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ギスギスオンライン  作者: ココナッツ野山
539/983

ゲームの終わり

 1.山岳都市ニャンダム


「はっ、はっ、はっ…….!」


 マレがNAiを背負って山岳都市を駆けている。よほど不安なのか、しばしば振り返っては追っ手の有無を確認する。変身し、本性を現したマレはレベルが底上げされていることもあって健脚だ。しかし逃げ切ることは難しいだろう。

 振り返ったマレの目に映るのは自分を追って迫る小ぶりな山ほどもある巨人だ。その巨人が一歩進むたびに地は揺れ、家は崩れ、舞い上がった粉塵が視界を濁していく。

 戦闘の余波により山岳都市は壊滅状態に陥っていた。都市部で戦えばこうなることは分かっていた。ティナンの助けがあれば復興にはさして日数を要さないが、家族が住む家に愛着を持たない子など居ないだろう。思い出の品は返ってこない。その中には、きっとプレイヤーがティナンに贈ったものも含まれている。

 だが、俺たちはそうした思い出を踏みにじってでもマレとNAiを守ることを選んだ。二人を明け渡すことをよしとしなかった。

 俺たちは前進を続ける兄貴に背後から組み付き、全身に力を込めて停止を促す。

 兄貴のエンドフレームは平均的なそれの頭二つ分は大きい。人間サイズに換算すると2メートルを優に上回る巨漢だ。

 止っ……!

 ま、ら……! ない!

 武器をアンカーに見立てて突き刺しても地面ごと引っ剥がされる。

 行進を遅らせるのがやっとだ。それも俺たちの体重や力によるものとは言い切れず、山岳都市への被害を抑えようとしているふしすらあった。

 体幹が強い。倒れない。グラつきすらしない。無尽蔵のスタミナと圧倒的なパワー。そして何より特筆すべきが頑丈な身体。これが七土種族……! これが光の使徒か……! 

 山岳都市がごうごうと燃えている。地の底から炎が吹き上がるかのようだ。

 極度の負荷に晒された筋肉がぶちぶちと音を立てて千切れ、そのたびに再生する。力は無限に湧いてくる。しかし器の大きさには限りがある。大河に挑むかのようだ。

 これほどの……!?

 俺たちは自分たちが強い種族だとは思っていない。そんなことは分かっていた。自覚していたハズだ。それなのに、何故こんなにも打ちのめされるのだ。

 こんなにも……俺たちは弱いのか!?

 かつてNAiが口にした言葉が実感を伴って鮮やかに脳裏に浮かぶ。


(あなたたちは自らの生まれを呪うことになる)


 絶望的な戦力差に、しかし廃人は屈さない。むしろ楽しそうだった。普段なら山岳都市の惨状に心を痛めているふりくらいはするのだが、極上の男を目の当たりにして理性のタガが外れている。

 マレとNAiに近付こうとする粗大ゴミをセブンが撃ち殺した。再生を終える前に掘った穴に埋める。マレとNAiを連れて逃げようとしたのかもしれないが、信用できない。走りっぱなしのマレを休ませてやりたいが、今の状況は崩せない。

 俺の「お願い」が効いたのか、イョママは動こうとしなかった。ナイマレを見極めようとしているのかもしれない。

 NAiがマレに対する素直な心情を打ち明けたのは、イョママがマレを連れ去ろうとしたからだ。

 イョママはマレを気に入っていて、自分よりも他人の幸福を願っているから、自らの敗北も利用する。それがイョママの弱点。

 俺たちはそこを突いた。

 善意にすがり、情けを掛けて貰う。そこまでは行かずとも種族人間ごときに一体何ができるのかと興味を引く。実際、イョママが立案もしくは直接戦闘に参加してきたら俺たちは絶対に勝てない。だからそちらの可能性を排除して作戦を練る。サトゥ氏はそういう考え方をする。

 サトゥ氏が何度目かのアタックを仕掛けた。兄貴の腕を躱し、斬撃を叩き込みながら挑発する。


【おっ勃たねーのか! だったらあんたに俺らの気持ちは絶対に分かんねえなー! 王様がそんなことでいいのかよ!? 俺のダチにゃ〜男の価値は女で決まるとまで言ったやつも居るぜ!】


 随分と偏った人生観だな。

 ……俺は言ってることが日によってコロコロ変わるとよく言われるが、誤解しないで欲しい。信念なんてものは持ってなくて当たり前なのだ。逆にそこら辺を歩いてるサラリーマンが信念を持って生きてるほうが気持ち悪いだろう。全員半沢直樹かよ。倍返しの高速ラリー戦という訳か。ちょっと見たい。

 兄貴に俺たちの言葉は届かない。そのハズだ。しかしどんなアビリティを隠し持っているのか知れたものではないサトゥ氏ならば、あるいは。

 兄貴は決して素早くない。敏捷性で言えばサトゥ氏のほうが上だ。しかし攻撃をするためには近寄らねばならず、攻撃が当たれば動きは止まる。末端部への攻撃すらも弾かれ、いよいよ手詰まりが見えてきた。

 強すぎる。硬すぎる。

 可能性を幾つか考えてみる。

 一番最悪なのは、兄貴の防御力が素でレイド級を上回っている場合。種族人間の攻撃力では貫けないというパターンだ。これは正直どうにもならない。【心身燃焼】による再生と蘇生もあって、相手が悪かったと割り切るしかない。

 二つ目は【心身燃焼】の応用。何かしらのトリックがあり、兄貴のヒールぶっぱはトリックのタネを埋もれさせる為のものという説だ。ただ、俺個人としては可能性は低いと踏んでいる。兄貴はそうした小細工を弄するタイプには見えない。

 そして三つ目。これが本命ということになる。兄貴はエンドフレームを完全にコントロールしており、状況に応じてエネルギーの使い方を切り替えている。

 反論はできる。兄貴はそういう器用なことができるタイプには見えない。しかし1666というレベル……宇宙的にゾロ目はキリのいい数字だ。レベル1000やレベル2000も区切りの良い数字として扱われているようだが、それらも見ようによってはゾロ目だ。0が揃っている。

 ペペロンの兄貴やプフさんですらレベルは510前後。ゾロ目じゃない。パフワくんがベースレベルの限界は555だと断言していたのは、クソ運営に絡まれて「私はプレイヤーの最高到達点だ」だのと上から目線で言われたことがあるからだろう。信用できる情報だ。

 つまりフリオの兄貴は……。

 俺たちが初めて遭遇した、レベルカンストのプレイヤーということになる。

 ならば技量に関しても完成の域に達していると見ていい。力押し一辺倒の戦い方をしているのは、それが一番好みに合っているからだ。皇太子という称号も無関係ではあるまい。王の戦い方という訳だ。勝ち方というものがある。たとえそれが元で負けたとしても、名誉の戦死は王族の権威を高める。無様を晒し見苦しく足掻くほうが問題なのだ。帝王学か。必要とあらば兄貴は暴君にもなれるだろう。

 恋の暴君だ。

 兄貴が虚空に壁ドンでもするように片腕を突き出し、サトゥ氏の動きを制した。大胆なアプローチ。

 見切られた。やはりただの脳筋ではない。


【ぐっ……!】


 サトゥ氏はいよいよ苦しい。魔力が底を突いたか。至近距離から兄貴の肩口に斬撃を叩き込むが、体勢が悪い。

 兄貴の抱擁。よく戦ったと言うようにサトゥ氏を強く、強く抱きしめて静止状態から腕力だけで上半身と下半身を分断した。

 国内サーバー最強の男を下した兄貴が、ザッと振り返って独りごちる。


【ちんぽは心の中で勃てば良い】


 王。

 背後で命の火が四散し後光が差すようだった。

 圧巻の下ネタにゴミどもは気圧されて後ずさる。

 俺も総身がぶるりと震えた。

 共にくつわを並べて戦いたいと思う一方で、彼の敵として同じ戦場に立てたことを誇らしく思った。

 兄貴から目を離せない。

 キケンな誘惑に心の一部が警鐘を鳴らしている。

 敵味方を問わずに心を奮い立たせる力。

 それは戦争を肯定する力だ。

 戦乱を招き、大過を呼ぶ資質だ。

 カリスマとは、性別を超越した心の中のちんぽなのだ。巨根の生き様。それは逆説的に言うならば心のチンポジということになろう。

 俺は、この人に、勝ちたい。心の底からそう思った。


【あなたの、命が欲しい】



 2.混戦


 もう何度死んだか分からない。

 どれだけ叩いても、何をしても兄貴は止まらない。腹部に刺さる拳の重みだけが心の拠り所だった。

 されど一機、敵はたったの一機だ。エンドフレームを大量投下すれば何とかなると思っていた。保険も掛けた。不手際を詫びるプフさんに全面的な協力を取り付け、バトルフェーズに移ることで正常個体の動員を確約した。バトルフェーズを維持するためにプフさんを逃がした。【ギルド】の最高指揮官と戦うためのシステムを悪用し、ゾンビアタックを仕掛ける。そういう作戦だった。しかし、その作戦をちゃぶ台ごとひっくり返された。

 山岳都市が炎上している。【心身燃焼】の火だ。こうなっては、もはやバトルフェーズを維持する必要性がない。

 無論、そんなことは誰よりも真っ先にプフさん自身が気付いていた。

 瓦礫の山を飛び越えたプフさんがマレと合流。名実共にお荷物と化したNAiの運搬係を交代し、マレの手を引いて前を走る。

 俺は兄貴に肩車されながら触手を束ねて叫んだ。

 プフさん! 変身してくれ! あんたが変身したらコイツも変身するだろうが……! こうなったらもう自滅に賭けるしかねえ! 

 肩越しにこちらを振り返ったプフさんがコクリと頷く。兄貴を見る瞳が一瞬だけ揺れた。


【わ、私たちはこの広い宇宙に産まれ落ちた一匹の怪物だ……】


 自己暗示。

 プフさんは変身するとポポロンの記憶が浮かび上がってくる。

 だから、その記憶に呑まれないよう自らを再定義して強く律する。ほんの気休めだったとしても、やって損はないなら試してみるべきだった。ポポロンは異常個体だからだ。身体を乗っ取られたが最後、その場で裏切るならまだ可愛げがあるほうだ。俺ならプフさん本人の振りをする。

 フリオの兄貴がプフさんを見つけて、ひどく優しげな声で話し掛けた。


【おお、プフではないか。久しぶりだな。元気にしているか】


 標的の逃亡を幇助している人物に掛ける言葉ではない。

 ……知り合いなのか。

 光の使徒は、勇者が滅びる最後の一瞬まで戦うことを強要された戦闘兵器だ。不完全に再生された記憶は現世との齟齬を生じ、それらの辻褄を合わせるためにチャンネル操作が行われる。

 プフさんの目尻に涙が浮かんだ。

 兄貴が続ける。ここが戦場であることも忘れて。


【また折り紙を折ってやろう。今度は失敗しないぞ。私は見ての通り不器用だが、たくさん練習したからな】


 決壊するようにプフさんの目から涙があふれた。零れる吐息を手で押さえ、千切れる言葉を紡いでいく。悲鳴を上げるように叫んだ。


【だ、ダメ……。気持ちが……引き、ずられる……! 変身っ、できない!】


 ョ%レ氏の不吉な予言がまざまざと脳裏に蘇る。


(果たして君はどちら側の人間なのかな?)


 不意に、兄貴が夜空を仰いだ。手のひらに視線を落としてポツリと呟く。


【雪か】


 雪? この季節に雪なんか……。

 いや、言われて初めて気が付いた。

 雪が降っている。

 黒い、雪が。

 ラム子、なのか?

 上空を仰いだ俺の目にアナウンスが飛び込んできた。


【Death-Penalty(死は罪)】


 ううっ……!

 俺は思わず呻き声を上げた。

 ウッディを通じてラム子の感情らしきものが伝わってくる。

 こんなのは初めてだった。

 ラム子が怒っている。

 遊び相手が勝手に居なくなったことに腹を立てている。

 死という現象を理解できない。

 何故なら……。

 彼女たちは死なないから。

 リアルを知らないから。

 プレイヤーは、死なないから。

 意地悪をされたと思っている。

 この黒い雪は、その仕返しだ。イョママはジャマーと呼んでいた。

 デスペナルティ。死への罰だ。兄貴の記憶を巻き戻し、プフさんの感情に干渉した……。

 兄貴の機体にしがみ付いているイョママが険しい目で上空を見つめている。


【何をしに来た……?】


 理外の存在であるギルドの行動原理は謎に包まれている。目的があるのか、ないのか。あったとしても理屈に合わない動きをする。いつもそうであるとも限らない。有効な対策はできること、できないことを把握した上で最悪の事態に備えるくらいだろう。

 イョママが夜空の向こうを覗き込むように目を凝らしながら合掌する。


【フリオくん。最高指揮官が近寄ってきたら伽藍を張るよ。そしたら私も変身する】

 

【心得た】


【ホントにぃ? 心、得てます? この人、たまにテキトーに返事するからな……】


 イョママは兄貴と話す時に口調が崩れる。幼かった頃を思い出すのだろう。

 その親密な様子に、俺は嫉妬した。

 束ねた触手を兄貴の側頭部に押し当ててレーザー砲を放つ。

 兄貴は無傷だった。

 男性らしいゴツゴツした手で俺を逃すまいと押さえ付けてくる。


【お前たちは何のために戦う? 意味などないのか? 教えてくれ!】


 あ……。

 思わず声が漏れた。

 兄貴はギルドとの対話を諦めていない。

 その情熱的な眼差しに、俺は意地を張るのも忘れて内心を吐露した。


【このゲームが。好きだから】


 しかし言葉は届かない。

 しんしんと黒い雪が降っている。翻訳機能の不調。言葉は通じず、心はすれ違う。

 兄貴が迷いを振り切って拳を振り上げる。


【逃れられんか……。この戦いの定めからは!】


 兄貴の巨拳が俺の身体を貫通した。

 あっ、がァ……!

 俺は太い腕をくわえこんだまま、兄貴をギロリと睨んだ。触手で輪を作って印を結ぶ。血反吐を撒き散らしながら言う。

 ご、誤解されたまま死ぬのは、嫌だ。

 俺は……あんたを止める。そのためなら、ホモになってもいい……。


 領域展開……桃源郷・突ク読……。


 黒い金属片が俺と兄貴を隔離し、二人きりの世界を作り上げる。

 だが、最大限に強化された俺のセクハラですら、兄貴には……。

 

【……? 今、何かしたか?】


 届かない。

 この醜悪な怪物の姿でさえ、兄貴にとっては嫌悪の対象たり得ないというのか。

 俺の精いっぱいの勇気は、ラブコメの鈍感主人公のごとし鉄壁さにするりと流された。

 流しそうめんのように。

 悲しい。ヒロインの気持ちがよく分かった。俺はまるで恋に破れた流れ星。でも正直ホッとしてる、弱いココロ。ちょっとくらい八つ当たりしてもいい? きっとあなたは許してくれるから。つい甘えちゃう。La La La…



 3.???


 気付けば、俺は黒い原っぱに立っていた。

 ……あ?

 違和感を覚えて手のひらをじっと見る。

 ……エンフレじゃねえ。いつ戻った?

 夢を見ているような、ふわふわとした心持ちだ。

 立ち位置が定まらない。

 じっとしていても仕方ないと思い立ち、原っぱをトコトコと歩いていく。


(やめろ。行くな)


 ウッディ……?

 声が聞こえた気がして立ち止まる。

 ウッディ……。どこだ?

 不安になった。

 今までどうやってウッディを出してたっけ……?

 マズい。危機感が湧いてこない。

 ヤバいと分かってるのに進んでいく、夢を見ている時のあの感覚だ。

 ウッディを探してるのか……?

 自分のことなのに何を目的として動き回っているのか分からない。

 原っぱに座り込んでいるラム子を見つけた。

 手足の感覚を取り戻せたような気がして、俺は嬉しくなった。

 おーい、おーいと手を振りながらラム子に近寄っていく。


(ダメだ。シンイチ)


 ウッディ。

 どこだ。どこに居るんだ。

 姿を見せてくれ。

 また不安になってきた。


「シンイチ」


 紫色の髪をしたガキンチョがすぐそばに立っていた。

 誰だよ。いや、お前、ベムトロンか。随分とまぁ縮んじまって……。


「違う。シンイチ。私だ。全て思い出した。今すぐにこの場を離れろ」


 ……ウッディなの?

 そうか。分かった。お前を信じよう。

 おい、ラム子。よく分からんがお前も来い。逃げるぞ。

 ……ラム子は俺に背を向けて原っぱに座り込んでいる。

 おい。人の話を聞いてんのか。

 ラム子に意識を向けると、不思議と不安じゃなくなる。

 いつもの俺に戻れるような感じがして、俺は嬉しくなる。

 まーたお前は一人遊びしてんのか。

 俺はラム子の正面に回り込むと、上体を屈めてラム子の手元を覗き込んだ。

 ラム子は積み木で遊んでいた。

 頭、手、足。人間に見えなくもない。

 お前よ〜。最高指揮官サマだろ? こんなトコで一人寂しく遊んでねーで、友達と一緒に遊ぶとかねーの? 他の最高指揮官とはどうなんだよ? 仲良い奴とか居んの?

 ほら、積み木遊びは終わりだ。

 立てよ。おら、手ぇ貸してやっから。


(シンイチ!)


 ラム子が顔を上げた。

 笑っていた。

 にっこりと嬉しそうに。

 俺が差し出した手に、ラム子の手がそっと乗る。

 小さな手だった。



 4.ちびベムトロン劇場


【工兵よ。私はもう限界だ】


 ……なんだ?

 俺は一体何を見せられている?

 黒いBAR。

 三頭身に縮んでしまったベムトロンが、お子様用の背の高い椅子に座ってカウンターに突っ伏している。

 カウンターには酒瓶とグラス。

 グラスの横をウッディが這っている。いつもの見慣れたウジ虫バージョンだ。

 ちびベムトロンがテーブルに突っ伏したまま続ける。


【お前には感謝している。職場の同僚で意思の疎通が図れるのはお前だけだ。何度救われたことか……】


 ウッディがみ〜っと伸びをして、ちびベムトロンの頭にもたれ掛かった。

 ちびベムトロンが指でウッディをあやしながら続ける。


【他の連中はめちゃくちゃだ。何を考えているのか分からない。行動に一貫性がなく、急に賢くなったかと思えば次の日には延々と夜空に浮かぶ星の数をかぞえている。しかも途中でやめる。また最初から数え始める……。幹部連中なら少しはマシなのかと思っていたが、あいつらは単にデカくなっただけだ。戦場では配下の兵を使っているから賢く見えただけだった……】


 相当愚痴が溜まっているようだった。

 次から次へと出てくる。


【特にラムダはひどい。あいつ……あのネット弁慶は自由すぎる。誰にも命令されることがないからだ。一度走り出したら止まらない。他の最高指揮官と遭遇して生まれて初めて鏡を見た動物のような反応を示した時、私は心の底から絶望した……。そもそも何を目的とした行軍だったのか分からなかった。未だに答えは出ていない。そして今また星を数える指令が下った。行ってくる……】


 ぴょんと椅子から飛び降りたちびベムトロンが、しょんぼりと肩を落としてBARを出ていく。

 すぐに戻ってきて、再びカウンターに突っ伏した。

 

【こんな生活には耐えられない】


 むくりと身を起こして、グラスに酒をとくとくと注いだ。


【酒浸りの毎日だ。この身がギルドでなければ、とうにアル中で再起不能になっていただろう。……話になるか? 私は狙撃兵だぞ。それなのに、ここしばらくは戦場でもふとした瞬間に酒のことを考えている。今日は何をアテに飲もうかとか、最近は豆腐が私の中でアツいとか、そんな感じのことをつらつらと……】


 ちびベムトロンは遣り場のない怒りをぶつけるようにダンとカウンターに手のひらを叩き付けた。


【そして気付けば私のゲストルームは酒場になっていた……】


 ここはベムトロンのゲストルームだった。

 ひどい話である。


【そう、全ての元凶はギルドだ。この無間地獄、イヤ無間保育園をどうにかせねば私たちに明日はない。一時はラムダの身体を乗っ取ることも考えたが……それは無理だ。レベル差が大きすぎる。私がこうして飲んでいる間にもレベル差は開いていく一方だ。どうにもならない】


 たしかにどうにもならない。


【そこで私は仲間を増やすことにした。すでに候補は見繕ってある。ラムダは失敗したようだが……そもそもあのネット弁慶に完全ギルド化を促す機能はない……何のための工兵だ。そういうところもイライラする……】


 ちびベムトロンが紫色の髪をわしゃわしゃと掻き乱す。

 溜息を一つ。


【候補は居る。そいつはいつも暇そうにしていて、人生を舐めくさっていて、危機感が欠如していて、口ばかり達者なゴミで、なんだかんだでガキには甘く、文句を垂れながらも結局最後には面倒を見るような男だ】


 ろくでもない男だな。

 ちびベムトロンがこちらを振り返った。

 カメラ目線のノリで、こちらへと手を差し伸べる。そうして、こう言った。


【GunS Guilds Onlineへようこそ】




 これは、とあるVRMMOの物語

 私のパクりじゃねーか……。



 GunS Guilds Online



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― 新着の感想 ―
[良い点] タマ氏ホモごっこしすぎてホモになりかけてない?
[気になる点] そもそもの話、「不能」って「性欲がない」と違くないか……? そこんとこどうなんすかねぇ! [一言] ちんぽネタはゴールデンカムイに通じるものがある気がしたけどそんなことはないのかな? …
[一言] 呪術にチェンソーにやりたい放題だぁ まあいまどっちも熱いししょうがないね
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