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84話 レベル上げ

 ダンジョンに入り、薄暗い中、しばらく階段を降りていくと、扉くらいのサイズの穴が開いておりそこから明かりが漏れていた。


「どうやらダンジョンの一層目についたみたいだな」


 小声で話しかけてくるアルに、いつもの笑みを絶やさないシャティナさんは別にして、俺とレイラは神妙な表情で頷く。


「どんな敵が待ち構えているかわからねえから、気を引き締めていくぞ」

「「わかった」」

「やっぱりアル君は頼もしいですね」


 俺とレイラが短く返事をすると、なぜかシャティナさんだけは惚気ていた。


 緊張感が台無しである……


「はぁ……シャティナも頼むぞ……いやマジで……」

「愛しの旦那様の頼みですもの。わかりました。うふふ」


 本当にわかってるんだろうかというシャティナさんの雰囲気に、アルが疲れたようなため息をつき、ダンジョンの最初の階層へと足を踏み入れた。


「なっ!」


 俺は驚きの声を上げる。


 それもそのはず、入った瞬間、目に映ったのは、何十匹というモンスターの数だ。


 いやいやいや! 待ってよ! 何このモンスターハウス! どう見ても初心者が踏み入っていい場所じゃないよね?! 普通ダンジョンの最初の階層って四、五匹の雑魚モンスターがうろついてるだけじゃないのか!?


「なんだ……、王国が管理しているからもっと強さも数もいると思っていたんだが、この程度か」

「うふふ、久しぶりのダンジョン探索ですから、少しは楽しませてくれると思ってたんですが……やっぱりもっと下層に行かないと駄目なのかしら」

「まぁ誰も立ち入ってないみたいだから、そこそこ増えてはいるみたいだけど……こちらは四人いるし、問題ないね」


 え? なんでアルもシャティナさんもどこか肩透かしを食らったようにがっかりしてんの? しかもレイラまで平気そうな感じだし……ねぇ、俺の感覚がおかしいのかな? 違うよね?


「とりあえず、こんなところで足止め食らうのもなんだし、ちゃちゃっと倒してさっさと進むか」

「ですね」

「そうだな」


 俺以外の全員がやる気のようで、その言葉と同時に飛び出した。


『グガアアアッ!』


 アルが先陣を切り、咆哮を放つ、大型のモンスター……オークだろうか? に一気に切りかかり、一太刀で屍骸へと変える。


 別の方向に向かったレイラもゴブリンの群れを相手に、雷の魔法を使い感電死させながら、近づいて来た魔物をレイピアで指し殺すという戦い方で危なげなく屠っている。


 そして極めつけはシャティナさん……彼女の体から大量の赤い鳥が出てきたかと思うと、その鳥が散り散りに羽ばたき、アルやレイラが戦っている場所とは違う方向に向かい爆散して、大型の魔物を倒していた。


何この状況!? 俺以外の三人が魔物達を蹂躙しているんですが……


『ギギィ!』


 俺が呆然とその光景を見守っている中、三人の隙をつき、俺のところまで黒いゴブリンが一匹やってきて、油断していた俺に持っていた棍棒で殴りかかってきた。


 やばいっ! 油断した!


 そう思った瞬間俺は目を瞑り痛みと衝撃に備えた……のだが。


「あれ? 痛く……ない?」


 さっきから俺を殴っている黒いゴブリンだが、その攻撃を受けてもまったく痛みがやってこない。


 とりあえずうざかったので、腰に下げていた剣を手に持ち、黒いゴブリンを切り捨てた。


 正直このゴブリンがこれほど弱いとは思わなかった……これなら俺でもいけるだろ!


 俺も現金なもので、絶対にあの数の魔物は相手に出来ないと思い、逃げる算段を考えていたのだが、戦えるとわかると、三人が攻撃していない場所へと駆け出す。


 数十匹といた魔物は戦いが始まってから三十分も経たないうちに全滅した。 


「まさか、自分がここまで戦えるとは思わなかった……」

「当たり前だろ、無理なんだったら最初からお前さんを戦わせてねぇよ」


 確かに、アルは俺の実力をきちんと把握しているし、雑魚モンスターだってわからなければ、実力が未知数のレイラの戦闘も許可してはいないだろう。


「それにしてもレイラ、結構戦えるんだな」

「君ほどじゃないよ、アル。それにブランクもかなりの年数になるからね。全盛期に比べると少々体が自由に動かせていないように感じるよ」


 あれでブランクがあるって……全盛期はどれだけ強かったんだ!?


 二人の会話の会話を聞いて戦慄が走る。


 ホントこのメンバーといると借り物とはいえ自分の強さに自信なくすぞ……


「うふふ。そんな顔をしなくても大丈夫ですよ」

「あはは……顔に出ていましたか……お恥ずかしい限りです」

「全然恥ずかしい事などありませんよ。少しでも悔しいという気持ちが芽生えたならあなたはきっと強くなれます」

「そうでしょうか?」

「うふふ。イチヤさんはまだあの二人に比べれば経験が少ないだけですから、これからそれを補っていけばいいんです。頑張ってください」


 シャティナさんの微笑ほほえみには一切の裏表はなく、その言葉にも俺を思ってかけてくれた事がわかる。


「お~い! しばらくはこの場所にモンスターは沸かねぇみたいだし、次の場所に向かうぞ~!」


 俺達が話していると、いつの間にかアル達が、次に向かう為の通路の前でこちらに手を振っていた。


「わかった~!今行く~!」


 落ち込んでても仕方ない。アルやシャティナさんの実力が高いっていうのは前からわかってたし、レイラだって、この世界で二十年前にこの世界に召喚された勇者で、俺なんかよりもずっとこんな過酷な世界でやってきてんだ。


 一年もこの世界にいない俺が、すぐに追いつくなんてのは虫がよすぎる。

 今回はその実力を少しでも埋めるためにレベル上げに来たんだから落ち込む前に少しでも頑張らないとな!


決意を新たに、俺はアルの元へと歩を進めた。





 しばらく通路を歩いたが、どうやらこのダンジョンには罠というものがないようで、一本道が続いていて、洞窟のような感じだ。


 俺の思っていたダンジョンだと足元が見えないくらい暗くて、カンテラを使いながら、いくつもの枝分かれした道を彷徨う感じだったんだけど、足元は何かの石が発光していてそこまで暗くないし、一本道だから迷うこともない。


 ちょっと拍子抜けだが、今回は探索で来たわけじゃないので、早めにモンスターとの戦闘があるなら願ったりだ。


「どうやらここが階層主がいる部屋っぽいな」


 アルの言葉に全員が頷く。


 目の前には洞窟のイメージを無視して、とても豪華そうな両開きの扉が鎮座していて、こんなものが取り付けてあるのにこれで何もなかったら詐欺だろう。


「もしここに階層主がいるとしたら、さっきの雑魚なんかとは比べ物にならないくらい強い可能性がある。絶対に油断するなよ……特にイチヤ」

「気をつける」


 さっきの大広間ではみんなの戦いぶりの凄さに呆然と見ていたらゴブリンに攻撃されたからな。

 弱かったから良かったもののもしゴブリンじゃなくもっと強いモンスターだったら俺は大怪我を負っていたか、下手したら死んでいたかもしれない。

 アルの言ったとおり油断しないように気をつけよう。


「じゃあ開けるぞ」


そう言ってアルがゆっくりと扉を開けると、ギギィっと油の指していないブリキ人形のような音をさせながらゆっくりと扉が開かれる。


 こういう暗がりの場で、扉がそういう音で開かれると、より一層不気味に感じるな……


 扉が完全に開けられ中を確認すると、遠くからなのではっきりとはわからないが、十メートルはあろう黄土色の体躯をしたモンスターが、うつ伏せの状態で寝息を立てていた。


 獰猛そうな目に長い首、俺の身長の二倍……いや、三倍はありそうな牙を持ち、鋭そうな爪はどんなものでも一瞬で切り刻みそうだ。


 ディラノサウルス――いや、たぶんこれはドラゴンだな……ってなんでダンジョンの一層にドラゴンなんているんだよ!

 ドラゴンって普通もっと下層とか人が寄り付かないような場所にいるんじゃないのか!?


「スフェルドラゴン……下級ドラゴンか……う~む……どうすっかなぁ」


 さすがのアルもドラゴン相手だと戦うかどうか悩むのも仕方ないか。でも全然深刻そうに見えないのはなぜだろうか?


「シャティナ。あれ一体じゃそんなにうまみもないし、処理してもらって良いか?」

「うふふ。わかりました。確かにあと十匹くらいいないとレベル上げを目的にしているんでしたら美味しくないですからね」


 マッテ……コノフウフハナニヲイッテルノ?


 思わず片言になるくらい動揺していると、シャティナさんが手を前にかざし、この場で詠唱を始め、それが完了すると、彼女がかざした手の前方一メートルくらい先に巨大な火の玉が出現する。


 当のスフェルドラゴンだが、長年このダンジョンに踏み込む人間がいなかったためか、シャティナさんの詠唱が終わったにも関わらず無警戒にいびきをかいて寝ている。


獄火の魔弾バーン・フレイム・ブレッド


シャティナが魔法名を唱え終えた瞬間、その火の玉は弾丸の如くスフェルドラゴンに向かって飛んでいく。


『ギャオ?』


 火の玉が物凄い勢いで飛んでいった瞬間にようやくスフェルドラゴンが目を覚まし、首を上げ、こちらへと視線を向けた瞬間、火の玉が爆発し――――胴体を残し、頭部から首の途中までが弾けとんだ。


 弾けた部分から血が噴出し、溶岩のように、熱によって溶けていく様は実にエグイ……


 というよりも――――。


「一瞬で倒したっ!?」


 ドラゴンを一瞬で葬り去った事に驚愕した俺だったが、アルとシャティナさんはさも当然という顔をしている。


「何驚いてるんだ? 上級ドラゴンなら知能もあってやっかいな相手だが、下級ドラゴンなんて本能で動いてるようなもんだ。このくらいだったらイチヤだってもう少しレベル上げれば軽くこなせるぞ」

「なぁ、これ、俺なんかより、シャティナさんに獣神決闘に参加してもらった方がいいと思うんだが……」

「バッカお前! 前にも話したようにラズブリッタを全壊させるわけにいかねぇし、それに相手を殺しちまったらその時点で負けなの」

「……」


 つまりシャティナさんが本気を出せばもしかしたら相手を殺してしまう可能性もあるという事か……マジでおっかねぇな……


「今回は経験値としてのうまみがそれほど良くなかったから倒したけど。たぶんコイツが階層主だし奥に通路があるから行くか」


 呆気にとられる俺をよそにアルがスタスタと歩いていく。


 この面子は性能面で絶対におかしい……俺……残りの期間でちゃんとまともなレベル上げを行えるのだろうか? レベル上げが済んだ後、俺……獣神決闘で戦う為の戦意、残ってるかなぁ……

明日、明後日と急用が入ってしまい更新できるかわかりません。申し訳ありません……気長に待って頂けると助かります。

少しでも面白いと感じでいただけたらブクマ、下部にある評価をクリックしていただけたら、執筆の励みになりますのでよろしくお願いします。


5月23日 誤字報告があり修正しました。ご報告ありがとうございました。

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