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ギスギスオンライン  作者: ココナッツ野山
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コタタマ、虎の巻

 1.クランハウス-居間


 居間でポチョと一緒に6sTVを視聴している。

 ログインしたてのポチョはパジャマを着ていて、ご相伴に預かっている俺はポチョの手元を覗き込む形だ。自然とポチョの胸の谷間が視界に収まるため、大変に目に優しい。常日頃より目を酷使することが多い俺は、目ん玉を労わるようにポチョのおっぱいを鑑賞した。もちろん本人に気取られるようなヘマはしない。俺の目は有効視野が広いので、セクハラ対象の目を見つめながら視界の端っこでおっぱいを吟味することができる。そして今もポチョの手元を見つめながらおっぱいを吟味しているという寸法よ。

 寝ぼけまなこのポチョが着崩したパジャマから胸元が少しはだけていることに気付いてさり気なくおっぱいを隠した。チッ。俺は内心で舌打ちしたが、恥ずかしそうにチラリと俺の様子を窺ってくるポチョに素知らぬ顔で「ん?」と爽やかに微笑みを返した。下心などないと分かって頂けたようで、ポチョは照れ隠しをするように「えへへ」と笑ってくれた。俺はこの金髪が無防備であることを良いことにとんでもないことをしている訳だが、このゲームは仕様上痛覚カットされているため、俺の良心が痛むことはなかった。ョ%レ氏めぇ……! 俺は運営ディレクターに義憤を燃やしながら、おっぱい鑑賞がメインであったことを悟られないよう何食わぬ顔で6sTVの視聴を続ける。


 ネカマ六人衆が有り余る私財を投じて開局した6sTVは、国内サーバーでトップを争う大型クラン【敗残兵】と【目抜き梟】の共同コンテンツだ。

 クソのような廃人どもは敵に塩を送った形だが、プレイヤーがゲーム内で動画を配信するという初の試みを定着させるには目玉となる番組がどうしても必要だった。

 そのためにサトゥ氏はリアクション芸人よろしく面白おかしく絶望的な戦いへと身を投じ、セブンは新マップで最短ルートを模索しカメラマンを道連れに砂漠に赤い花を咲かせている。やっていることは派手だが、よくよく考えてみれば単なる日常モノなので、今ひとつパンチが弱い。サトゥ氏に難癖をつけて死地へと追いやるリチェットが少し面白いくらいだ。この手のコンテンツで間違いないのは、やはり報道番組ということになるのだろう。

 局アナに身を扮したアイドル気取りの新人が初々しくも拙(つたな)い様子で本日のニュースを読み上げている。


『えーと。ここ最近ではプレイヤーの寄生?が問題になっているようです。お犬様。寄生というのは……』


 大御所のお犬様は今日も精力的に活動なされている。べろりと舌を出して、ハッハッと浅く呼吸をしてから言った。


『レベルの釣り合いが取れてないパーティーが増えてきたっちゅうことじゃな。レベルだけ高ぅても仕方ないという考え方が浸透しとらんのじゃないか』


 コメンテーターのおコアラ様がスッと挙手した。着ぐるみ部隊が同じ番組に顔を出すのは珍しい。一人ひとりのカラーが強すぎて番組のコンセプトが散らかるのだ。

 アイドル気取りがおコアラ様の発言を認める。


『あ、はい。おコアラ様。どうぞ』


 場を取り仕切るほどのスキルがまだないのだろう。新人をフォローするための大御所ダブル起用か。

 おコアラ様は荒ぶる母性を満たすかのように子コアラのぬいぐるみを腕に抱えている。


『この問題の根底にあるのはロスト事案の増加だ。軽い気持ちでエンドフレームを引っ張り出すプレイヤーが後を絶たず、ミドル層を中心にレベルを軽視する傾向が蔓延しつつある』


 お犬様が義憤を燃やした。


『命は大事にせんといかんぞ! 子供の教育に良くないしな!』


 おコアラ様は何か言いたそうにしていたが、この場はひとまずコクリと頷いてお犬様を立てた。


『まぁ……そうだな。寄生は結局のところ自分の首を絞める行いだ。そこは慎みを持ってだな……。一人で勝手に暴走されても困るというのが本音だ』


 そう言っておコアラ様はチラッとお犬様を見た。

 お犬様がぴくりと反応する。


『……グレイくん。それ、もしかしてワシに言ってる?』


『いや……』


 おコアラ様は言葉を濁した。

 このお二人は着ぐるみ部隊きっての武闘派だ。特におコアラ様は戦闘型の着ぐるみと称されるほどで、武器をしっかり掴めないという弱点を克服している。

 アイドル気取りの横に立っているお犬様がおコアラ様の死角を取るように時計回りに距離を狭めていく。

 おコアラ様は子コアラ様を背中に回し、ゆっくりと席を立った。お犬様に視線を固定したまま、後ろ足を交差してカニ歩きでお犬様と一定の距離を保ち続ける。

 いつしか二人の着ぐるみは新人のアイドル気取りを中心に、じりじりと公転運動を開始した。

 放送事故、待ったなしの事態にアイドル気取りが悲鳴を上げる。


『き、寄生は良くないということですね! お犬様っ、ダメ! ハウス!』


 しかしお犬様とおコアラ様は徐々に公転周期を狭めていき……。

 至近距離から睨めっこをしながら、ゆっくりと……コメンテーター席へと移動し……おコアラ様の椅子を二人で分け合うように……そっと着席した……。


『次行こか』


 お犬様が軽い調子で言い、おコアラ様が総括した。


『エンドフレームの使用は計画的に』


 一人ぽつんと取り残されたアイドル気取りの卵がキョドッた。


『えっ、え! ええっ!? えー!?』


 大御所二人に挟まれた新入りはイジられキャラとなる宿命なのだ。

 俺は仲睦まじく身を寄せ合うお犬様とおコアラ様の芸術的な肢体を丹念にねぶるように見つめ、ベロリと舌舐めずりをした。

 しかし寄生ねぇ……。ポチョ、お前はどう思うよ?


「えっ。き、寄生? えっと、あんまり良くないこと……だけど……色んな事情があるから……」


 歯切れが良くないな。

 俺は断然反対派だね。寄生は良くねえ。やるほうは楽チンだろうが、やられるほうは堪ったもんじゃねーよ。特にこのゲームは狩りだろうが何だろうが私服が主流だし、レベルは隠して当然。偽名に整形と何でもアリだからな。雑魚キャラを追放しようにも相当な手間が掛かる。結局はダンジョンまで連れて行って殺すことになるだろう。過程は違えど、俺がよくやる手口だ。チッ、商売あがったりだぜ。寄生なんざ回り回って新規プレイヤーに警戒心を植え付けるようなもんだぜ。良くない。それは、実に良くないな。

 まぁ俺の小遣い稼ぎは置いておくとして……。寄生なんて何が楽しくてやるのかね? どんなゲームだって序盤が一番楽しいんだ。さっさと強くなりたいってのも分からんでもないが、オンゲー初心者じゃあるまいし。一番オイシイとこを自分から放り出すってのは理解に苦しむね。ゲームなんだからよ。自分が楽しいのが一番だろうに。少しばかり強くなっても意味がねえよ。だろ? ポチョよ!


「う、うん」


 ポチョは俺からサッと目を逸らして躊躇いがちにコクリと頷いた。

 俺はニカッと笑ってポチョの頭を撫でてやった。

 寄生するやつにろくなのは居ねえ! お前も気を付けろよ〜。女キャラには有象無象の悪い虫が寄ってくるからな〜。



 2.スピンドック平原


 ウチの三人娘と一緒にパワーレベリングしている。

 ポチョが釣ってきたウサギさんを三人娘で袋叩きにしてポケモンならゲットできるくらい弱らせてから俺がトドメを刺すという作戦だ。

 おらァ! おらァ!

 瀕死のウサギさんを新兵器のネコピックでガンガンとブッ叩く。動物愛護協会に訴えられそうなひどい絵面だが、そうでもしないと瞬殺されるので仕方ない。

 赤カブトが無邪気に俺を応援してくれている。


「ペタさん! がんばって! もう少しだよ!」


 おうよ!

 おらァ! おらァ!

 ブッ叩くこと数十秒。死闘を制した俺は、魔石に還元されていくウサ公を見つめて、ペッと地べたに唾を吐いた。

 チッ、てこずらせやがって。

 おっ、おっ?

 力が……力が湧いてくる。


【コタタマブルーのレベルが上がった!】

【Level-1→2】


 レベルアップだ。やったぁ。

 ぴょんと飛び跳ねた俺に、三人娘が抱きついてくる。小さいのと中くらいのと大きいの。三者三様のおっぱいが俺を祝福してくれた。


「コタタマ! おめでとう! がんばったね!」


 俺はギンと目に力を込めた。

 筋組織が一新し、強くなったという実感がある。

 この短期間に、これだけの成果が出るとは……! チマチマと藁人形を作っていたのがバカらしくなってくるぜ!

 俺は三人娘をまとめて抱き上げて、歓喜の雄叫びを上げた。


「パワーレベリング最高〜ッ!」




 これは、とあるVRMMOの物語。

 寄生の楽しさがよく分かったようですね。



 GunS Guilds Online


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