竜教の洞窟 3
私がまず迎撃に向かった。
「風よっ!」
左手で竜鱗盾を構えつつ、槍に付与した風に乗って突進してきた竜の腕を持つ男とかち合う。凄まじい放電だ。
「狩り手かっ! 思慮の無いヤツらだっ。現状を繰り返すことで思考を止めている!」
灯り蕗を蹴散らしながら交戦する。葉の縁は結晶になっているので砕け散ってゆく。
「キリヒコっ! 新手も来たぞっ」
手練れらしい竜教徒が2人、通路から灯り蕗の原に飛び込んできた。
竜の翼を持ち飛行する2丁拳銃使い、竜の尾を持つ大剣使いの2人だ。
「あのゴツいのはあたしと蛙でやるっ!」
「ゲコぉっ!」
蛙も戦力に入れたノノイは大剣使いに向かった。
「じゃあ、飛んでる方に私を5人使うよ。残り3人は散会っ!」
マメ5人は翼の拳銃使いの方に向かい、残り3人は小さな蜂に変化して素早く群生し背の高い灯り蕗のに紛れ込み、気配を消す。
「悪いがいまいち主旨がわからない。竜教も分派が多い。辺境以外では穏健派もあるが・・」
「あんな日和見どもと一緒にするなっ!」
口から雷の息を吐く男。盾を携帯していてよかった。様子を見れる。
戦闘慣れしてる上に頑丈。軽く数発胴体や頭部に入れたが、通っていない。
途中で戦った8位級竜も硬質型だった。電撃の由来は不明だが飼育している竜の血肉を取り込んだというところか。
「勝手に侵入したのは悪かったと思わないでもないが、しかしワケもわからず争うのも不毛だ。思考、とは?」
「・・・」
こちらが聞き出しに掛かっているのが露骨だった為か、激昂気味の男が急に冷静な顔になって口を閉ざし、攻撃に専念しだした。
しまったな。対人戦の駆け引きの感覚が掴めない。
闘争的な存在である竜はいざ戦いとなると駆け引きなんて無意味だからさ。基準がおかしいのかもしれないが。
時間を掛ければまた増援が来る。ヤッポ達の仕込みはまだか? 取り敢えず昏倒させるか? 捕縛して尋問しても口を割るようタマにも見えないが・・。
等とややまごついていると、
「鋼よっ!」
灯り蕗の茂みの中からマメ達の声が響き、地から噴出した多数の鋼の槍が竜の腕を持つ男の手足を貫いた。
「ぐあっ?!」
貫いただけに止まらず、電撃が鋼の槍に吸い取られてゆく! 蕗原の向こうの水路で放電が見えた。
「のぉおおっ?!」
「ふっふっふっ・・」
灯り蕗の茂みからマメが3人出てきた。悪い顔をしている。
「その鋼は軽く帯電させていい感じにした上で水路まで繋げてあるよ? 魔法使いに準備させると、ロクなことにならないからねぇ? ホホホッ!!」
「ホホホッ!!」
「ンホホホッ!!!」
揃って笑って勝ち誇るマメ達っ。画に圧がある・・。
ともかく、私は磔にされた形の竜の腕を持つ男に向き直った。
「もう1度聞くが、思考、とは? この階層奥には巨人を封じる結界らしいのもあるようだな。下級巨人でも飼っているのか?」
「トロルだと? ハッ! せいぜい自分の目で確かめてみろっ」
男は挑むように言って長い舌を噛む素振りを見せた!
「っ!」
私は無詠唱で氷の力を乗せた狩り手の槍を振るって竜の腕を持つ男を凍結させて一先ず封じた。
「これだけ竜化していれば死ぬことはないだろ?」
「相変わらずキリヒコは甘いよねぇ。・・ちょっと減らそ」
3人のマメはシュポンっ! と1人に合体した。
「君が本体だったのか?」
「さぁ、どうかな? ふふふっ」
「・・ま、いいが」
私はマメの相手をするのはそこそこ苦手だっ。翼を持つ拳銃使いと交戦するマメ達と、尾を持つ大剣使いと交戦するノノイ達を振り返る。
マメ5人は2人が障壁を張って銃撃から守り、1人が旋風を操って飛行を妨害し、残り2人が追尾する魔力の矢を放って相手を追い詰めていた。
ノノイの方はちょうど狩り手の斧で大剣を砕き、蛙が舌で相手の顔面を撃って怯ませ、追い打ちでノノイが側頭部を蹴り付けて昏倒させていた。
蛙のおかげで? 手加減が利いたようだ。
マメ5人も最後は3人掛かりで衝撃波を撃つ魔法で岩壁まで吹っ飛ばし相手を昏倒させていた。
「強いな、マメ達」
「近接でワッ! って来るヤツじゃなかったらまぁなんとかなるよ」
魔法使いだしな。やたら単独行動するマメ自体、特異だ。
「キリヒコ、マメは確保したけど、どうする? 奥まで行っとく? スー達の手筈も確実ってワケじゃないしな」
「ゲコっ」
「う~ん」
判断材料がもう1つだな。
「いや、奥は確認した方がいいよ。ヤバいの隠してるなら、ここまでカチ込まれたら仕掛けてくるでしょ? 途中で変化がバレちゃったけど、あの魔法式は解除に相当手間取る。相手に時間を与えない方がいいんじゃない?」
「マメが真面目なこと言ってる!」
「ゲコぉ?」
「言うさっ! ガルルッ」
ここで、
「何何っ?」
「どこまで話した?」
5人のマメ達も集まってきた。
「ややこしいからまず、1人になってくれマメ」
「えー?」
「誰が本体だっけ?」
「私?」
「いや私でしょ?」
マメ達は揉め出したがなんだかんだでシュポンっ! と1人に合体した。
それと、ほぼ同時に、
ズズズズッッッ!!!
洞窟全体が揺れたっ。
「おっ、スー達、上手く始められたっぽいな!」
ノノイは事前に近くの高台の窪地に雨水が溜まった大きな池を見付けていて、その縁から順々に洞窟の入り口近くまで電波式の爆弾を仕込んでいた。
これをヤッポ達が低い位置から順に起爆させてゆき人為的に鉄砲水を誘発させ、洞窟の入り口に流し込む! という策だった。
上手くいったか? 水は上から下に落ちる。上階から下階と騒動は伝わる。
最終的に最下層まで落ちてくるだろうが、最下層の構造的に水は地下水脈に落ちる。その過程で巻き込まれるリスクはあるが、なんとかなる! という大雑把な策でもあった・・。
「これでやたら囲まれたり、応援にきたペーペー達がゴロゴロ倒れることもないだろ?」
「よ~しっ、行こうじゃん?」
「ゲッコっ」
「ただ、ここが単なる生活拠点で何も無かったら、我々は一体・・」
「竜教は竜を肯定してるし子供も拐う! 敵だっ」
「善悪は不確か! しかし報酬は確実っ」
「う~む・・」
成し崩し気味ながら、我々は洞窟が少々揺れる中、撃退した上位竜教徒? を取り敢えず鉄砲水の被害に遭い難そうな所に一応移し、最下層の奥の対巨人らしい封印のあるエリアへ向かった。




