血塗られし村
1.クランハウス-居間
居間で高精錬チャレンジ候補者のカルテを見ている。武器を手放す必要なくない?と聞かれて確かに…と納得しちまった悲しい人種だ。そこまで来たらもう二足歩行に拘る必要なくない?と聞いたらきっと納得してくれるに違いない。時代が多脚を求めてると強く感じる。俺はやらないけど。脚がガチャガチャして寝るのキツそうだし。
身内による犯行が鳴りを潜めて早一ヶ月半。平穏な日々を過ごしている。倦怠期か何かなのかと思えばそういう訳でもなく、撫でたり触ったりしてイチャつく分にはOKらしい。イチャついても殺しまでは行かないという奇妙な状況が続いている。ストレスが溜まっているのではないかと心配になった俺は、ウチの長女ポジに居座っている半端ロリを捕まえてハラを割って話すことにした。
スズキは小っちゃくて可愛いなぁ。ちょうど腕にすっぽり収まるサイズだぜ。
ちんちくりん一号は俺の腕の中でころころと笑っている。
「なんか言ってること変態っぽい」
俺は好きな子の良いトコを見つける天才なんだよ。言ってることが前と違うとかよく言われっけど俺の中で矛盾はないのね。そういうの全部ひっくるめての俺だから。……そういえば近頃お前らは俺のこと殺さなくなったな? 何かあった?
俺は本題に入った。
劣化ティナンが顔を上げて俺をじっと見てくる。
……スズキは察しのいい女だ。気取られたか? 気取られたようだ。俺が内心で焦っていることを見透かしてマウントを取ってくる。
「ふ〜ん。やっぱりコタタマは私たちに殺されたいんだ?」
いや、殺されたいっつーか……急に殺されなくなったから戸惑ってるんだよ。俺が悪いのかな〜って不安でさ。理由が知りたいな〜。何か知ってる?
すると半端ロリは「仕方ないな〜」と苦笑した。自分の優位性を確信した時に見せる表情だ。こいつは自分のちんちくりんボディにコンプレックスを抱いているらしく、何かと俺より上に立とうとする。それほど親しくなかった頃からずっとそうだ。俺が手柄をあげるとボソボソと文句を言ってくる構ってちゃんだった。当時の俺は先輩たちに気に入られようと必死だったので無視したが、今になって思えば惜しいことをした。選択肢をミスったな。人は過去には戻れない。しかし時計の針を押し進めることはできる。
俺は下手に出た。
ポチョとジャムに聞いても答えが返ってきそうにないんだよね。お前なら何か知ってそうだなって。意思疎通って大事だからさ。お前が窓口になってくれて俺はいつも凄く助かってる。ど、どうなの?
スズキは俺の手をやんわりと押しのけて、紅葉みたいに小さな手をそっと重ねてきた。真面目な話をする雰囲気だ。居間に俺たち以外誰も居ないことを確認してから念のためにと声を潜めて言ってくる。
「……あのね、最近ちょっと……ここ二、三ヶ月くらいかな……。つ、付き合ってる子たちが増えたよね?」
……え、そうなの?
いや、そうなのか。思えば女キャラに龍槌閃・惨されてるゴミを見掛けることが多くなったような気がする。
スズキさんはもじもじしている。
「それで、そのぅ……。そういうの見たら、今まで私たちコタタマに凄いことしてきたんだなって。急に恥ずかしくなっちゃった、の、かな? えへへ」
スズキは語尾を濁して誤魔化すように照れ笑いをした。
……症状はむしろ悪化していた?
俺は強い危機感を覚えて思わず身を引こうとしたが、堅実にレベルアップを重ねてきた半端ロリにしっかりと手を掴まれていて逃げられなかった。
「ポチョとジャムはそういう感じ。私は……二人に合わせてって部分もあって。コタタマがどうしてもって言うなら……いいよ? 二人には内緒にしてくれる?」
が、我慢しすぎるのは良くないと思うんだよ。デスペナって時間経過で回復するし、やっぱり小まめにストレス発散したほうが効率的って言うか。うん。
俺は何も間違ったことは言っていない筈なのに妙に言い訳がましくなった。その裏にある感情を持て余して困惑するばかりだ。俺はコイツとどうなりたいんだ。この先どうなってしまうんだ。不透明な未来に恐怖すら感じる。高鳴る胸に甘く痺れるような不整脈が俺の自信を奪い去っていく。
スズキがソファから立ち上がった。俺の手を引いて工房のほうに歩いていく。
「……私の部屋だと、声、聞こえるから」
……どうやら俺はこれから工房で殺されてしまうらしい。これが初めてという訳でもないのに、ご無沙汰ということもあってひどく緊張する。なんなんだ、この感情は。イヤ俺は悪くない。俺はずっと嫌だと言ってきたのにウチの子たちが執拗に俺の命を付け狙うもんだから、俺の頭もおかしくなったんだ。頭がおかしい二人が揃ったらそりゃあおかしなことにもなるだろう……。
俺は熱に浮かされるようにふらふらとスズキのあとを付いていく。
工房に連れ込まれ、完全防音のドアがガチャリと閉ざされる。その音で俺はハッと我に返った。頭がおかしい女と二人きりという事実に、ぶり返した恐怖心で身体が強張る。俺は慌てて手を振った。
す、スズキ。やっぱりやめよう。こういうのは、やっぱりおかしい。俺たちには早すぎると思うんだ。もっと、こう、順序を踏んでだな。健全なお付き合いを……。
しかしスズキは止まらない。金槌を手に取って俺に身を寄せてくる。甘い香りがした。
「コタタマはじっとしてて。私が全部してあげる」
不健全なお付き合いが始まった。
スズキが俺を作業台の陰に押し倒して馬乗りになってくる。
工房のドアが開いた。
スズキが慌てて立ち上がる。
工房に入ってきたのはマグちゃんだった。
「あれ? スズキじゃん。こんなトコで何してんの?」
作業台が陰になって俺の姿は見えていないようだ。スズキは手に持った金槌を軽く揺すって取り繕った。
「こ、工房ってどんな感じなのかなって思って。普段使わないから。こ、こんな感じなんだ〜。ちょっと……うん。何か叩いてみようかなっ。あ、マグマグ作業する? 私、邪魔?」
「別に〜。藁人形を置きに来ただけ。倉庫に置いとくとさぁ、すーぐにペタタマが使い切っちゃうんだよね。在庫が少ないとセーブするみたいだから隠しでココに置いてんの。頭いいでしょ」
マグちゃんは賢い。俺はマグちゃんの手のひらの上で踊らされていた。
スズキが共犯者に名乗りを上げた。
「あ、私がやっておくよ。それ貸して」
「そお? じゃ、ヨロ〜」
マグちゃんは朗らかに藁人形をスズキに手渡した。作業台の裏で殺され掛かっている俺に気付くこともなく、手間が省けたとばかりに軽快な足取りで工房から遠ざかっていく。そんなマグちゃんの純粋さが、名実ともに彼女の城になった工房でイケナイことをしようとしている俺たちの罪悪感を刺激した。
ああ、マグちゃん。違うんだ、俺は……。
背徳的な行いにスズキは興奮している。藁人形を作業台の上に置き、俺へとにじり寄ってくる。
「私たちがココでこんなことしてるってマグちゃんにバレたら怒られそうだね」
……スズキは普段マグちゃんをマグと呼ぶ。今マグちゃんと呼んだのは、俺がマグちゃんを大切にしていることを知っているよという意思表示だ。
俺はカッとなってスズキの細い手首を掴んだ。こんなのはやっぱりおかしい。殺されて堪るか! よりにもよってこんなマグちゃんの部屋みたいなトコでっ。
ジタバタと抵抗する俺に、ますます興奮したスズキが体重を掛けて押さえ付けてくる。レベル差がっ。レベル差が大きすぎる!
俺はレベル差で押し切られた。
じっくりと絞り取るように俺はじわじわと責められた。もはや抵抗する気力も湧かず、俺は工房の天井をぼんやりと見つめる。スズキの荒い息遣いが工房に響き、俺の反応を求めてかスズキの要求が激しさを増していく。その表情に一抹の不安らしきものがチラつくのを感じて、俺はいつしか繋がれていた彼女の手を爪痕が残るくらい強く握り返した。す、スズキ。俺、もう……!
作業台の上に乗っていた藁人形が、ぽとりと床に落ちた……。
2.ポポロンの森
なんだかスッキリしたぜ。
死に戻りした俺は誇らしいやら何やらで、すっかり気が大きくなって森の中をのんびりと歩いて行く。
やはり俺は間違っていなかった。
ウチの子たちは完全に頭がおかしい。俺は定期的に殺されてやるべきなんだ。そうすることで結果的に俺のソロ活動が捗る。
本日の予定はスマイルくんが解放したワールドエンチャントモードとやらの検証だ。クソ廃人どもが夜を徹して色々と試しているらしいので冷やかしに行く。なんか分からんけど称号が貰えるようなのでね。貰えるものは貰っておくのが俺のポリシーなのさ。
なお、スマイルくんの読みは当たっていたらしくレベル40のキャップが解放された。イベント【虚なる神】とやらは待ちに待った四次職の転職イベントだったらしい。詳しくは知らん。どうせ俺はレベル制限で四次職にはなれない。興味がないと言えば嘘になるが、悔しいのであまりこちらから触れないようにしている。つーかレイド級のスキル解放が全然進んでないのに職位だけ上げても仕方ない気がする。三次職の浪士がまさにそれで、我らが日本サーバーはスラリーの三段階目を解放していないため、ちょっと魔力が多い準隊士でしかない。その割には戒律が厳しいので、むしろ劣化している説すらある。
検証会場の人間の里は相も変わらず粗大ゴミがうろつく魔境であり、そこら中に轢き潰されたゴミの死体が転がっている。ちっ、汚ねーなぁ。俺は早くも不快な気分になった。
俺は以前からずっとやっていたのだが、死に戻りの熟練度が増した昨今のゴミどもは、死体が命の火に還元される待機時間をある程度コントロールできるようになった。マーキングと呼ばれる非マナー行為だ。女キャラは恥ずかしがってマーキングをしないため、転がっているのは大体が野郎どもの死体で、生死に関わらず可愛くないので野グソとも言う。まぁ別に女の死体なら可愛いって訳じゃないが。死に顔を意識してるぶん、かなりマシだ。その点、野郎どもはいかに汚く死に晒すか競ってる面がある。舌べろーんとか白目を剥くとか顔芸に走りがち。
くそがっ、モツ踏んだ。道に撒き散らしてんじゃねーよ! 俺は俺の靴を汚したモツを蹴っ飛ばした。景気良く散らばったが俺の心は晴れない。くそっ、くそっ……! この感じ、マジ野グソだぜ。なんて有様だ。
俺は野グソを回避しつつサトウシリーズ御大の機影を探して人間の里をうろつき回る。もっと深部寄りか? 俺ならむしろ外縁部に住み着くけどなぁ。β組の考えることはよく分からん。
俺はそこら辺を歩いていた知らない女に声を掛けて案内して貰うことにした。
「あ? 知らねえけど、こっちだろ。こっちだ、こっち」
当然のようにネカマだった。
ぴょんぴょんと跳ね回って俺を先導してくれる。ハチもそれやってたけど、なんかマイクラみてーな走り方だな。
「砂漠の攻略してっと、どうしてもな〜。射撃されてっ時もなんとなく避けやすい気がするし」
俺は揺れるネカマのおっぱいを視界の端でキッチリと捉えながらあとを付いていく。
ふと熱を感じて首をねじると、サトゥ氏の顔面が間近にあった。オンドレぁ! 俺の渾身の先制攻撃。腕からウッディを生やしてのレーザー斉射をサトゥ氏はひらりと躱した。吐き気を催すような気持ち悪い動きで俺に肉薄するなり俺の腕を掴んでブン投げる。死ね! 俺は当てずっぽうにレーザーを撃つが当たらない。常日頃から雪合戦よろしく嫌がらせのゴミスキルで撃ち合いをしている種族人間の動きは日増しに気持ち悪くなっていく。
やだやだやだ! ブン投げられた俺をボールに見立てた廃人どもがダイレクトでパスを繋いでいき、一周回って最後にパスを受け取ったサトゥ氏が俺と手を繋いで万歳した。
「人力人狼ゲ〜〜〜〜ム!」
ああ、そういう?
称号で遊んでいるようだ。
……このゲームいっつも人力だな。気の利いたシステムがないから。
新コンテンツの検証は【敗残兵】が主導している。タルに乗ったリチェット隊長がパンパンと手を叩いて音頭を取る。マイクを片手に途中経過の説明を始めた。
「男女に分かれたか〜? ざっくり説明するぞー。組になったメンバーにスマイルがテキトーに称号を振る。レッドネームというのが人狼だ。そいつはプレイヤーに有効な特性を持ってる。効果は色々やって試してる途中だ。レッドネームを判別できる占い師は、今スマイルと協議してるけど要らないかもしれない。とにかく試行回数を増やすぞー。森に散ってテキトーに殺し合え。30分後にまたココに集合すること。以上。返事はー?」
はーい!
かくして人力人狼ゲームが始まった。
メンバーは俺とサトゥ氏、残りは全員知らないゴミだ。男女で組を分けたのはスケべ根性で検証結果が極端に偏るからだろう。
この中に人狼が居る……。
第一回。俺は称号なし。村人ってことか。
人力と言うだけあって殺しはアリなんだな? マイクラ人狼みたいなもんか。
サトゥ氏が時短を意識してスピーディに場を回す。
「占い師はだーれ?」
誰も名乗り出なかった。
真っ先に人狼の標的にされるから、か?
コイツら自分を犠牲にして村に貢献する気がまったくねえ。
「占い師は居ないね」
居ないなら仕方ないね。
「ハイ二人一組になってー。森で作業して五分後にココ集合ね」
二人一組になるのは人狼のアクションを促し、かつ炙り出すためだろう。俺は知らないゴミと組んだ。魔法使いのゴミだ。
とりあえずサトゥ氏を殺っちゃおう。俺はリスク管理のできる男。あいつが人狼だとヤバすぎる。よって殺しておいたほうがいい。鉄は熱いうちに打てってね。どうよ、この完璧な理屈。
俺は人間爆弾を投下してサトゥ氏を殺した。よし。
五分経った。村長のサトゥ氏が戻って来ないので仕方なく俺が場を回す。
投票して処刑するやつ決めるぞー。その前に……占い師は本当に居ないんだな?
俺は念を押すように尋ねた。
……やはり占い師は居なかった。
ちっ、クズどもが。まぁいい。決を取るぞ。人狼はだーれ?
ほう、満場一致で俺とは。
参考までに理由を聞いても?
「人狼だったら厄介かな、と」
「なんなら村人でも危ないよね」
「自分一人だけ生き残ろうとしそう」
「前科が……」
「日頃の行いっスね」
「前科がね……」
なるほど〜。でも俺は推理力あるほうだからね。人狼のちょっとしたミスも見逃さないよ? 俺は役に立てる男。だから殺さないで。ていうかさ、お前らは前科前科って言うけどそれって人狼ゲーム的にはメタ発言じゃん? 今この場に居る俺は言ってみれば赤ちゃんみたいな存在なのよ。産声を上げたよね今。おぎゃあ。生かしといたらヤバいとかそういうのはやめよう? 私怨は捨てよう。ゲームが成立しないから。そう考えると俺は疑われる要素ゼロなんだよね。殺さないでください。
投票の結果、俺は処刑された。くそが。
疑心暗鬼に陥った村人どもは自分だけは生き残りたいと思ったらしく単独行動を開始し流れるように全滅した。ざまあみろ。
第二回。俺とサトゥ氏が人狼に当選。やったぁ。俺とサトゥ氏は別に何もやってないのに投票で順番に処刑された。クソすぎない?
第三回。ゲームが成立しないので投票システムが廃止された。よその村でも似たような状況らしく、占い師が廃止された。代わりに検死を行い村人と人狼を判別できる検死官が導入される。霊媒師と違って回数制限はない。これが役に立つかどうかはやってみなければ分からない。スマイルくんには何か考えがあるのだろう。この回は長引いた。検死を警戒した人狼が村人の死体を埋めたのだ。少しずつ減っていく村人……。
村長のサトゥ氏は強硬策に打って出た。
「間引こう。頭数を半分にする。お前ら殺し合え」
俺は死んだ。サトゥ氏の無双が始まる。人狼を特定できず、手当たり次第に村人を殺害。まさかお前が人狼なのか……?
人狼ではなかった。自らの手で村人をオールキルした村長が村人たちの無念を胸に運良く生き残った人狼に決闘を挑むアツい展開から満を持してのタイムアップ。
第四回。アホ村長が強すぎるので着ぐるみによるバランス調整を実施。カエルくん再び。俺、人狼。でも村人とか人狼とか関係なく村長のカエルくんを排除すると約束していたので、人狼と村人による共同戦線が構築された。下克上じゃ〜!
しかしカエルくん読み勝つ。コンビを組んだパートナーを殺害するなり姿を消し、ゲリラ戦を敢行。こ、コイツ、強すぎる……! 着ぐるみでありながら、なおもこうまで!?
しかし同じ人狼としてヤツの息の根を止めねば……! そう、俺とカエルくんは人狼メイト。しかしカエルくんは俺を生かしておくと寝首を掻かれると理解しており、俺もまたカエルくんを生かしておくつもりはまったくなかったのである。人狼同士の仁義なき争いが幕を開ける。俺はついに禁断のMPKの持ち札を切った。残念だよ、カエルくん……。お前はここで死ね! 巻き添えを食らって村人が全滅したので俺とカエルくんの勝利。やったぁ。俺とカエルくんはぴょんと跳ねてハイタッチを交わした。死に戻りした村人どもから非難轟々。
「コイツら居るとゲームになんねえ!」
「人狼ゲームをしろ!」
「MPKはダメだろ!」
ちっ、せーな。分ーった。分ーったよ。じゃあこうしよう。投票制を復活さして普通に人狼ゲームしようぜ。一部の廃人が強すぎんだよ。ガチンコじゃ勝てねえ。処刑が決まったやつは抵抗するな。処刑人が人狼なら特効入るかもしれねーから、そこで判断しよう。ただし俺だから、サトゥ氏だから処刑ってのはナシな。
そういうことになった。
第五回。普通に人狼ゲームを開始。俺、まさかの人狼連チャンを引く。……これ決めてるのスマイルくんなんだよな? 俺に何か恨みでもあるのか? 俺は光の勢力の一員なのに。しかしやるからには本気で勝ちに行く。俺は相棒の知らない人狼とアイコンタクトをした。
森で作業は禁止になったので、村会議を行う。村長のカエルくんが人狼を特定するための作戦を募る。
……怪しいナ? まるで自分は人狼じゃないとでも言いたげだ。
確かに、と村人一同。
「そこ疑ったらゲームが進行しないだろ! お前、コタタマ氏……。さっき自分から私怨の処刑はナシって言ったのに、真っ先に俺を排除しようとしてないか……?」
そうか? 村長は疑って掛かるべきだと思うがね。さり気なく場の流れをコントロールできるからな。とにかく現時点で判明してるのは、お前が仕切りたがりということだ……。村長はマイナスからスタートで丁度いいくらいなんじゃないか。俺はそう思うぜ。さあ、村長さんよ。お前さんの言い訳を聞こうじゃないか。
「……いや、占い師が居ない。判断材料が何もない。つまり俺たち村人は何もしなくていい。タイムアップを待てばいいんだ」
俺は嫌だね。人狼を吊るしたい。
「お前っ、怪しいぞ……!」
怪しい? 何故? 投票は絶対だ。確率から言って村人が……同じ村で暮らしてきた仲間が吊るされる可能性が高い。それはとても悲しいことだ。犠牲者を出したくない。当たり前のことだよな……?
知らない人狼がぽつりと言う。
「逆に言えば……村人はこの村のために身体を張れるヤツだ。俺を吊るせ。検死官が俺の身の潔白を証明してくれる」
待てよ。それを言い出したら一番怪しいのは黙ってるヤツってことにならないか? いや……この問答に答えはないな。どうとでも取れる。そもそも検死官は誰なんだ? 何故名乗り出ない?
知らない検死官が慌てて口を開いた。
「検死官は俺だ。名乗り出るタイミングがなかった。お前らは口数が多すぎる」
なるほど。……これは言うまでもないことだが、人狼が検死官を装うことも当然あり得る。おっと誤解するなよ。お前がそうだと言ってる訳じゃない。情報を整理しよう。普通に人狼ゲームをやるとは言ったが、占い師が廃止された以上、これは不完全なゲームだ。検死官だけじゃ裏が取れない。人狼は検死官を装うべき……デメリットがない。俺の言っている意味が分かるか?
カエルくんがハッとした。
「まさか……コタタマ氏?」
俺はニコッと笑った。
そう、俺たちの中に人狼は最初から居なかったんだ。俺たちは……みんな仲間だったんだよ!
ナカーマ!
俺たちは喝采を上げた。
喜びに沸く村人たち。宴が始まった。
俺は村人の一人を木陰に連れ込んで殺した。
相棒の知らない人狼がカエルくんに襲い掛かる。俺は叫んだ。
そいつが人狼だー!
すかさず俺もカエルくんに襲い掛かる。死ねぇーい!
俺たちは返り討ちにされた。
人狼の返り血を全身に浴びてドス黒く変色したカエルくんが独りごちる。
「これで村の平和は保たれた」
これは、とあるVRMMOの物語
ハッピーエンド!
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