完成を祝うパーティを開催すること、関係者だけのパーティであること、友達の参加も可、ということを説明した。
もちろん、魔道具を使ったショートケーキが出ることも説明したぞ。
ソフィアにとっては多分、一番重要だろうからな。
「そうでしたか。もちろん参加します。現在は予定もないですし、ハクトさんも行くのであれば、それを理由に断れますので」
……もし重要な仕事がきても、俺をダシにしてパーティに参加しそうだ。
まあ、異世界から来た人の案内、って言うとかなり重要そうに聞こえるけどさ。
「ですが、その日はこの部屋も閉めなくてはなりませんね。メイさん、すみませんがその日はお休みになります」
「……大丈夫。……それより、私も参加したい、かも。……シュートケーキ、気になる」
メイも食べるのが好きだからな。
というわけで、魔皇おひとり様追加です。
ユズは気絶しないように頑張れ。
……まあ、メイなら大丈夫な気もするけど。
といった感じで話していると、部屋のドアがノックされた。
「あの、モニカです。ハクトさんからこちらに来てほしいと伝言があったのですが、入って大丈夫でしょうか?」
「あ、モニカにもパーティの話をしようと思って呼んでたんだった」
一応ソフィアに確認をとりつつ、モニカに入室を促した。
「こんばんわ、ハクトさんとメイさん。ソフィア様、お部屋にお邪魔しますね」
モニカにも、ソフィアに説明した内容を一通り話した。
「そうですね。数日後の開催になった場合ですが、三日後と次の日にお休みをいただくことになっています。他の日ですと急に休んでしまうことになり、残念ですが難しそうです。……あ、王族の方からの招待をお断りすることになってしまうかもしれません。ど、どうしましょうか?」
モニカの言葉を聞いて思ったけど、、俺の知り合いは皆フットワークが軽いよな。
イズレは自分で店をやってるし、アキナは多分うまく調整しているんだろう。
そして、ヒカリ以外の魔皇は結構ヒマみたいだし。
……それでいいのかは、ちょっと疑問が残るけど。
そして俺は、この世界で観光しているような感じだからな。
「関係者だけのパーティだし、クレアの性格も考えても大丈夫だと思うよ。それに、ちゃんと皆の予定を聞いてるしな」
数日後に開催だ! 来ない奴には罰を与える! とか理不尽すぎる。
……でも、物語にはそういった話もいっぱいあるんだよな。
俺が迷い込んだ世界がここでよかったよ。
本当に。
◇
とりあえず闇魔皇が参加を希望したこと、俺とソフィア、メイは調整するのでいつでも大丈夫であること、それとモニカの予定をクレアに連絡しておいた。
「でそろそろ夕食の時間ですね。よろしければ、ハクトさんとモニカさんも一緒に食べていきますか」
教会に入る頃には日が暮れていたし、そんな時間だろうな。
「ソフィア様たちと夕食ですか! ぜひご一緒したいです! あ、でもまだ少し作業が残っていますので、それが終わるまでお待たせしてしまいますね……」
あ、モニカがすごく反応した。
……そういえば、前にも同じようなことがあったな。
「これから調理しますので、少しの作業であれば大丈夫だと思います」
「も、もしかして、ソフィア様が調理をするのですか!?」
「そうですね。それと、最近はメイさんにも手伝ってもらっています」
お、メイは引き続きソフィアの調理を手伝っているんだな。
「あ、俺も何か手伝うよ。といっても難しい作業はできないけどな」
「ソフィア様と皆さんで調理を……。わ、私も急いで作業を終わらせて手伝いに来ますね! それでは失礼します!」
と、モニカは急いで部屋を出ていった。
◇
今日はモニカもいるということで、メイは自分が得意な煮込む料理を作りたいようだ。
煮込むと言えば、今日のお昼食べたお肉はおいしかったな。
煮込む、お肉といえば定番のあれかな?
「煮込むと言えば、豚の角煮とかはどう?」
「……一度、ソフィアと作ったことがある。……できれば、まだ作ったことがない料理がいい」
うーん。
作ったことがなさそうな煮込む料理か。
しかも、できればメインの料理がいいよな。
あ、角煮といえば、あれはどうだろう?
「それなら、魯肉飯はどうだ? ソフィア、作り方は知ってる? それと、特殊なスパイスが必要だったと思うけど、持ってるか?」
「ええ、どちらも大丈夫です。スパイスは、以前杏仁豆腐を作った時の残りがありますので」
確か八角とか言ったかな?
こっちの世界にもあってよかった。
まあ、厳密には違うかもだけど、同じような味であれば大丈夫だろう。
ということで、今日は魯肉飯に加え春雨のスープを作ることになった。
メイがお肉を煮込んでいると、モニカが戻って来た。
モニカに魯肉飯について説明すると、途中で出た杏仁豆腐に興味を示したので、デザートに追加することになった。
もちろん担当はモニカだ。
ソフィアが材料について説明していたが、杏仁豆腐は本来ゼラチンや砂糖、牛乳などに加え、本来は杏仁の粉を使うそうだ。
ただ、それは手に入らなかったようで、アーモンドの粉で代用したみたいだ。
そういえば、杏仁豆腐の材料って全然知らなかったけど、杏仁ってそもそも材料名だったんだな。
まさか、異世界で知ることになるとは思わなかった。
……まあそもそも、異世界に来るとは思わないから当たり前か。
完成しさっそくいただくと、魯肉飯はとろとろになった豚肉と甘辛い味、八角の香りが絶妙なバランスでとってもおいしかった。
杏仁豆腐もスープも、もちろんおいしかった。
というわけで、今日の夕食も大満足だった。
ごちそうさまでした。
食事を終え、帰りがけにソフィアがモニカに、
「もしよろしければ、これからも一緒に食事をしますか? 人数が多いと様々な料理が作れますので」
と提案していた。
モニカは、お昼は予定が合うかわからないが、夜であればぜひご一緒したい、と嬉しそうに話していた。
よかったな、モニカ。
◇
次の日の朝、部屋でのんびりとしているとさっそくクレアから連絡が来た。
とりあえず二日後に開催、難しければ翌日という予定になったみたいだ。
……これ、もしかしなくてもモニカに合わせて予定を決めたな。
魔道具で連絡してもいいが、教会はすぐそこだし直接伝えに行くか。
ということで、教会の入口付近にいたモニカに予定を伝えた。
そういえば朝はいつもここで会うな、と思い、モニカに聞いてみたところ
「午前中は、教会にいらっしゃった方を案内する担当ですので」
と教えてくれた。なるほどな。
◇
次はソフィアとメイだな、メイは今日は来ているかな、なんて思いながらソフィアの部屋を訪ねると、メイはいたのだが……、
「おう、ハクト! おはようさん」
「あら、ハクト。おはよう」
と、ホムラとレイも来ていた。
ホムラは新しい魔法を考える参考のために、レイは色々な武具や変わった武術を探すためにソフィアの本を読んでいたようだ。
まあ、物語も楽しんでいたみたいだけど。
「それと、メイから聞いたんだがパーティをやるんだってな。アオイを通じて参加したいことを伝えてもらったぜ」
あ、魔皇がさらに一人追加された。
「私は、ちょっと悩んだけど遠慮することにしたわ。関係者じゃない魔皇が多く参加するのはちょっと迷惑かと思ってね。それに、色々とやってみたいことがあるのよ」
と、刀で鬼と戦う漫画を見せながら言われた。
なるほど。
「それに、食事がメインのパーティだしな。お酒が色々出るなら、レイも参加しただろうな」
「まあ、そうね。……もしそうだったら、魔皇がいっぱいでも、なるべく迷惑にならないようにするわ」
……なるほど。
ということで、レイ以外に明後日開催で問題ないことを確認し、クレアに連絡しておいた。
すると、すぐに返信が返ってきたので、確定したことを皆に伝えた。
……そういえば、今日は送られてきた内容がシンプルだったな。
おそらく、メアリさんが監修していたんだろう。




