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ギスギスオンライン  作者: ココナッツ野山
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場違いなエンドフレーム

 1.???宙域-深部


 基本的にバトルフェーズの宇宙ステージは三面構成。

 ペペロンの兄貴が二面に駆け付けてくれたように、パーティーメンバーとは二面か三面で合流する仕組みになっている。

 俺も先生に怒られて調べたのだ。

 早い話が暫定エイリアンどもの都合でそうなっている。

 プレイヤーは戦域の端っこからスタートし、一面から二面、二面から三面と激戦区へ突入していくことになる。

 要するに地上戦と宇宙戦は別物ということだ。

 地上戦の場合は兵隊をずらっと並べて戦線を構築するのが大事だ。それは数が物を言うからであり、兵隊がフレッシュな最初の交戦で敵部隊に大打撃を与えればその後の展開が一気に楽になる。総大将は後方にデンと構えて全体の指揮を執る……というのが地上戦の大まかな流れだ。

 しかし360度自由に動ける宇宙戦の場合は戦線という概念が機能しない。球形、全方位に隙間なく兵隊を並べても大半が無駄になるだけだ。何しろ敵は総大将の首を狙っている訳だから、わざわざ戦力を分散して360度から攻め入るようなアホなことはしない。もちろん例外パターンはあるが、それは今考えることではない。

 そして少なくとも現代において有効とされるのが、一時的に一定のエリアを支配して次の支配できそうなエリアに本隊が進んでいくという戦法らしい。

 つまり主力となる部隊に強力な駒を集め、三等兵は偵察がてらに広くバラ撒く。

 バトルフェーズの一面に出てくるクソ虫さんたちがそれだ。

 この時点でプレイヤー側が徒党を組むメリットはほとんどない。むしろバラけて偵察部隊を端っこからチマチマと潰したほうが有利になる。

 イメージ的には銀河系の衝突ということになろうか。

 中心部に近いほど星団が密集していて、密度の低い辺境の惑星群で軽くドンパチしながらぐるぐるとケツを追っかけて突入角度を探るという感じだ。

 まぁ結局は正面衝突になるケースが多いらしい。

 しかし例えば敵が戦力を一極集中して突っ込んできたら偵察部隊の損耗でそれと知れるので、主力部隊を分隊して一部で防衛に徹しつつ余裕で側面を叩けるなど色々な経緯を辿って現在の形に落ち着いている。

 そこには最高指揮官が飛び抜けて強力な個体であったり、偵察部隊は幾らでも補充が利くなど様々な要素が複雑に絡み合っているようだ。

 そういった事情があり、もしも仮に俺とサトゥ氏が一面でパーティーを組むと戦力の無駄遣いと見なされて強制的に引き離される。俺かサトゥ氏のどっちかが勝手に機体を動かされて勝手にどっか行くことになるのだろう。

 はぁ……。マジはぁ……だわ。溜息が止まらない。

 散発的に襲ってくるクソ虫さんを三枚に下ろしてポリポリと噛み砕きながら、俺はチラチラと未練がましくサトゥ氏を見る。

 俺の頭に乗っかっているドルヲタ野郎のメルメルメは次のライブのことしか頭にないらしく、くるくると踊りながらイメージを高めている。

 なんかツッコんだら負けみたいな雰囲気だったから手出ししなかったけど……もういい。殺そう。目障りだ。

 俺はメルメルメを触手で優しくホールドしてやってから、柔らかなそうな腹に斧の先端をそっと押し当てる。ひとまずワタを取り出そうとする俺に、真面目にクソ虫さんを撃墜していたサトゥ氏が待ったを掛けてきた。


【待て。コタタマ氏。そいつには聞きたいことがある。ていうか……え? 食べるの? なんで食べようとするの?】


 え? だって単に殺すより栄養補給したほうが絶対にいいじゃんね。ついでに言うと俺はグルメなんでね。マズいところは食わない主義だ。


【ええ……? 言ってることは分かるけど、なんか抵抗あるなぁ】


 俺とてコンフレ時にはそんな無茶は言わない。エンフレ時は腹が減るのだ。俺のアビリティでメチャクチャにしてやりたいという気持ちも出てくる。

 サトゥ氏は気を取り直して俺の真ん丸ボディに手を掛けるとメルメルメを詰問した。


【おい、メルメルメ。お前、俺に何を教えた? 確かにお前の言う通りフレンド解除はできたが……。メニューを探したら二枚目のフレリが出てきたぞ。これは何だ?】


 メルメルメが「やっ」と妙な声を上げた。俺の斧の先端が少し腹に触れたらしい。腹を隠してサトゥ氏を見上げる。不思議そうな顔をして。


「……?」


 ダメだな。こいつ何も分かってねえ。そういうやつだ。頭の配線がイカれてる。

 二枚目のフレンドリストだ? どれ。

 俺はメニューを開いてフレンドリストの項目を引っ張ってみた。む、確かにズレるぞ。邪魔臭いアナウンスを横に引っ張るのと同じ感覚だ。反応が鈍くてすぐに元に戻る。

 俺は素早く二枚目のフレンドリストとやらを開いた。

 おぅ、メルメルメとサトゥ氏が登録されている。受諾した覚えはねえけどなぁ……。

 俺の触手から脱出したメルメルメが俺の真ん丸ボディをぺちぺちと叩いてくる。

 ん? 何だよ。ああ、パーティー申請が欲しいのか。

 時間だ。クソ虫さんたちが撤退していく。

 これはメルメルメに限った話ではないのだが、日本人プレイヤーはパーティー申請を恥ずかしがるやつが多い。多分パーティーリーダーになるのが嫌なのだろう。そして俺の知り合いは、その場に俺が居ると急に強気になる妙な傾向があり、さっさとパーティー申請を寄越せよみたいな頭のおかしいことを平気で言ってくる。何なんだよ。しまいには俺が恥ずかしいと思ってること全部やらすぞ。俺はシャイなので具体的に何をしろとは言わんが、普通に実刑が下るレベルであるとだけ言っておこう。

 情状酌量という便利なワードについて思いを馳せつつ俺はメルメルメとサトゥ氏にパーティー申請を飛ばした。

 おい、サトゥ氏。さっきのスーツ着た男な。ヤツは%だ。八人の子供たちの一人らしい。ウッディは無尽って呼んでた。


【無尽?……縦横無尽の略か? そうか。スライドリードのオリジナル……。ゲストの近接職ってトコか。厄介な】


 縦横無尽? 何だ。何の話だ。またお前そうやって俺らに隠し事を……。


【隠し事もクソもあるか。スライドリードのことだ。調べれば分かるんだよ。アメリカサーバーじゃ三段階目を開放してるし、開放すればアナウンスが流れる。あばばばば】


 あばばばば。

 俺とサトゥ氏の身体が勝手にどこかへ行く。いよいよ本格的な戦闘に巻き込まれるようだ。

 サトゥ氏とはここでいったんお別れになる。パーティーは組んでおいたしフェーズ2で合流できる筈だが……。

 くそっ、無尽さんに連れ込まれたってのが果てしなく不吉だ。ただのバトルフェーズじゃない。イヤだ。行きたくない。俺は機体のケツを振って抗おうとするが、素っ裸のチャンネーがベッドの上で手招きしているかのように身体の自由が効かない。

 くそっ、くそっ。こんなところで死んで堪るか。俺は生きて帰ってスズキととんでもなくスケベなことをするんだ。もっともスケベなことする前にイイ雰囲気になって刺し殺されそうだけど。いやいや、スズキはああ見えて二人きりになると積極的だからな。案外……ってことはある。お願いしたら何でも言うこと聞いてくれそうだし。仕方ないな〜とか言って。

 俺は生きるぞーッ!


【Phase-2】


 サトゥ氏ーッ! 早く来てくれーッ!

 俺は早くも泣き言を漏らした。

 だ、ダメだ。何だこれは。見たことも聞いたこともない【ギルド】がバンバン出てくる。数も異常だ。

 お馴染みのクソ虫さんたちが出てきたのは第一波と第二波だけだった。その時点で既に俺の知るクソ虫さんとはケタ違いの頑丈さだったし、その後はムカデみたいなのがを爆弾を投げつけてくるわ、セブンみたいなのが音波攻撃を浴びせてくるわと気の休まる暇がない。特にセブンみたいなのは音波で一時的にこちらのスキルを使用不可にできるらしく、最後の拠り所であるクラフト技能を封じられた俺は単なる可愛い生き物であった。もしかして:カービィみたいな。健闘虚しくぐったりとした俺の機体にミツバチみたいなのが取り付いて俺をどこぞへと連れて行こうとする。

 な、何だコイツら……? 俺はゾッとした。プレイヤーを捕獲してどうしようってんだ?

 カゲロウみたいなのが俺の真ん丸ボディを這い上がってくる。コイツは確か【衛生兵】とか呼ばれてたヤツだ。若社長が使役してるのを見たことがある。【ギルド】側のヒーラー。そいつが俺に一体何の用があるってんだ……。

 種々様々な虫どもが共生関係にある。その光景は人間の原始的な恐怖を呼び覚ます何かがあった。

 俺は触手を振り回して暴れるが、ムカデみたいなのが俺の触手を爆破し、セブンみたいなのが定期的に音波を浴びせて俺のスキルを封じてくる。

 湧き上がってくる得も知れぬ恐怖が俺の導火線に火を付けた。

 コンニャローどもが〜ッ!

 俺はガバッと大きく口を開いてセブンみたいなのを食った。杭みたいになってる歯列でバリバリと噛み砕いてエネルギーを補給。すぐさま触手の先端にレーザーメスを生やす。ムカデみたいなのを解体してやろうとするが、それよりも早くミツバチみたいなのが俺に太い針をブッ刺してきた。くそっ、エンフレの装甲がクソの役にも立ちゃしねえ。しかもこれは……神経毒か? じんとした痺れが波のように全身に広がっていく。

 俺はミツバチさんたちにお持ち帰りされた。




 これは、とあるVRMMOの物語。

 新キャラが出るたびにお持ち帰りされる男……。



 GunS Guilds Online


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