黒い魔石
ウサ耳どもが教会を襲撃してきた。迎え撃つ俺らという構図だ。
もっとも縁故採用の俺は使い物にならない。やれることと言えば後方で予備の武器をコツコツと作るくらいだ。
ウサ耳どもの頭数はこちらの倍だが、まぁ余裕だろう。セブンにメガロッパという豪華メンバーだ。旗色が悪ければリチェット女王サマの出陣という手もある。ウチの班長にしたってそんじょそこらのモブとはモノが違う。
剣を構えるウサ耳の一人にリーダーが戦斧を叩きつける。
「ハーッ!」
犬歯を剥いて凶暴に笑ったリーダーの身体が二重三重にブレた。【スライドリード】を警戒したウサ耳もとっさに嬌声を上げて対抗するが、鍔迫り合いで武器を押さえられつつ左右からの同時攻撃になすすべなく腹を裂かれ首を刎ねられた。
味方がやられ、別のウサ耳が目を剥く。
「【スライドリード】の3rdギア……!? テメェーアメリカの……!」
一瞬でも隙を見せればおしまいだ。ゴミの頭に棒手裏剣がストッと刺さった。
抜き打ちで投擲したセブンがつまらなそうに鼻を鳴らす。
国内サーバー最高峰の弓取り。それは射撃が正確だとか他職との連携が巧みだとか、そういう当たり前のことだけではない。浮いた駒を刈り取る視野の広さと、物理的、心理的な死角に致死の一撃を滑り込ませるワザ。仮に近接職に鞍替えしても今すぐ一級戦でメインを張れるだろう。トップクラスのプレイヤーというのはそういう人種だ。
味方の死に動揺した連中をセブンが次々と撃ち殺していく。ウサ耳どもがセブンに意識を集中した時にはもう遅い。脅威を撒き散らすガンナーは人間の意識のピントをズラすことができる。セブンに獲物を奪われたメガロッパが斜め後ろにぴょんと飛び上がってトンボを切った。ウサ耳二人の首がするりと落ちる。
パンチラゲットした俺が地べたに横たわるウサ耳どもの亡骸をぐるりと睥睨して所見を述べる。
「終わったな」
Mission Clear!
荘厳なファンファーレと共に戦歴が表示される。NAiの悪ノリだ。
貫禄の戦果ゼロを叩き出した俺を、メガロッパさんがじっと見つめていた……。
おっと勝利の余韻に浸ってる場合じゃないらしい。なんかFFTっぽいことしてんなぁとは思ったが案の定だ。
教会の中に居るリチェットの悲鳴が聞こえた。反射的に振り返った俺たちの目に、スピンに騎乗した男の姿が映った。モグラ仮面。やはりお前か、サトゥ氏……。モグラ仮面がジタバタと暴れるリチェットの首の後ろを手刀でトンと叩いた。
「痛っ。なんだそれっ。頚椎に攻撃とか殺す気か!」
良い子が真似してはいけない一撃にリチェットは文句を浴びせた。ならばとモグラ仮面がリチェットのみぞおちにボディブローを叩き込む。イイ角度で入った。まさかの追い打ちにリチェットがぐったりしてモグラ仮面にもたれ掛かる。
メガロッパが叫ぶ。
「り、リチェットさん!」
その声に反応してモグラ仮面がこちらを見る。その仕草に何か感じ取るものがあったのか、セブンがギョッとした。
「サトゥ……? 生きて、いたのか……!?」
なんの茶番だこれは。俺はそう思ったが、ノリの悪い男だと思われるのも癪だ。駆け出そうとするセブンの肩をガッと掴んで引き止める。
待てっ! 班長の指示もなしに何を勝手に……!
「離せっ!」
俺の頬っぺたを殴りつけたセブンがモグラ仮面を追っていく。すかさずメガロッパもあとを追う。
……なんで殴られにゃならんのだ。つーか俺がラッドポジなの? モブじゃん。なんか分からんけどラムザに同行してテキトーにジョブチェンジされつつなあなあの内に固有ジョブ連中にレギュラー取られて、なんならオープニングには居なかったのに突如として湧いて出たラムザの同級生にベンチに追いやられるキャラじゃんね。てか俺はガフガリオンの部下じゃねーの? 気付いたらラムザ御一行の一員みたいになってるけど雇い主である筈のガフさんは何も言ってくれねーしよぉ。
セブンにブン殴られてひっくり返った俺の肩をリーダーがポンと軽く叩いた。ガフさん……。
「ガフガリオンじゃねーよ。……ちっ、セブンのやつ。立て、ラック。俺らもあとを追うぞ」
ええ? 雑魚に構ってる内に女王サマをまんまと攫われたとかヤバすぎだろ。バックれようぜ。
「るっせーな。言ったろ。ヤバい仕事は金になる。女王サマを一人にしたのは狂言誘拐の予定だったからだ……。シナリオが狂った。マズい流れだが放っとけねえ。俺はセブンの監視役を兼ねてンだよ」
ガフガリオンじゃん! ガフガリオンじゃん!
「それな! 闇の剣とか再現不可能なんで代打俺っつー!」
俺たちはキャッキャとハシャぎながらセブンたちのあとを追う……。
Chapter1.モテる者、モテざる者
新生モグラ帝国の首脳部にとって強い求心力を持つリチェット女王は邪魔者であった。
もぐらっ鼻とウサ耳が激しく衝突する裏では、権力者たちの権益をめぐる暗躍が進行しており……。
俺たち傭兵は結局のところ上の都合に振り回されるだけの存在だ。
リチェットを誘拐したモグラ仮面を追う最中、ガフさんはモグラ帝国の使いより命令変更の知らせを受ける……。
「なにッ、女王さんを殺せだと!?」
メシ屋での一幕だ。
相席したもぐらっ鼻がコクリと頷いてチラリと俺を見る。
「状況が変わったのだ。……そいつは?」
ガフさんが俺の背中をバンと叩く。
「コイツは俺の部下だ。まぁ保険だな。生憎と俺も危機感を覚えててナ。これ以上に手違いが重なればこっちの命も危ういと感じてるのサ」
「良い心掛けだが……そいつは崖っぷちだろ。汎用キャラにしては濃すぎる。本当に大丈夫なのか……?」
心配しなさんな。崖っぷちだのと呼ばれたのは過去の話よ。俺はガフさんに付いていくぜ。もぐらっ鼻もウサ耳も今の俺には関係ねえ。今回はノータッチで行きたい。なぁに、金さえ貰えれば仕事はするさ。なんなら皆殺しにしてやってもいい。くくくっ……。
「……お前は動くな。災厄の権化め」
誰が災厄の権化だって? つれないこと言うなよ。この手首を見ろ。俺ぁー今エンフレに化けることもできねんだ。言ってみれば無害な正常個体の一人って訳よ。ね? ガフさん。
「そういうことだナ。ラックのことは気にすンな。俺が面倒を見る。お前らは、いつもコイツを刺激するからろくなことにならねェんだ。そっとしとけばいいンだよ」
さっすがガフさん。話が分かる〜。
二人で盛り上がっていると、ひょいと顔を出したメガロッパがちょいちょいと俺を手招きした。
「コタタマ。ちょっと」
なんだよ。俺はのこのこと招きに応じる。ちょうどセブンの死に戻りを待っている間に聞いておきたいことがあった。
まぁレディファーストだ。先にメガロッパの用件を聞くとしよう。自分の都合を優先する男はモテないからな。コイツとは最近ちょっとイイ感じなのでキッチリとキープしておきたい。
俺は歯列をギラつかせて爽やかボーイを演じた。
どうした? ん?
しかしメガロッパさんは疑わしげな眼差しを向けてくるばかりだ。
「また悪巧みですか?」
悪巧みなんてしてないよ。俺は嘘を吐いた。
「……まぁいいです。お前は放っておくと悪いほう悪いほうに転がっていくので。今回はひとまずルカヴィにならなければ良しとします。少しずつですよ、コタタマ。少しずつがんばって行きましょう」
ハードル低くない? なろうと思ってなれるモンでもねーし……。
ええいっ、俺を聞き分けのない子供を見るような目で見るんじゃない。
用件はそれだけか? じゃあ今度は俺の番だな。
よう、FFTごっこもいいがよ。何だってセブンとサトゥ氏が別行動してんだ?
「……ウチのメンバーが李信馬准にやられた件は知ってますね?」
ああ、それでか。セブンは怒り狂ってたからな。サトゥ氏と意見が割れて……。
「あの話には続きがあって、そのロストしたメンバーがスマイルと裏で通じたスパイでした」
……先々月の出来事だ。スマイルの旦那は邪魔になった俺を始末するために手を打った。
その手というのが、俺のスケジュールを外せないイベントで埋めて退路を絶つというものだった。俺の性格上、ネカマ六人衆とお犬様を秤に掛けることはしないと読んだのだろう。そこにプフさんの家庭訪問が追加されたのは渡りに舟だったという訳だ。
まぁ結果は俺の完敗だ。β組は敵に回すもんじゃねえ。そいつがよく分かったよ。
ウッディと共生関係を結んだことで、俺は困ったことがあるとすぐに完全変身して力業で解決するようになった。そこを逆手に取られた。敵ながら天晴れと言う他ねえな。とはいえ、俺の選択が間違っていたとは思わないがね。何度でもロストできるってのは他のゴミにはない長所だ。
さて、プレイヤーのアビリティを解放するってのは実は結構難しい。エンフレに化けたプレイヤーをブッ殺さにゃならん訳だが、その気になればいつでも変身を解けるからだ。大火力をぶつけて一撃でロストさせるのが一番だが、カートリッジで強化したジョンですら確実に仕留められるタイミングを待っていたことから、どうも種族人間には無理らしい。
よって、おそらくスマイルの旦那は俺のアビリティの解放までは期待していなかった。解放できればラッキーくらいの感覚で計画を走らせたんだろう。あのサトウシリーズ御大はそういう考え方をする。退き際を見誤ることはないという強い自負心があるから、リスク管理よりも大きな戦果を手にするルートを潰さずに残しておくのだろう。
俺のアビリティを解放するためには、まず俺を完全変身に追い込む必要があった。
つまり俺のトリプルブッキングは仕組まれたものだった。
そいつを成し遂げるためにはお犬様とネカマ六人衆の近くにスパイを潜ませなくちゃ無理だ。プフさんと先生の面談当日にスケジュールを重ねるんだから相当な無茶をやってる。スパイは古株のメンバーということになる。
……セブンの部下だったのか?
俺がそう尋ねると、メガロッパはコクリと頷いた。
「RMTを通じてスマイルと遣り取りをしていたようです。……あの、具体的には冒険者ギルドの身請けなんですけど」
そうか。
俺は一言で済ませた。
そういうこともあらぁな。自分で言うのも何だが、冒険者ギルドは良く出来たシステムだ。会心の出来と言ってもいい。要は人力ガチャだ。こっちで傭兵を用意して金で派遣する。国内サーバーでエリアチャットを使えるのが君主のスマイルの旦那だけで、野良パを組むのがクソ面倒臭えっつー仕様がぴたりとハマった。金を余らせても伝説の武器なんつーモンは存在しねえから買えねえし今後その予定もなさそうだってのも良かった。
メガロッパは賢い女だ。別に俺は悪くないということを理解しているのだろう。こほんと咳払いして、
「とにかくそういう訳で、サトゥさんとセブンさんは今喧嘩してます」
意外だな。アイツら喧嘩なんてするのか。
メガロッパは何を言ってるんですかと笑った。
「しますよ。喧嘩。しょっちゅうです。放っておけば勝手に仲直りしますけどね。結局あの二人は、リチェットさんもそうですけど、イッチさんたちのことを慕っているので」
ふん、兄弟喧嘩みたいなもんか。
時にメガロッパよ。くだんの生放送当日、俺がロストした時にお前はドコで何してた?
「私を疑ってるんですか?」
いや……。疑っているというほどじゃないんだが。
メガロッパは俺の頬をつねった。
「前にも言いましたよね? 何回か殺してあげたくらいで調子に乗らないでください」
待て。なんで剣を抜く。
メガロッパさんが俺の頭をぐいっと力尽くで下げてくる。待てって。なあ。やめっ……!
「手が滑ったんです。事故ですから」
俺は頭を叩き落とされて死んだ。
どうと倒れ伏した俺の身体を尻目に、メガロッパさんが軽やかにステップを踏んでくるりと振り返る。ふわっと幽体離脱した俺に、腰の後ろで手を組んで身体を揺すりながらペロリと舌を出して悪戯っぽく微笑んだ。
「ばーか」
可愛ければ何しても許されると思ってんじゃねーぞ!
まぁ許した。ダッシュで死に戻りしたセブンと合流して揃ってブーンに攫われるというハプニングはあったものの、一路リチェット奪還を目指して先を急ぐ……。
サトゥ氏に追いついた時、残念ながらセブンは不在だった。
ガフさんはリチェット殺害の依頼を受けている。これ見よがしにウサ耳を付けた連中を率いて襲撃したらしい。らしいと言うのは、俺も不在だったからだ。
一時的に手を組んだモグラ仮面とメガロッパがウサ耳どもを退け、手駒を失ったガフさんは捨て台詞を残して撤退する。
「くそッ、やってられるか! セブンの面倒はそッちで見ろッ! 俺ぁラックの面倒を見る! 役割分担だッ! いいなッ!」
メガロッパさんがぽつりとコメントした。
「ブーンのエサが二人……」
敵か味方か定かじゃないモグラ仮面は、いったんは暗殺の危機を脱したリチェットをメガロッパに預けることしたようだ。
事の顛末を聞いた俺は、ここでセブン御一行を離脱することにした。こんな死にたがりと一緒に居たら命が幾つあっても足りやしねえ。俺は抜けさせて貰うぜ。
リチェットが俺を引き止めてくる。
「待てっ。オマエ、例の黒い魔石はどうした?」
いや、別に引き止めたかった訳ではないらしい。
黒い魔石ぃ? 何の話だ。いや、そういえばそんなモンもあったな。6sTVの生放送中に視聴者を買収するために作ったアレか。
知らねぇーよ。視聴者にプレゼントするって言ったろ。六人衆に預けてそれっきりさ。
「あっ……」
メガロッパが何かを察した。
あ〜……。なんかヤバいのか?
リチェットが頷き掛けてすぐに首を横に振った。
「い、いや、気にするな。ただ、サトゥが……」
サトゥ氏が何だよ? 俺は気にしないから言えって。あとになって実は……ってのはナシにしようや。
「その、えっと、この戦争の裏で糸を引いてるのは運営補佐のプフとNAiらしい。それぞれウサギ王国とモグラ帝国に力添えを……」
……つまり?
「……プフが黒い石のようなものを追っているという情報が」
俺は何も聞かなかったことにした。
さて、ガフさんと合流して一緒に飲みにでも行くか。
メガロッパの提案でリチェット御一行はウサギ王国を頼ることにしたらしい。これ見よがしにウサ耳を付けて襲撃してきた集団はあまりにも怪しすぎた。新生モグラ帝国を黒と断定し、モテ組の巣窟たるウサギ王国に身を寄せる……。
一方、俺はガフさんと合流してモグラ帝国へ。
まぁ真っ黒ですわ。
お前がもぐらっ鼻の頭なのかよ、大黒屋。
建前上はサトゥ氏とセブンのクランマスターということになっているクラン【大黒屋】のマスターだった。恰幅の良い中年男性キャラであり、俺とはそれなりに古い付き合いだ。
大黒屋は太鼓腹を切なげに揺らし、
「NAiがうるさくてな……。毎日のように私の枕元に立ちおる。よほどプレイヤーの色恋沙汰が気に入らないと見える」
そいつは災難だったな。
とはいえ、俺はホッとしてるよ。大黒屋。お前で良かったぜ。お前なら口下手とは無縁だ。が、どうしてリチェットを付け狙うんだ?
「ん? もちろん邪魔だからだ。FFTだの何だのは知らん。NAiに強要されてのことではあるが、私は商人だからな。金になるのなら否やはない。リチェットと政権を争っても私に勝ち目はない。ならば始末するしかあるまい」
なるほど。襲撃してきた連中がウサ耳を付けてたのは裏を掻いてのことか。
「いや、それは別口だな。さすがにあからさま過ぎるだろう。身分証を付けた暗殺者など居るか?」
そう言って大黒屋はニヤッと笑った。
「つまりこういうことだ。崖っぷちよ。この私に喧嘩を売っているヤツが居る。おそらくはADプフだろう。本気で全サーバーでトップを取るつもりらしい。しかもプレイヤーを使ってな。自分自身が動けば角が立つ、といったところか」
……サトゥ氏はそれを知ってるのか?
「サトゥはプフに付いたな。あれは賢い。実に頭が回る。最初は手柄の独占に動いたが、無理と見るや一転して手を引いた。よその国にガムジェムを渡すくらいならADプフにと考えたのだろう」
相変わらず面倒臭ぇ男だなぁ〜。
まぁいい。大黒屋。あんたが俺らのボスだ。俺らはリチェットがこっちに寄り付かないよう嫌がらせをすればいいんだな?
「おお、そのことよ。頼んだぞ。ただし気を付けろ。私もプフと直接面談したが……。あれは、なるほど。運営の一員と言うよりはプレイヤーの一人だ。サトゥやセブンに未来のパーティーメンバーとして期待しているふしがある。私の思い違いでなければ仕掛けてくるぞ」
難儀なこったな。まぁ俺には関係ねえ。程々に上手くやるさ。
ところが上手くやるどころの騒ぎではなかった。
リチェット御一行はもぐらっ鼻とウサ耳の不毛な争いを止めようとしているらしく、両軍の決戦の場にひょこひょこと顔を出してくる。俺らとしちゃあ堪ったものじゃない。じゃじゃ馬女王め。リチェットに変に活躍されては困るのだ。しかも脇を固めるセブンとメガロッパが強すぎる。生半可な戦力じゃ返り討ちにされるのがオチだ。
やむなし。俺はガフさんと相談して、MPKで皆殺しにしてやった。肩を組んで城に凱旋した俺とガフさんの後ろで、城門が閉ざされる。……ええ?
ガランとした城内に一人の男が佇んでいる。お前……なんでここに居る……?
中国サーバーに行った筈の饅頭屋だった。
苦しげに呻いた饅頭屋が片膝を屈して息を荒げる。
「へ、陛下……。拙者は、こんなつもりでは。こんな、つもりでは……」
饅頭屋がきつく握りしめている手の中で、黒い何かがどくんと脈打った。
血まみれのもぐらっ鼻が満身創痍の身体を引きずって城の奥から出てきた。
「に、逃げろ……。化け物だ」
それだけ言って事切れた。
アナウンスが走る。
【GunS Guilds Online】【Loading……】
饅頭屋の掌中で黒い魔石がほどけていく。
出現した黒い金属片が饅頭屋の全身を串刺しにしてその肉体を作り変えていく。
饅頭屋の首がゴキゴキとねじれて逆さまになった。
ねじれた角とイヤに逞しい上半身。
優に2メートルは下らない巨躯が、飾りの目で俺たちをじっくりと見下ろしてくる。
両の双眸が血のように赤い残照を引いた。
……マジかよ。展開早くねーか?
ガフさんも唖然としていた。
「つうか……配役間違ってねェか?」
第一の鬼門ことウィーグラフ戦の幕開けだった。
これは、とあるVRMMOの物語。
汎用キャラとゲストユニットを理不尽なボス戦が襲う……!
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