雑談
1.クランハウス-居間
何をトチ狂ったか女アバターを引っ張り出してきたにわかネカマのゴミどもがウチの丸太小屋で経験値稼ぎをしている。
即刻退去するよう無言の圧を掛けてみるがまったく効いていないようなので俺は女の形をしたゴミどもに楽しい話題を提供してやることにした。
お前らさぁ。どこの誰だか知んねーけど、イヤそれすら最低限の情報だし言っててどうなのって思ったけど、それはもうこの際だから置いとくわ。Take 2…Joinッ。ワッフ〜。お前らさぁ。ウチに入ってくる前に通常動作みたいな感じで玄関のドアをパッと開いて居間チラ見から俺のご在宅を確認しつつドア閉めキャンセルで上がり込んでくるのやめてくれる? なんかもう軽くサバゲーのAIM振りみたいになってんじゃん。
俺の効果音芸がツボに入ったザコが吹き出してハイ一人脱落。残り二袋な。この燃えるゴミどもが。地域のルールを完璧に守った上で燃えるゴミの日に出すぞ。
ゲラ耐性弱→弱+(昇格)の一袋が言う。
「ンなこと言われましてもね。崖っぷちさんは近頃じゃ〜工具を凶器にしてくるそうじゃないですか。しかも何人かそれで殺ってるそうじゃないですか」
「勇ましいことですねー。こいつホントに索敵範囲広いからな。勝手に攻略難易度上がってんじゃねーよ」
最新情報をお届けってか。ウチの丸太小屋および俺の情報を共有するのはヤメロ。キモいんじゃボケカスコラァ。
「崖っぷちくんさぁ」
ンだよ。馴れ馴れしいな。殺すぞ。
「いや殺すぞじゃなくて。でこぴんヤメロっ。キミんちの地下にさぁ。なんかさぁ……あるよね?」
ん? え? いや、ないけど? 地下って……いや言ってる意味が分かんない。
「いやいや分かってるよね? 言い逃れできないってもう完全に理解してるよね? だって物証が俺らの真下に眠ってる訳じゃん。実在してンじゃん」
まぁお前の視点から言うとそうかもしれないけど……じゃあ逆に? 俺はそんなの知らないって言ってる。お前はウチの地下に何かあるって言ってる。俺とお前の証言に矛盾はないよね? 単に俺が容疑者から外れるってだけで。
「はいストップ。水掛け論に持って行こうとしてるよね。崖っぷちくんのさぁ、そういうトコ? ガチで逆転劇狙ってくるのマジKYっスよ。こらこらダメダメ。考えるな。企むな。悪知恵働かすの禁止」
イヤ悪知恵とかじゃなくてさ。お前、俺を疑うってことはウチの子たちを疑うってことだからな。言っとくけどウチのジャムジェムさんを怒らせるとヤバいぞ。しょせんゲームでしょハハーンって軽く見てるとマジでヤバいことになるからな(迫真)。どうなっても知らんぞ。俺はマジ。お前は、トリコ?(?)
「こいつホンット……! まぁまぁ聞いて。別にお前が損する話じゃないから」
ははん? まぁまぁいいでしょ。そうまで言うなら。とっくのとうに先生にはバレてっしな。
「ご本人バレしてんのかーい。もうあの人マジさぁ、個人のプレイスタイルを尊重するっていうか放置してるの段階に入ってない? 気の所為?」
気の所為だな。で?
「……この前、この家の近くをうろうろしてたらサトウニキが地下に潜ってくのが見えたんだよ」
ホラーじゃねーか。まずウチの近くでお前はナニをやってた。うろうろすんな。んでスマイルの旦那か。……ええ? マジで? あの人、ウチの地下でナニやってんの? 初めて会った時は正直キャラ薄いなコイツ大成しそうにねぇなぁ〜って内心見下してたけどガンガン属性積んできやがる。新環境と相性良すぎでしょ。勘弁してよ〜。しまいには上位個体を大量生産してレイド級のエサにするぞコンチクショー。
「それ一番やっちゃダメなこと〜。……!? あっ、ああっ、あー!」
ゴミが何かに気付いた。
「プクリを育てたのはαテスターか!? 時代を超えてッ。あいつらッ、何かとんでもないポカを……!」
よいしょお! 俺は余計なことに気が付いてしまったゴミにラリアットを浴びせた。ソファから押し出されて床に転がったゴミを俺のジャンピングエルボーが襲う。まぁ硬い床の上でやるような技ではない。自爆しないよう加減したこともあり、ゴミはごろりと床を転がって回避。
「くそっ、崖っぷち! テメェー知ってたな!?」
まぁまぁまぁまぁね。メカドラを完全にリビングアーマーに押さえられてるってのはそういうことでしょ。やっぱりプクリだけレベルが異常に高いもん。レイド級の暗殺者ってのも合ってると思う。答えは両方正解でいいんだ。むしろそれくらいじゃないと、あの環境、あのスキルに対してレベル4000越えは説明が付かない気がする。もっともそれはゴミが知る必要のないこと……。俺はチラッと残り二袋のゴミを見た。
素早く席を立った一袋が余計なことに気が付いた一袋を羽交い締めにする。
サトゥ氏の若干気持ち悪い尽力により我らが国内サーバーにおけるAI娘は見守られる対象になっている。優しい世界だねェ〜。
プロレス開始。俺は羽交い締めにされた一袋に腹パンを叩き込んだ。腹パン腹パン! 怒涛の腹パンにうずくまった一袋をもう一袋がチョークスリーパーに移行。まるでゴミ袋の口を縛るかのようだ。これは極まっている。完全に極まっている。ギブか? ん? ギブか? ゴミがゴミの腕をパンパンパンパンとタップ。ギブアッ! 試合終了〜。
俺は世の女性たちの味方なので、いくらネカマといえど女の顔面をブン殴ったりはしない。キレーなチャンネーときゃっきゃしたくてこのゲームをやってるのに、女の顔面を腫らすことに強い抵抗というか自己矛盾を感じるからだ。要はパソコンがフリーズを起こすようなものである。
俺はギブアップしたゴミを床に放り投げた。
さぁここでコタタマくんチャンスのお時間です。ウチの地下に潜り込もうとしているスマイル兄さんを目撃したAくんとBくんはその後どうしたでしょ〜か? ピンポーン! ハイAくん!
「はーい!」
ノんなや。キショいのぅ。おい、B。スマイルを放置したんか? 心して答えろよ。仮に放置したとしても上手に言い訳できたら楽に殺してやるぞ。正直者は偉いなんぞ人による。最悪バカに育つだけなんじゃないかとすら俺は思ってるぞ。
「そりゃ残念。フツーに話し掛けたね。β組と絡めるチャンスあったらフツーにイくね」
やるじゃーん。お前のステータス評価を五段階でFからEに上げてやろう。いいぞいいぞ〜。Bくんは不審なスマイルくんに声を掛けた! で?
「まぁ塩対応だよね。サトウ兄やんはオメェーみたいにキチッてないからイキナリ殺しに掛かってくることはないけど、言葉の端々で『あれ? 関係者ですか? 違いますよね? 関係者なら全員の顔と名前一致してるんで』みたいな感じを織り込んでくんのよ」
ハイハイあるある。え?目ぇ鍛えないとできないんスか?みたいなね。トラウマ作ってまでやること?みたいなね。チョット収支釣り合ってないかな〜みたいな。あんにゃろめはそういうトコある。アツくなってきたな。おい、C。勝手に人んちの床で寝っ転がってんじゃねーぞ。オメェーも一緒に盛り上げるんだよォー!
俺は失神しているゴミCを引きずり起こすと漫画知識で活を入れた。喝! いや失神していなかった。「ぬいいっ!」と変な叫び声を上げたCが跳ね起きた。
「肩甲骨を親指でグンッてやるのはゼッタイ違うだろ! せめてネットで調べろや探せば出てくンだろ!」
99.9%の確率で無駄知識だからな。俺の人生を無駄に使いたくない。スマホで検索する時間すら惜しみたい。面倒臭いが半分。いや同じことか。この理屈分かるよな? ゲームはいいんだ。俺は好きでやってるから。お前らもそうだろ? 違うとは言わせない。
俺は理路整然と論破した。
とはいえガチで殴り合いしたら勝てないのでゴミAとBが座ってるほうのソファに席替えした。モグラさんぬいぐるみを抱っこして三対一の構図を作る。人類社会なんぞしょせんはオセロよ。数が多いほうが勝つ。負けるのはミスって角を取られたやつだ。
さて話を戻そう。スマイル兄やんの塩対応がヤバい件について。俺はお前らに期待はしてない。あのサトウシリーズ御大をお前らごときが言い負かすのは無理だろ。生産職が束になったところで敵う相手でもない。さあ、どんな言い訳をしてくれるんだ? ワクワクするぜ。言ってみなよ。証言の食い違い程度は大目に見てやる。俺と勝負しようぜ。
ゴミどもの小芝居が始まった。当時の状況をテキトーに配役を割って再現する。スマイル役のクォリティがとんでもなく低かった。
「あ、アニキ! アニキじゃないスか!」
「ゼハハハハハ!」
おい。それワンピースの黒髭だろ。苦し紛れの特徴ワンパンキャラ皮被りヤメロ。声を寄せる気すらまったくねーってのがまたムカつく。そしてご本人様象形拳をやってるハズの二袋ですら何故かクォリティが怪しい有様だった。
「アニキぃ! アニキは俺らに塩対応ですけどぉ! 俺らぁ!……サトウさんは崖っぷちと仲良くしてるらしいって聞いてますよ」
途中でつらくなったのか急にご本人様の再現度が上がった。
「え? あ、ああ。そうだな……」
ワンピースの黒髭も急にモブっぽくなった。俺は思う。演技とはこうまで見ていてツラいものだったのかと。
「なにぃ!?……一人足りないんで。次俺ね。サトウさんは崖っぷちに甘いって印象あるな」
唐突な一人二役。リアクション担当は必要だったか? カットで良くね?
「友人だからね。それで?」
悲報。俺氏、スマイルくんのフレンドだった。別に登録はしてねーけどなぁ。してるに越したことはないんだけど、あの人ずっと君主だったし。
「アニキぃ! 俺ぇ! いや崖っぷちは俺ら側の人間だからね。燃えるゴミよ」
誰がゴミだ。一緒くたにすんなや。
「アニキぃ! サトウさんは俺ら側に寄ってきた側なんで〜。そんな急に他人行儀されても逆に戸惑うよね。あれ? そのリアクションで合ってるの?っていう。それは正解なの?っていう」
「一理あるな」
あるの? イヤないだろ。一分もねーよ。まぁニュアンスの違いってのはある。また聞きで情報量が削れるのは大抵それが原因だ。
「それな。ああいうタイプの男性って自分で筋が通ってるって思ったら急にガードゆるくなるんだよね。上級のオスの思考」
分かる。旦那は特にそういうトコある。
謎のマイルールでゴミの相対的な評価を上げたスマイルくんは先生を祀る地下神殿に訪れた動機を説明する気になったようだ。
「先生に報告は終えたからね。ルーティーンさ」
何を言っているのかまったく分からない。
…………。
イヤ分かった。うわっ、気持ち悪っ。報告だわ。報告してた。今になって思えば人間の里を復興するだの何だの黙って勝手にやればいいことを何故か先生に報告してた!
……キモいわぁ。もはや信者じゃん。教会に来る感じでウチの丸太小屋に礼拝されるのが一番気持ち悪い。そう言うと俺が悪いみたいな感じになりそうだけど、日本には信教の自由ってのがあるからね。信じる信じないは自己責任だよ最悪ケツはこっちで持つけどってことだ。ケツ持ちの政治が悪い。俺は悪くない。
「信ジル者ハ救ワレル! アニキぃ! 目を覚ましてくださいよォ!」
「言ったろう。ルーティーンさ。私はコタタマくんの怪しい宗教に入信した覚えはない」
自覚ナシ。狂ってやがる。これはもうスマイルくん本人の問題だろ。何なら俺は空気みたいなもので、なんか背景でボソボソ言ってるのが居るけどモブ音声だから雑踏に紛れて消えたかもしれない。つまり俺は最初からあそこに居なかったのだと解釈できる。俺は居なかった。OK。
宗教キメたサトウシリーズ御大にゴミどもはドン引きして早々に話を打ち切ってフェードアウトしていったようだ。
「まぁ本題はサトウニキじゃないからな。先生はあそこのこと知ってんだ? 引かれなかった?」
そらドン引きよ。そのあと一度たりとて話題に出して来ないもん。まぁ俺はもう完全に手遅れだからね。話しても改宗の目がないから意味ないっつーか……。何なら出会って三日目には入信してたからね。
俺も小芝居で返した。
一日目の俺。β組だ? チッ、ネフィリアの同僚ってトコか。どってことねーよ! 何ならココを乗っ取って俺の拠点にしてやっか!? あ、ポチョさんチーす。
二日目の俺。やだ、この羊さん優しい……。ネフィリアと全然違う……。
「早い早い。即落ちしてる。何があった?」
三日目の俺。先生おはようございます! 今日何時までログインしてるんスか? 一緒に遊びません? 実は俺ぇ、露店バザー行ったことなくてぇ。オススメのお店とかあったら案内して欲しいなってぇ。あ、パイセン! チーす!
そう、パイセンたちが卒業する前の話だから。理想の後輩ムーブしてたら気持ち悪いって言われたわ。変わり身が早すぎたんかな〜とは思ったんだけど、キャラ変はゴリ押しが効くかんね。お前ちょっと前までそんなじゃなかっただろー!ってイジってくれんのよ。時間掛けるのも全然アリだけどね。ツンツンしてた後輩がある日を境にデレるみたいな。その路線で行くか?って一瞬悩んだんだけど、その頃すでにウチのアットムがその枠に収まりつつあってさぁ。負けたくなかったんだよ。アットムくんはツンツンしてたね。パイセンらが狩りに誘っても「……はぁ」みたいな感じでさ〜。先輩に逆らうのもアレなんで従いますけど先輩後輩とか内心関係ないよなって思ってるんでーみたいな感じよ。打ち解けるには時間掛かるやつ。で、その間に俺はパイセンらの点数稼ぎするぞーって思って。犬キャラ目指してたよね。俺がよく言うチワワってのはパイセンらが言ってるの聞いたのが初出なんだよ。コータってチワワみたいだよな〜って言ってくれてて。俺は床下でそれ聞いてたんだけど。あ? 床下は床下だよ。俺は俺が居ないトコで叩かれる俺の陰口を拾いたかったんだよ。それ知ってたら簡単にひっくり返せるからね。で、聞いてたらスズキがさぁ。当時ね。あいつめっちゃ生意気なんだよ。黙って黙々と作業してるんだけど、パイセンらは俺とスズキとアットムがあんまり上手く行ってねーなって察してて。まぁ俺はあいつら眼中になかったから。先輩に好かれたら勝ちだろって分かってたから。で、そう、パイセンらが「新人のコータどう?」みたいな話をスズキに振ったのよ。そしたらあいつ「……あれ絶対に演技でしょ」みたいなことをボソッと言うの! めっっっちゃ生意気! これはもう殺すしかねえなって俺。実際そのあとMPK仕掛けて何度か殺してる。ポチョとアットムも巻き添えで。それで一時期、運悪いトリオみたいな感じになってたから。思えばあの頃の俺が全盛期だったな。隠密行動のスキルレベルが高かった。今はもう無理だな。集中が長時間持続しない。使わないと錆びるんだよ。フィールドマップの把握更新も大分サボってるし。
経験値稼ぎに戻ったゴミ袋三つは俺の話を聞き流しながら延々と作業を続けていた。たまに耳に入りやすい話題、つまり興味がある話題になるとボソボソと返してくれる。
「いや、別にたぬきちは悪徳業者じゃねーぞ。ただ事前に許可を取れよってだけで」
たぬきインパクトは今回もねーしな。封殺の手間が掛かんないのは楽でいい。まぁそれはそれでチョット寂しいっていうね。ゲーマーって基本構ってちゃんなんだよな。俺が主人公じゃんっていう気持ちは絶対にどっかにある。
これは、とあるVRMMOの物語
喋ってログアウトする日。
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