神竜の顕現 3
尋常な戦闘力ではない。だが、狩り手の武器を使いこなす1位級竜と思えば倒せない相手ではない・・はず!
背に相当な負傷をして全身を魔術的な炎で焼かれていたのは不可解だが、仲間割れだろうか?
「なぜ生きているっ??」
慌てふためく竜教徒。
「パニオから苔の治療薬を1つもらっていた。・・ヒバ。この終極に、無粋な真似をしたな」
竜教徒に歩み寄り始めるショウゲン。
「くっ、苔めっ・・。転送しろっ! どうしたっ? 既に天意簒奪のゴブレットは確保したっ。転送せよっ!!」
呼び掛けるが現れた時の様には転送されない竜教徒。
「既に私の手の者が島内のお前の隠し拠点を制圧している。お前の物見の魔法式の位置と出入りのエリアの情報はコルジオから知らされていた。今となってはどこまで知った上で泳がせていたか、怪しい物だがな」
「鳥っ! くそっ、くそっ!!」
と、我々とショウゲンのブーストウェポンが力を取り戻した!
ベルトに上着か何かの切れ端で括り付けていた狩り手の大剣を抜いて展開させるショウゲン。
竜教徒は仰け反った。
「待てっ! わかった・・敗北を認めるっ。少し夢を見ただけではないか? ショウゲンっ、長く死線を潜った仲だろう? デュフッ、私は、竜教の教主の座に収まれればそれで十分だ。譲歩するっ! 次の世界の平定にも、お前の理想の形の世界の創造にも、協力しよう! 世界を半分、いや! 3分の2、お前が支配すればいいっ。デュフフッ、どうだ?? 」
「お前は、神竜の干渉を受けない契約をしてしまった稀有の存在。その上、浅はかな野心・・捨て置くワケにはゆかないっ」
焼け付くような闘気を放つショウゲン! ブーストグレートソードが業火を宿したっ。
「ヒィイッッ!! 待てっ! 待ってくれっ。あっ、そうだ! こうしようじゃあないか? ショウゲンっ、次の世界でお前が手に掛けた弟夫婦と姪によく似た人間の個体を作ってやろう! お前に従順で、適度に無能な」
ゴォオオオオゥゥッッッ!!!!!
ショウゲンは業火の大剣を振り下ろし、2つの割った竜教徒と機械の杖を焼き尽くした。
「・・見苦しい所を見せた」
ショウゲンは燃える剣を手に振り返った。私は狩り手の槍を構えた。
「ちょっと! ショウゲン君っ、もっと他にやり方がなかったの? 貴方は神竜に勝たせたかっただけなんでしょう?」
サクヤ師匠が間に入った。
「・・竜教が神竜の身体を発掘した。これに呼応して悪意の化身である原始巨人も活性化しだした。他のやり方は、無かった」
「父さん達と話し合えなかったのか?!」
「巨悪を倒す為に世界を滅ぼすことに同意は得られなかった」
「原始巨人を倒すだけでは済まないのか? いや、そもそも神竜は善なるモノなのか?」
ベラニオ司令も狩り手の大長刀を手に話に加わる。
「神竜は原始巨人を倒し世界を再創造する存在で、それ以上の意思は無い。原始巨人によって呪われたこの世界の竜とは違う」
竜達が呪われていた?? 我々は戸惑った。
「神竜が戦っているのはヤツの思考だ。ヤツの肉体はこの雲界その物! ヤツを倒すには思考を滅した上で、この世界を別の世界に造り変えて存在を抹消するしかない」
どよめきが起こる。
「天意簒奪のゴブレットは魔術師達が使えばいい。竜と契約しない限り魂の個、の保全は難しいが・・障壁を解除しろ」
ショウゲンが命じると天意簒奪のゴブレットというらしい赤い杯を覆っていた障壁が消えた。
「既に、今の世界での私の使命は達せられた」
そう、言い切った。
「いい加減にしてくれっ! 勝手に始めて勝手に終わらせる・・認められるワケがないだろうっ?!」
自分ではコントロールできない程の激情だった。私はブーストランスの封印を解いた! 柄も穂先も石突きも、外装が鱗状に変質し、さらに光に変わって剥がれ散り、内部から目映い光の槍が出現した。
握る私の身体に竜化の兆候が現れだした。
「キリヒコっ!」
「坊っちゃまっ?!」
「おおいっ?」
師匠、ヤッポ、ノノイを動揺させてしまった。
「お前も竜の血を強く引いていたか・・」
「父さんの工房に残されたお前の剣を鍛えた1位竜を遺骸に使った! 私の命を糧に力を高めるっ、砕け散る魂の槍とでも名付けようかっ?!」
「待ちなさいってっ、もう争っても!」
「サクヤ」
ベラニオ司令が師匠の肩を掴んだ。
「もう道理では無い。私も愚直な弟子の後始末を付けたいが、キリヒコを差し置けん」
「師匠、司令、すいません。あの人が次の世界というのに必要な人材なんだろうな、というのもわかってます。ですが、やはり引けませんっ!」
「坊っちゃまっ! 盾をっ」
ヤッポは泣きながら、留め具で固定したベルトごと竜鱗盾を投げ渡してくれた。すまない。
「ありがとうっ、ヤッポ!」
私は背に盾を固定する形でベルトを通し、光の槍を構えた。
「・・来い、キリヒコ!」
「ショウゲンっ!!」
互いに突進し、瞬間的に放たれたショウゲンの業火の38連撃の重さを、私はより速い光の槍の51連撃で相殺したっ。
足元の床と周りの空気が消し飛ぶ! 私とショウゲンは暗黙の了解で魔力だけで真上に飛び、天井と上階構造物を打ち抜いて飛行島の城のような廃墟の上空、結界の内側ギリギリまで来た。
結界の外では神竜と原始巨人が世界を破壊しながら争っていた。止められはしない。
「オオオオォーーーッッッ!!!」
力を溜めるショウゲンっ。
「ハアアァァーーーッッッ!!!」
私も槍の光を高めた!
ガガガガガガガガガッッッ!!!!!
互いに神速の攻撃を打ち合うっ。炎と光が爆ぜ合った!
私の魂も磨り減るが、ショウゲンも相当に磨り減っているっ!! 不毛な戦いかもしれないっ。だが!
「なぜっ! 話し合えなかった?! いやっ、あの鍵の箱が必要ならば研究所から盗み出せばよかったろう?!」
「・・竜避けの護りが強く、私では近付けなかった。あの時点での活性化した原始巨人は我々を広く監視もしていた。対策も未開発だった。いくつも陽動し、どうにかあの状況を作った。もっと上手いやり方はあったのかもしれない。だが、事実以外はなかった」
私の光の槍を業火の剣に打ち付けた。
「妹が死ぬ必要はなかったろうっ?! 竜に郷の人々を襲わせる必要もなかったっ」
「そう、だな・・すまなかった」
「ぐっ!!! 簡単にっっ!!! 謝るなっ!!!!」
もう、復讐かどうかもわからない。私は命を削って、空を駆け、攻撃を繰り返した。
ショウゲンの攻撃も一撃一撃が必殺の大火力であった。
神竜と原始巨人の争いも佳境のようであった。原始巨人は多くの腕を失い、疲弊していた。神竜が、勝つのだろう。
結局、我々のギルドでの日々は、いや、この世界の営みはなんだったんだろうか? 言ってみれば途上であった。ということか? 霧の中の、虚しい幻だったのか・・
いやっ、違う! 我々は、世界の大きな運行の為だけの歯車だったワケじゃないっ!!
「セァアーッッ!!!」
一際強く命を使って、ショウゲンの業火の剣を損傷させた。
それでも大振りでできた隙をショウゲンは逃さず、カウンターを打ってきたが、私はありったけの魔力を込めた竜鱗盾の障壁で受けるっ!
ガキィイイッッッ!!!!
盾は砕けたが、受け切ったっ。業火の剣に更にヒビが入る。
「っ!!」
私はその一点を逃さず、生涯最高の精度と速度で、砕き散る魂の槍を突き出した! ショウゲンの業火のブーストグレートソードを砕き、その既に傷痕のある胸部から背までを再び打ち抜いた。
槍の閃光が走った。
「見事」
ショウゲンは吐血し、竜化は解けていった。




