直結厨よ。また会う日まで
暗号文の解読はやり方さえ分かっていれば誰でもできる。
大して難しくないので攻略組ならやれるだろう。
それじゃあ困る訳だ。
何しろ、この暗号文はお行儀のいい目障りな攻略組を襲撃して身ぐるみを引っぺがすために考案されたものなのだから。
よってプロフィールを使う。このゲームのプレイヤーのプロフィールはフレンドしか閲覧できない仕様になっている。
キーワードを数人に分けてプロフィールに仕込めば、そいつらと付き合いのあるプレイヤーでしか犯行計画の全貌が分からないようにできるという寸法よ。
そのシステムを俺たちは情報レベルと呼んでいる。
要するに悪党どもに顔が利くやつほど核心に近い情報が降りてくる仕組みになっている。ゴミの中のゴミという訳だ。
無論、俺は違う。俺はそんな悪の大幹部みたいな輩とは生きる世界からして違う。しかし俺は言ってみれば三重スパイのようなものなので、結果的にはそこそこ上の情報レベルまで閲覧できる。
だが、饅頭屋がフラれた理由は分からなかった。山岳都市デートで何かあったと見なすのが妥当だろうが……。饅頭屋と一緒にデートプランを練ったものの、さすがにデート当日に二人を陰から見守るなんてキショいことはしなかった。
まぁ……つまり饅頭屋とファリン嬢は何らかの事情で破局し、俺は二人の仲を気遣って遠慮する必要が一切なくなった。
ので、こうなる。
1.中国-海上都市-上空
【ファリンとかいう女を出しな】
完全変身した俺は総督府の上空を陣取ってマジュンくんに要求した。
勝手に着いてきた粗大ゴミたちも一緒だ。どいつもこいつも醜悪な姿をしている。よほど自分の人生に不満があるらしい。女のチチがどーしたケツがどーしたと大声で下品なことを言い合ってゲラゲラと笑っている。日本が世界に誇るシャイボーイはどこか遠くへ行ってしまったようだ。
全力で残機を垂れ流しているアホどもに、さしものマジュンくんも唖然としているようだった。隣には同じく唖然としているリンリー嬢がぼけっと突っ立っている。
ごうんごうんと機体を総督府に寄せる俺に、マジュンくんはかろうじてこう言った。
「ち、チェンユウ。君たちは……一体何がしたいんだ?」
別に何か考えがあった訳ではない。ロストした際に女神像の登録がリセットされてしまったので、何らかの方法で海を渡る必要はあった。あったが……他に遣りようは幾らでもあった。理屈をひねり出そうと思えば幾らでも思い付くが、どれも正解とは言い難く、結局はこういう言い方になる。
まぁ……残機満タンだったしよ。俺は杭みたいな歯列の隙間からハァーと寒々しい吐息を漏らしてこう言った。
【溜めすぎは身体に良くないって言うぜ?】
下ネタで〆た俺に後ろの粗大ゴミどもが下品な声を上げて笑う。
【ひゃっ! サイテー! サイテーの理由だ!】
【くくっ。崖っぷち〜。オメェーはそうかもしれねぇーけどよォ〜!】
知らないモブキャラが俺の愛らしい真ん丸ボディに馴れ馴れしく腕を引っ掛けて、マジュンくんにやんわりと手のひらを見せる。
【まっ、そういうことだ! 李信馬准さんよ。ファリンとかいう女は借りてく。あんたには一言断っておこうかと思ってナ……!】
「事情はまったく分からないが……」
マジュンくんは不思議な生き物を見るような目で俺たちをじっくりと眺めてから、ニヤッと笑った。
「当然、あとで顛末を教えてくれるんだろうね?」
マジュンくんの協力もあり、俺たちは無事にファリン嬢を連れ出すことに成功した。せっかくだから海上ドライブと洒落込みますかね。
エンフレは変身時に一番多く残機が削れる。機体の維持そのものは生体パーツの駆動に必要なぶんだけでいい。イメージとしては煮えたぎった溶鉱炉にコンフレを一人ずつ放り込む感じだ。
ゴミどもを引き連れた俺は、頭にファリン嬢を乗っけてすいすいと海上を泳いでいく。
ファリン嬢は喜んでくれた。向かい風に乱れる長い黒髪を手で押さえながら、
「速ーい! 乗り心地最悪だけどっ」
エンフレは宇宙戦仕様だからな〜。本気を出せば大気圏を軽く突破できるんだぜ〜。
ファリン嬢はいかにも中国美女といった感じの女キャラだ。身体の線は細いが、意思の強そうな切れ長の目をしている。
俺たちが何の用事で来たのかは察しているだろうに、特に萎縮している様子は見られなかった。何か妙だ。こ、これはもしや……。俺は嫌な予感がした。同行しているゴミたちも察しているようだった。それが思い違いであればいいのにと結論を先延ばしにするようにサーカス飛行を披露してファリン嬢の喝采を浴びている。
飛び去っていく俺たちを、海面から頭だけ出したタコさんが不思議そうに見つめていた。
2.日本-ポポロンの森-人間の里-居酒屋【火の車】
情報共有の大義を掲げて徒党を組んだゴミどもからは、いかなるプレイヤーも逃げ切れやしない。
他人の不幸は蜜の味。普段は直結厨を軽蔑し忌み嫌うプレイヤーも今日だけは饅頭屋に優しかった。それは代わり映えしない日々に愉快な話題を提供してくれたフラれ男への感謝であり、また人生におけるソロ活動続投の意思を固めた同士の勇気ある決断を褒め称えるものであった。
俺はファリン嬢にいったん外で待機するよう告げて、満員御礼の【火の車】に足を踏み入れた。料理を運んでいる似非ティナンことピエッタとばったり出食わす。悪質な詐欺師として知られるピエッタさんは俺と目が合うなり嫌そうな顔をした。
「げっ。また増えた」
よう。バイトか?
「臨時だよ、臨時。フラれ男が居るっつーから冷やかしに来たらこのザマだ。マスター! 客だ! 追い返すかー?」
厨房から「そこら辺に勝手に座れ」とマスターの声。普段から荒くれどもの相手をしていれば慣れもする。俺はお言葉に甘えて、ゴミどもに囲まれてテーブル席でしゅんとしている饅頭屋に声を掛ける。
よーぉ。饅頭屋〜。
ハッとした饅頭屋が顔を上げて俺を見る。
「へ、陛下。このたびは……面目なく……」
ゴミどもは饅頭屋をイジりたくて仕方ないようだが、ひとまず俺に席を譲ってくれた。俺と饅頭屋が話してるのを聞いたほうが面白いと思ったのだろう。ゴミめ。
……で、何があった? デートがうまく行かなかったのか?
饅頭屋は慌てて頭を振った。
「いえっ、そのようなことは。ただ、その、それがしが。それがしが、いけなかったのでござる……。ファリンに責はござらん」
具体的には?
饅頭屋はテーブルに視線を落とし、コップを凝視していた。目が泳がないよう意識的に視線を固定しているようにも見えた。
「や、やはりがっついてしまったのが良くなかったかと。陛下にあれほど強く言われていたのに、舞い上がってしまって。げ、言動の端々にですな。そういうのが出たのではないかと。ハイ」
舞い上がっていたのは確かなようだな……。
そう言って、俺は椅子の背もたれに腕を引っ掛けた。ぐるりと店内を見渡してゴミどもに言い聞かせる。
オメェーら! 余計な口出しすんなよ!
饅頭屋が目を丸くした。
「ま、まさか……」
察しのいい男だ。俺はにこっと笑って言ってやった。
饅頭屋よ。俺はな、お前らのデートプランを練ってやったんだ。分かるか。気が合う男女のお散歩プランを組んでやったつもりはねえんだよ。だったらこれからだろ。任せとけ。俺がお前を一人前の男にしてやる……!
俺は振り返って合図をした。店の外で待機していたファリン嬢がゴミに押し込まれて店内に入ってくる。
この流れで無関係な女ということはまずない。饅頭屋をフッたことになっているご本人様の登場にゴミどもがワッと歓声を上げた。
面識すらない他人から一斉に歓迎されてファリン嬢は戸惑っている。騒ぎ立てるゴミどもの中から知った顔を見つけて、ホッと安堵したようにこちらへと歩み寄ってきた。
「よっ、ヲヤマ。これ何の集まり?」
つまり事の真相はこうだ。
饅頭屋はファリン嬢とイイ仲になったと思っていたが、それは饅頭屋の勘違いだった。
デート本番になって話が食い違うなりして饅頭屋もそれを察したのだろう。知り合いのゴミを通して暗号文をプロフに打ち込ませ、失恋を自作自演した。すぐにフラれたけど女と付き合ったことはあると見栄を張った訳だな。
でもよ、饅頭屋。もっと自信を持てよ。お前は俺が育て上げた自慢のもぐらっ鼻なんだぜ?
俺には勝算があった。実際にファリン嬢と会って思ったことだ。普通、いきなりエンフレで連れて来られてあんなふうにハシャいだりはしない。何をされるのかと怯えるか、事情を尋ねるなりするだろう。そうじゃないってことは、ファリン嬢なりに何かを期待してのことなんじゃないか。例えば、饅頭屋にお願いされた俺が告白の場にファリン嬢を招待した、とかだ。
俺は、硬直している饅頭屋に目で合図した。大丈夫だ。イケる。
饅頭屋はぎこちなく笑って、ギクシャクとした動きでファリン嬢に手を振った。
「ふ、ファリン。その、何か飲む物でも頼むか?」
饅頭屋の真面目くさった口調にゴミどもが吹き出した。俺はパチンと指を鳴らしてそいつらの退場をゴミどもに命じた。
店内のゴミ清掃が行われる中、俺は饅頭屋がいかに使える男であるかをファリン嬢にアピールした。
二人は中国で知り合ったんだってな? ファリンさん。ヲヤマはまぁまぁだろ。日本サーバーじゃトップクラスのプレイヤーだ。Dモールのヲヤマってな、それなりに名の知れた男だよ。マールマールとスピンドックが揉めてプレイヤーが真っ二つに割れた時、そいつらを一時は和睦まで持って行った立役者の一人だ。
俺の意図を察したのだろう。ファリン嬢はもじもじしている。
饅頭屋が意を決した。
「ファリン! 私と……!」
「ごめんなさい!」
饅頭屋は食い気味にお断りされた。いや、まだだ! どうせ今のままの関係がいいとかだろ……! 俺はギョロリと目を動かして饅頭屋に目で合図した。
ぐッと頷いた饅頭屋が情熱的な眼差しをファリン嬢に向ける。
「分かっている。君が私をそういう目で見ていないということは。だが、きっといつか振り向かせてみせる。それだけは言っておきたくてな」
ゴミどもがヒュー!とヘタクソな口笛を吹いて喝采を上げた。
俺は垂らした手を組んで内心でほくそ笑んだ。上出来だ、饅頭屋……! それでいい。ファリン嬢にも葛藤はあるだろう。饅頭屋は日本人だ。ためらう気持ちも分かる。しかしコイツほどの男はそうざらには居ない。あとは俺の仕事だ。
俺はピエッタさんが持ってきてくれたドリンクをファリン嬢に差し出してにこやかに言う。
無理に連れ出して悪かったな。まぁこういうのは早めにスッキリさせといたほうがいい。勝手に告白してきた男をフッたからって気まずくなるのも変な話だろ? 勝手に惚れた男が悪いんだ。気楽に行こうや、気楽に。
おやおや? ファリン嬢が何やら意を決したご様子。キッと眦を決して、バッと勢い良く饅頭屋に頭を下げた。
「ごめん! ヲヤマ! 私は……! 私は! ネカマなんだぁー!」
あひゃあ!
俺はガターンと腰を抜かして椅子から転がり落ちた。勝算がマイナスの谷に落下した衝撃でしばらく立ち直れそうになかった。
床に這いつくばってガクガクと手足を震わせる俺に、饅頭屋がしがみ付いてくる。
「へ、陛下!」
こんな時にも真っ先に俺の心配をしてくれる饅頭屋が健気で哀れに思えて仕方なかった。この男は根っからの直結厨だ。今さっき振り向かせてみせると誓った女のリアルが男だと知ってなお恋愛感情を向けるのは無理だろう。手のひらを返したように情熱は消え失せる。俺の部下にそんな無様な姿を晒させて堪るかよ……!
どけェ! 俺は饅頭屋を突き飛ばしてギュンッと黒魔石を編み上げた。ギロリとファリン嬢を睨みつけて叫ぶ。
ワシをコケにしてくれたのう! このネカマ野郎がぁーッ!
全てを有耶無耶にする。それしかない。
俺の手のひらの上で黒魔石が分離し、黒い金属片がファリン嬢とゴミどもを隔離していく……。
反射的にファリン嬢へと手を伸ばした饅頭屋の眼前で、黒い障壁が重く閉ざされた。
3.ゲストルーム
ファリンがハッと我に返った時、彼女はすでに広大な黒い洞窟に囚われていた。
目の前には長い階段が上へと伸びており、辺りを見渡せば床一面をびっしりと黒い卵のようなものが埋め尽くしている。いくつかの卵はすでに孵化を終えたようで、卵の殻だけが散乱している。一体何が産まれたのか。ファリン嬢は気味の悪い想像をしたようで、悪夢から逃れるように階段に足を掛けた。
長い階段だ。どんなに目を凝らしても闇が纏わりついてくるように先を見通すことができない。どくん、どくんと何かが脈動するような音がファリンの不吉な想像を掻き立てて、彼女の足を早める。
どれだけ歩いたろうか……。
薄気味の悪さに怯えていたファリンが、やがて強い宿命に引かれるように、表情に使命感を帯びていく。
最後の一段に足を掛けた時、すでに彼女は一人の戦士だった。
矛を引き抜き、行く手を阻む男へと矛先を向ける。
「どうして……。チェンユウ」
そう、俺である。
俺はゆっくりと腕組みを解いて、背に担いだネコピックを引き抜いた。猫の手を模したネコピックの先端に黒い金属片が結集し、黒い爪が生えていく。
待っていたぞ、この時をな……。
「……それが【ギルド】の力なの? 人間であることを辞めて、その先に何があると言うの。目を覚ましなさい!」
バカめ!
俺は怪鳥のように飛び上がって着地した。ダッと地を蹴ってファリンに襲い掛かる。
「ヤアッ!」
ファリンが半月状に振り上げた足で俺の顎をパカンと打ち抜く。
ぬうっ……!
俺はガクガクと震えるひざでズリズリと後ずさっていく。
強い……。俺一人では、勝てんか……。
俺の身体が背後の闇に呑まれていく。
「待ちなさいっ!」
俺を追って踏み込んできたファリンを、俺は荒ぶる鷹のように両腕を広げて歓迎した。
地獄の底へようこそ。
「っ……!」
ファリンは絶句した。
俺は、もう一人ではなかった。
黒く、大きな魔石から俺の上半身が生えており、半透明な魔石の中にゴミどもが胎児のように身体を丸めて眠っている。
一言で言うならば、ロマサガ2の七英雄のような有様だった。
魔石越しにゴミどもの鼓動が伝わってくる。力強い鼓動だ。
俺は一人じゃない。
だが、ファリンもまた一人ではなかった。
脈打つ壁の一部が脱落し、一人の男が俺のゲストルームに足を踏み入れてきたのだ。
キサマ……どうやってここに。
ファリンが男の名を呼ぶ。
「ヲヤマ!」
饅頭屋だった。
饅頭屋は、異形と化した俺を悲しそうに見つめている。
「陛下……。あなたの周りにはいつも誰かが居る。あなたに、この力は使いこなせない。あまりにも相性が悪すぎる……」
……そうか。お前は一度、俺の黒魔石を取り込んでいる。その時に俺の力を取り込んだのか。
饅頭屋はかぶりを振った。やはり悲しげに。
「違う。どうして分からないのですか。あなたは……こんな私を仲間だと思ってくれているのです」
そう言って饅頭屋は腰の剣をすらりと引き抜いた。俺の考え違いを正すように、黒い金属片が饅頭屋の剣へと結集し強化していく。剣の柄から伸びたコードのようなものが饅頭屋の腕に巻き付き、迸った稲妻が刀身を舐める。
俺は認めなかった。
……何が違う? 他の誰にお前と同じことができる? だが、仲間というのは正しいかもしれない。饅頭屋よ。その女を斬れ。お前を騙し、お前の心を弄んだ女だ。
しかし饅頭屋は首を縦に振らなかった。
「それはできませぬ」
何故だ!
「陛下には以前にも申し上げた筈。それが、たとえ一億分の一の確率だろうとも。仮に那由多の彼方にあるほんの僅かな可能性だったとしても……! 拙者は諦めないでござるよ!」
よく言ったァ!
俺はゴロリと地べたを転がって饅頭屋に飛び掛かった!
4.決戦
「御免!」
饅頭屋の渾身のひと振りを、俺は目で追って鼻で笑った。遅すぎる。ハエがとまるぜ。
とはいえ下半身がデカい卵みたいになっているので、回避などできよう筈もなかった。
ぐあ〜!
饅頭屋の斬撃をまともに浴びた俺は、バシンバシンと幾筋もの光条を放った。
こ、こんな筈では……。
ズズズズズと身体が崩壊していき、やがて塵となって消える。
俺が死ねばゲストルームも崩壊する。
ゴゴゴゴゴと地が揺れ、壁や天井が崩落を始める。地面に走った大きな亀裂が饅頭屋とファリンを隔てる。
饅頭屋がファリンに手を差し伸べた。
「崩れるでござる……! ファリン殿、早くこちらへ……!」
「わ、分かった!」
ぴょんと亀裂を飛び越えたファリンを饅頭屋が支え、自分が出てきた壁の穴に彼女を押し込む。すぐに自分もあとに続こうとするが、ふわっと幽体離脱した俺を目にして動きを止めた。
「へ、陛下……」
俺は、行け行けと手をしっしと振る。
ファリン嬢が外から饅頭屋を急かす。
「ヲヤマ! 早く!」
差し伸べられた手に、俺は大きく頷いた。
饅頭屋がぺこりと頭を下げて、ファリン嬢の手を取る。
それでいい。達者でな。饅頭屋……。
5.エッダ海岸
ざざん……ざざん……
小舟に乗った饅頭屋を、見送りに来たファリン嬢が波打ち際に立って寂しそうに見つめている。
「……本当に行っちゃうの?」
饅頭屋の決意は固い。コクリと頷き、
「世界は広いでござる。それがしの目で見て、この足で歩きたいでござるよ。まずはアメリカでござるな」
「でも……」
ファリン嬢は何か言いたげにしている。
饅頭屋はファリン嬢に歩み寄って、彼女の両肩にそっと手を置いた。
「ファリン殿。オフ会メンバーが集まる、その日まで、それがしを待っていて欲しいでござる」
ファリン嬢がようやく笑った。目尻に浮かんだ涙を指で拭い、肩に乗せられた饅頭屋の手に手を重ねる。
「だから何なの、それ。私はネカマだって言ってるでしょ。変な期待しないでよ〜」
バサっとブーンが砂浜から飛び立ち、二人の頭上を過ぎ去っていく。俺を抱えて。
俺は寄り添う二人を見下ろして鼻を鳴らした。
「ふん……」
これは、とあるVRMMOの物語。
直結厨の旅は続く……。オフ会メンバーを求めて、どこまでも。
GunS Guilds Online




