深窓の天使
1.ゴブリンラジオ
3、2、1、キュ〜。え、キュー振りも俺がやんの? じゃあ要らなくね? 要らないね。
じゃ、ゴブリンラジオ始めまーす。
おはようございますMCゴブリンでーす。俺の横に座ってるゲストについてはいったん置いておくとして、本日はゴブリンラジオの初配信ということでね、最初にざっくりと説明をさせて頂こうかなと。
まずウチらが所属してるWeek.TVについて。略してWe.Tとか呼んでるんだけど、We.Tは曜日ダンジョンでバイトしてるゴブリンの集まりなんだよね。We.Tの第一弾の企画がパウンドで、このゴブリンラジオは第二弾の企画ってことになる。まぁウチは潤沢な資金源がある訳ではないのでね、次に何やろうかって考えたら選択肢があんまりなくて。じゃあラジオでも……ってことになったらしい。そこでこのMCゴブリンさんに白羽の矢が立ったと。そういう経緯。ぶっちゃけ俺は旗振りだけ押さえとけば誰でもMCやれると思ってるから二回目か三回目にはドロンする予定。て言うのもパウンド効果ってのがあってさ。パウンドメンバーにはアイドル的な人気があんのね。俺はそういうのと全然違うから裏方に回ったほうがいいだろって企画持ってきたゴブリンPに言ったのよ。そしたらそいつが初回は何やっていいのか分かんないって言うからぁ。社長お願いします!ってWe.Tの社長やってるK氏に丸投げしてぇ。んで社長のK氏から割とダイレクトにこのMCゴブリンさんにお鉢が回ってきた感じかな。こうしてゴブリンの着ぐるみ着てっけど、俺は別に曜日ダンジョンでバイトはしてないんだよね。
で、ここで着ぐるみの話に入る。
俺としては曜日ダンジョンからテキトーにゴブリン連れ出してゲストに招けばいいんじゃねーかなって思ったんだけど、就業規則が結構ガチガチでさ。ゴブリンアバターを持ち出せなかったのよ。じゃあ整形チケットで作ってみるかってなってぇ。試しにやってみたんだけど無理だったんだよね。ガワは作れても骨格とか内臓とかね。その辺がどうにも再現できなかった。元々レ氏が作ったモンだしな。ガワだけ再現しても短命で終わるから放送中にポックリ行っちゃうんだよね。そりゃマズいってことで着ぐるみ被せることになったのよ。
で、さっきも言ったけど曜日ダンジョン勢には固定ファンがついてるもんだからさ。ヘタに絡むと俺が闇討ちされかねないんだよ。だもんで顔出しNG。声で特定されることもあるだろーけど、多少はマシんなるでしょ。
という訳でね、紹介します。ゲストのゴブリンでーす。
「MCゴブリンくんは本当に話が長いよね」
長くないよ。なんなら俺はお前にMCやらせようと思ってたからね? 企画段階でお前がそれだけは勘弁してくださいって泣き入れてきたから仕方なく俺がココに居るっていう側面もあるんだぞ。ほら、自己紹介して。
「えっと、ご紹介に預かりましたゲストのゴブリンです。今回は初配信の、第一回目のゲストということで緊張していますが精一杯やらせて貰えたらな、と。仕事なのでちゃんとやりたいです。それなのに渡された脚本が真っ白で、落書き帳かな?って。増えたよね、ノートが。買う手間が省けたなぁって純粋な感想。MCゴブリンくんだけが頼りです。本日はお願いします」
居ないんだよね、放送作家が。居るのは企画ゴブリンだけ。なんかの偶然でリアル放送作家が混じってねーかなって期待したんだけどフツーに居なかったんよ。じゃあ仕方ねーなって俺。脚本はありませんって開き直られるのもムカつくから、とにかく真っ白でもいいから脚本寄越せって言ったらマジでお絵かき帳だったぜ。一応、試行錯誤した痕跡らしきものは残ってるけどな。まぁ別にいいんだけど。どっち道、曜日ダンジョン杯について話すつもりだったから。ざっと計算しても放送枠に収まりきらないから収録が終わったあと二、三時間は帰れないものと思ってくれ。
「意味が分かんないです。もはやそっちがメインじゃないですか。だったら次回以降の放送に回しましょうよ」
二回も三回も同じお題で話してもつまんねーだろ。お前バクマン読んだことねーの? シリーズものってのは新規読者が途中から読み始めても意味が分かんねーからリスクがあるんだぞ。新しく立ち上がった企画でそんな博打やれっかよ。どうしても続きが気になるってリスナーが居たら、その時にちょいちょいと掻い摘んでお前が話せばいいんだよ。
「ちょっと待ってください。MCゴブリンくん、さっきから本気で私をMCに据えようとしてません? 困るんですけど」
お前ならやれるよ。俺は別にMC向きのゴブ公じゃねーんだ。出しゃばりだし、口悪ぃーし。お前の他にも何人か心当たりあるからそう心配すんな。慣れだよ、こんなもんは。ゲームの片手間にやってることなんだからクォリティを求められる訳でもなし、気楽に行こうや。曜日ダンジョン杯にしたってそう。本当は、もっと、こう、遊びの延長でやれたらな〜って思ってたんだけどな〜。トップの連中が出しゃばってきたから妙な具合になっちまった。
「ありがたいことですよ。ジョンさんとマジュンさんは全世界でも屈指のプレイヤーですし、メイヨウさんとカレンさんは大会を盛り上げてくれました。リンリーさんとアンドレさんも凄かったですね。特にアンドレさんは器用というか、発想が素晴らしいですよね」
あいつは元々鍛冶屋だからな。パウンドはルールで縛りたくないってのがあって、これはダメあれもダメってしたくなかったんだよ。隠し球については全然アリだ。ボールを増やすという発想は凄くイイ。フロントを張れる選手を減らすっつーリスクを背負ってやってることだし、ボールが増えればチャンスも増える。双方にとってな。メイヨウについては本当に助かった。コートの上じゃひたすらボールを追っ掛けてコロコロ転がってただけって感じだけど。あいつは凄いよ。もしも宇宙リーグなんてもんがあったら地球チームを率いるのはあいつかもしれない。気付けば何故か俺ら運営側に居たしな。圧巻のパフォーマンスだ。扱いに困ったのはサトゥ氏だよ……。
「そうなんですか? なんか凄く……ええと、K監督と仲良くしてましたけど」
別にサトゥ氏のチームって訳じゃないからな。あいつの場合、素人の癖してチームに入れたら勝手に頭を張りそうな怖さがあるんだよ。しかもマジで何でもできるから、形になっちゃうんだよな。でもあの場でサトゥ氏のチームにするのは違うなってK監督は思ってて、ひとまず全日本チームの秘密兵器っていう体でベンチをあっためて貰って、チラチラとこっちを見てくるからコーチ陣に加えたって感じだな。目を離すと勝手にどっか行って訳分からん事件に巻き込まれそうでさぁ。ひと口にトッププレイヤーと言っても色々と居るんだけど、サトゥ氏はヨゴレ担当だから監視が居ないとヤバい。いつも面倒見てくれるリチェットはたまに完全に放置するし、セブンに至っては生きてるんだか死んでんだかよく分かんねーし。もはや一種の概念と化してるよな。
今だから言うけど、曜日ダンジョン杯は攻略組が本格的に動き始める前にこっちで手を打とうっていう考えがあった。K監督の隠し子説とかネットで色々と言われてるけど、それは根も葉もない噂だ。ああいうのは一体ドコの誰が嗅ぎ付けて来んのかね。内部リークっていう噂もあるけど、もっともらしく言えば誰でも信じると思ってんのかな? 舐めてるよな。まぁ俺は別にどっちでもいいけど、全日本チームが曜日ダンジョンを踏破したことと白の洞窟をギルドが占領したことはまず無関係と見ていい。
「……白の洞窟で上位個体が発見されたとのことでしたよね。上位個体をギルドが保護しているという、スピンドック平原でも同じ現象が見られるようですが」
現状、国内サーバーでギルドを管理してるのはネフィリアっていうプレイヤーなんだよ。上位個体は生かしておくという考えみたいだな。何も不自然じゃない。ただ、上位個体は過去に何体か出現していて、それらの討伐を指揮したのもネフィリアだ。何らかの実験が失敗して証拠を隠滅しようとしたという説がある。サハギンの上位個体……ウオロクだったかな……? そいつは当時の生き残りなんじゃないかな。レベルが高すぎる。もしかしたら実験の成功体なのかもしれない。そう考えると、ネフィリアの急な変わり身にも説明が付く。
とにかく陰謀論には耳を貸さないことだ。もちろん俺だって全てを知ってる訳じゃないから、どう受け取るかは視聴者の自由だ。
なお曜日ダンジョンの最下層については〜……自分たちの目で確かめて欲しい。まぁ攻略組のほうで配信してるかもしれんが。例によって例のごとくキナ臭かった。
「曜日ダンジョンには私たちプレイヤーがMOBとして配置されてるんですよね。それもまたキナ臭いと言いますか……」
いきなりデスゲーム始まったらどうする?
「それについては軽く諦めてますけど……。最悪、ティナンに養って貰おうかなと」
なるほどね。俺はNAiさんに付いていこうかなって思ってる。
「え!?」
え?
「いや……ちょっと意外ですね。あんまり、その……お二人の仲良いイメージがないので」
あの天使、プレイヤーの心読めるからな。心読めるやつと一緒だと楽そう。ポテチ取ってって思ったら取ってくれるんだよ?
「取ってくれますかね」
ガンダムにサイコフレームってあるじゃん? ファンネルのやつ。あれ掃除機とか洗濯機に仕込んだら念じるだけで全自動よ? もはやメイドロボじゃんね。俺はそういう可能性をNAiに感じてる。
「メイドロボの可能性を。天使に」
いや、メイドロボの可能性って人聞き悪いな。……ママ? あっ、ダメだ。今のナシで。一瞬、シャアがララァに求めてたものが分かり掛けた。しかも悪い意味で。絶対に違うのに変にハマったわ。今のナシで。
とにかくNAiさんはね、意外と使える女ってことだよ。俺はデスゲーム始まったらNAiさんに付いて行くわ。ウチの子たちも一緒に連れて行こう。
「そんなにオススメなら私も連れてってよ」
いいよ。NAiさんのために一緒に生きた人間を用意しようぜ。
「え、なんで?」
NAiさんのごはんだよ。あいつ、他人の命をエネルギーに変換してるから。
「あ、そっかぁ。天使だもんね。天使ってそんな感じなんだ……」
無垢な子供が一番いいんだよ。穢れてないから。あ、いや、逆だっけな? 穢れた魂が一番ウメェーとか言ってた気がする。
「嘘でしょ?」
ホント、ホント。やっぱり養分が高いんじゃない? 知らんけど。
「嘘だぁ〜。高いことはないでしょ」
高いんだって。ほら、悪者は他人を食い物にして生きてるって言うから。高得点なんだよ、きっと。完全栄養食みたいな?
「マズそうなのになぁ」
善悪なんてしょせん人間の価値観だしな。天使からしてみたら違うんだろ。考えようによっちゃゴミを食べてくれるんだから世界がキレーになるしな。
という訳で、いざって時は転がり込ませて貰うわ。よろしくな。
これは、とあるVRMMOの物語
なんか私のイメージ悪くない? 真祖の吸血鬼みたいなイメージで行きたいんだけど。
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