セクハラ神の謎 21:00
18.最終試練
呼吸を整えた知らないゴミが【心身燃焼】を打つ。燃え上がった赤い輝きを目印に、湯船に没した剣を素早く回収してセクハラ神を追う。
メメリュは混乱している。浴衣の前をキッチリと閉めて少しでも肌が見えないように縮こまる。
メメリュを庇ってワニワニが前に出る。神をも恐れぬ女だ。
「死んじゃえー!」
ゴツいこん棒でセクハラ神をめった打ちにする。
天罰が下る。
知らないゴミどもが吹っ飛んだ。ワニワニがこん棒を振り下ろすたびに知らないゴミどもの身体が跳ねる。
セクハラ神の触手がワニワニに迫る。
どんなに殴ってもびくともしないセクハラ神にワニワニは涙目になる。目の前でくねっと柔らかな曲線を描いた触手に小さく悲鳴を上げる。
メメリュが跳んだ。生足を晒すのも構わず、高く。全身を稲妻が迸り、残像が尾を引く。
「んぁっ、やっ……!」
引き結んだ唇から艶かしい声を漏らしながら、セクハラ神の頭上をとる。ひねりが足りない。ブンと腕を大きく振って旋回する。
セクハラ神の触手が刎ね飛んだ。
メメリュの着地はお世辞にも達者なものとは言えなかった。遠心力が足りていない。わたわたと両手をバタ付かせるも、堪えきれずに足が滑って尻もちを付く。切り飛ばしたセクハラ神の触手がボテっと近くに落ちる。
「で、できた……?」
スライドリードの二段階目を初めて使えたのかもしれない。
時間差で知らないゴミどもの片腕が刎ね飛ぶ。
セクハラ神はじっとメメリュを見つめていた。
メメリュがハッと我に返り、剣を杖にして立ち上がる。魔力にはまだ余裕がある筈だが、初めてのスライドリード(速い)が心身に与える影響は大きく、足元がふら付いている。二度目のパンチラ殺法はあるまい。
たっぷりと間を置いてからセクハラ神の触手にびきりと亀裂が走った。
無限の生命力を持つ神の身体にダメージが……!?
セクハラ神は愛を司る神である。
それゆえに……愛を否定しない。
友のために振るった刃を、神罰の対象とはしない。
メメリュとワニワニの友を思う心が……奇跡を起こしたのだ!
亀裂が触手伝いに這い上がり、びきびきとセクハラ神の身体に大きなひびが走る。
それは完全であるがゆえの脆さだった。
繊細で緻密なものほどたやすく壊れる。
やがて、亀裂のあとを追うように触手がボロボロと崩壊していく。
知らないゴミどもに関しても全員似たようなものだった。再生が追い付かないだの何だのと騒いでいる。
セクハラ神が大きな一つ目をゆっくりと閉ざしていく。
【見事だ。弱き人の子らよ。その気持ちを、いつまでも忘れないことだな……】
セクハラ神の身体がボロボロと崩れ、風化していく。
亀裂が大きな一つ目に達する前に、セクハラ神はスッとまぶたを開けてワニワニを見た。
ガムシャラにこん棒を振るっていたワニワニの浴衣は着崩れ、胸の谷間が覗いていた。
セクハラ神様はにっこりと笑った。
亀裂が目に達し、全身が砕ける。
そして……。
「わわっ!」
倒れ込んだ俺の身体をワニワニが抱きとめた。とっさのことに頭が回らなかったらしく、俺の体重を支えきれずにべしゃっと潰れた。浴衣の薄い生地越しにワニワニのおっぱいが俺の頭に押し付けられる。
……チッ、位置取りミスったな。ワニワニよりもメメリュのほうがスタイルがいい。俺は気絶しているふりをした。
セクハラ神様の天罰を全て肩代わりして風化した知らないゴミどもが命の火を燃やして復活する。
信じられないといった様子で呟く。
「か、勝ったのか……」
知らないゴミCがワニワニに駆け寄って俺をお姫様抱っこした。
さわんな。メメリュがいい。俺はそう思ったが、この場は狸寝入りするしかない。
地面がグラグラと揺れる。
「く、崩れるぞ……!」
特に根拠はないがラスボスを倒すとラスボスの居城は崩れるものなのである。
そして脱出経路など特に用意していなくともなんとなく走れば外に出れるものなのである。
メメリュとワニワニが手を繋いで脱衣所に駆け込んでいく。知らないゴミAとBがあとに続く。俺を抱きかかえているCは最後に一度だけ振り返った。その場のノリでセクハラ神様を討伐したものの、よくよく考えてみれば特に戦う理由はなかったのだろう。
「神は滅びない、か……」
未練を断ち切るように前を向く。
早く来いと手を振る仲間たちに一つ頷き、浴場をあとにする。
彼らが立ち去る寸前、浴場に取り残されたエロ本が淡く輝いた……。
19.山岳都市ニャンダム-ティナン姫の屋敷
てな訳でよ、ひでー目に遭ったぜ。
帰還した俺はライブ会場を抜け出してアットムと合流した。
いくら勅命があるとはいえ良い子のティナンは寝る時間だ。
残念ながらパーティーへの飛び入り参加は間に合わなかった。
パーティー会場の片付けをしているアットムくんの手伝いをしている。
「コタタマ、ここに居ていいの? まだライブはやってるんでしょ?」
いいの、いいの。もう俺があいつらにやってやれることは何もねーよ。アイドル解放戦線の連中が暴れてるようだが、まぁ大丈夫だろう。放っておこう。
俺とアットムはテーブルに腰掛けて残り物のぶどうジュースをやっつけることにした。
ワイングラスの端っこを軽くぶつけて乾杯する。
「メリークリスマス」
あいよ。メリクリ〜。
ぐっと一気にあおっておかわりをしている俺にアットムが問い掛けてくる。
「ねえ、コタタマ。それで、セクハラ神様って結局何なの?」
さぁな。
こっちが聞きてーよ。
ただ……。
「ただ?」
アットムが首を傾げて俺を見る。
俺はニヤッと笑って懐からアイドル気取りどもの写真集を取り出した。どさくさに紛れて、ひそかに回収しておいたのだ。
パラパラとページをめくって鑑賞する。
こいつは神域に一度落っこちたもんだ。
つまり神様の持ち物ってことになる。
いつかまた、ひょっこりと現れるかもな。
こいつを取り戻しに。
ほら、今お前の横に……。
これは、とあるVRMMOの物語
ホラー? ハッピーメリクマス! 噛んだ! メリクリ!
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