191_悪い人では
祟さんによると、昨晩帰宅してからすぐに、琥太郎が選り分けた水晶とアメジストに魔素を取り込ませて充填する作業に取り掛かったそうだ。結果としては、以下の順で充填出来た魔素の量が多かったらしい。
1-琥太郎が「気」を取り除いた石
2-あまり「気」が纏われていなかった石
3-中間の石
4-初めから多くの「気」が纏われていた石
それぞれのグループごとに明確な差が出た事で、琥太郎の目利きや能力にあらためて感服した祟さんが、興奮して早朝から電話をかけてきたようだ。
それぞれの石から取り除いた「気」は霊気に似たような感触ではあったものの、微妙に霊気とは違っていて、もしかするとこれが祟さんの言う魔素というものだったのかもしれない。祟りさんによると、地域によっては魔素の事をマナと呼んだりもするそうだ。
取り除いた「気」が魔素だったのであれば、魔素自体も琥太郎は問題なく操作出来るという事になるので、たとえ何かしらの魔術が発動されたとしても問題なく対処できるだろう。まあそれ以前に、何かしらの意図を持って魔術が発動されたのであれば、そこには間違いなく殺気や邪気などといった術者の「気」が乗っているはずだ。そのため琥太郎は、魔術自体への対応に関しては他の「気」の操作同様になんとかなるだろうと考えていた。
「琥太郎さん、また今度鉱石を仕入れに行くときには是非ご一緒していただけませんか?あるいは、出来れば琥太郎さんのもとに仕入れた鉱石を持参しますんで、またそこから「気」を取り除いたりはしてもらえないでしょうか。琥太郎さんに「気」を取り除いてもらった鉱石があれば、行使出来る魔術の質がとんでもなく上がりそうですし、今まで発動出来なかった更に難易度の高い術だって出来る可能性が高まるんです。是非協力してはいただけないでしょうか。」
「う~ん、ごめんなさい。それはちょっと遠慮させてもらっていいですか。祟さんのお仕事に協力するって事は、誰かを呪う事に協力する事になっちゃうじゃないですか。それはやりたくないです。もともと滝井さんに呪いをかけていたっていうのはありましたが、今はそれを止めて、逆に魔術に関する事を教えてくれたりもしてくれたので、昨晩のようにちょっと俺の能力をお見せする程度の事であれば構わないですけど、明らかに誰かを呪う事に協力するといった事であれば、さすがにそれは控えさせてください。」
その後もしばらく、「呪いとは直接関係のない魔術の研究なんかもしてますから…」などと言って祟さんが粘っていたが、結局琥太郎が首を縦に振る事は無かった。祟りさんの話を聞いた感じでは、確かに祟さんは呪いに関してだけでなく、純粋に魔術自体への興味や情熱も強く持っているようだった。とはいえ、琥太郎が協力して実現出来た魔術が、いずれ何かしらの呪いへとつながってしまう可能性もあるので、結局琥太郎は全て断る事にしたのだった。
「「……う~ん、協力は全て断っちゃったけど、魔術の事だって結局いろいろと教えてくれたし、他人を呪ってるって事を除けば決して悪い人では無さそうなんだよね。あの情熱とか能力をもっと別の事に注げばいいのになぁ……」」
祟さんからの電話を切った後も、琥太郎はそんなような事を考えながら、何か呪いと全く関係ないところで協力してあげられる事があれば、協力してあげたいとも思ったのだった。
その後、いつものように朝食の用意をしてくれた流伽に、美澪と一緒に流伽が働いているところを見に行ってもよいか訊ねてみたところ、それは構わないとの事だった。ただ、最近は結構お店が込んでいて忙しい事が多いので、あまり相手をする事が出来ないかもしれないとも言っていた。流伽によると、早めの時間帯であれば比較的空いている事が多いらしいので、なるべく早めの時間帯の訪問がいいらしい。流伽のバイトは夕方6時頃からで、お店は一応夜7時オープンという事になっている。琥太郎の仕事終わりに美澪と会社前で待ち合わせをして、そのままお店に向かえば問題ないだろう。




