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前世でハマった育成系エロゲのモブキャラに転生した ~主人公ハーレムを眺めたいので、自分を育てつつ主人公をサポートします~  作者: 秋之瀬まこと


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第7話 男子たちの噂話

「はっ、はっ、はっ、はっ……」


 陽介の二度目の高校生活は充実していた。

 まだ少し肌寒さを感じる四月の早朝だが、ジョギングをしている陽介は全身にじっとりと汗を滲ませる。


(今日もいいペースで走れてるなっ……)


 ジョギングを始めた当時の三倍の距離をしっかりと走り切る。

 一度、調子に乗って走る距離を伸ばして、いつもよりも登校時間が遅くなってしまったことがあった。

 なので、それ以来はしっかりと帰りの時間も考えて距離とペースを調整している。


 アパートに戻って、シャワーで汗を流す。

 コーヒーを飲みながら、朝ごはんと弁当を作る。

 これはもうすでにルーティンになっていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「おはよー」


 スクールバッグを机の上に置きながら、隣の席の信司と男子たちに声を掛ける。


「あ、星崎くん、おはよう」

「おう、星崎。おはよっ」

「はよっ~」


 信司の席に集まっていたクラスの男子たちも口々に挨拶を返してくれた。

 学園が始まって二週間ちょっとだが、今のところは上手く馴染めているようだ。


 陽介は席につくとバッグから教科書やノートを取り出して机の中にしまいながら、男子の集団に話し掛ける。


「なんか盛り上がってたみたいだけど、なんの話題で盛り上がってたん?」

「あ~常陸院さんの話だよ」


 クラスメイトの男子の一人が教えてくれた。


「常陸院さんの? どんな話よ?」


 何かと縁がある常陸院さんである。

 何か不名誉なことを言われているなら、それとなくフォローしたい。

 そんな思いで話の先を促してみる。


「いやさ、常陸院さんってお金持ちのお嬢様じゃん?」

「まあ、そうだな。黒塗りのお高そうなセダンで送迎されてるの見たことあるし」

「だろ? で、それは別にどうでもいいんだよ」

「どうでもいいのか……」


 普通は金持ちの部分でやっかみとかがあるんじゃないのか? そう思う陽介。

 だが、信司の周りに集まっている男子たちの話題は違うらしい。


「どうでもいいのさ。その常陸院さんなんだけど、どうやら家の方針で女子としかメッセージアプリのIDの交換をしないらしいんだよな」


 結構な資産家の家で名家らしいし、そういうこともあるんだろうか?

 ただ休日に図書館や駅ビルの書店で偶然会ったりしたこともあるし、咲月からは箱入り娘感をあまり感じない陽介。


「ソースはどこよ?」

「うちのクラスのイケイケな運動部系男子連中がIDの交換を持ちかけても、断られたんだってさ。学食でガックリしながら言ってたのを聞いたから、本当だと思う。それに他クラスの男子とか先輩たちも軒並み轟沈してるみたいだよ」


 入学してまだ二週間くらいしか経っていない。

 それなのにもうクラス外、学年外からも注目されてるようだ。


「ほーん。一軍男子たちでもお断りなわけだ」

「そういうこと。なんかさ、ドラマとか漫画に出てくるザ・お嬢様って感じがして、そういうところが逆にいいよな」

「ん? どういうことだよ?」


 てっきり『お高く留まりやがって』みたいな話になるのかと思っていた。


(俺が周りを穿うがった見た方で見すぎてるだけなのか……?)


 少し反省しつつ、陽介はまた話の先を促す。


「だってさ、用事があって話し掛ければ普通に返事してくれるし、ただただ育ちが俺達みたいな一般人とは違うってだけじゃん?」

「それはまあ、確かに……?」


 その言い分が今ひとつ、ピンッとこなかった陽介は曖昧に頷く。


「最近では『完璧お嬢様』ってあだ名が陰で広がってるみたいだし」

「うへぇ……目立つ人間は大変だなぁ……。そんな仰々しくて恥ずかしいあだ名をつけられるなんて」


 ゲームをプレイしていた時は『設定盛りすぎじゃね?』としか思わなかった。

 だが実際に咲月と少し関わってみると、『完璧お嬢様』というあだ名を陰でつけられていることが可哀想に感じてしまう。


「でも実際、学年首席だし、スポーツも得意らしいし、超美人だし『完璧お嬢様』っていうのも間違いじゃないんじゃないか?」

「う~ん……まぁ?」

「さっきから微妙な反応だな? 星崎はこのあだ名に反対なのか?」


 さすがに生返事すぎたようで、怪訝そうな表情をされた。


「いや、別にそういうわけじゃないけど……あだ名をつけるなら、もう少し捻ったりした方がいいんじゃね?」


 陽介は『ただの小説が好きでラノベが好きなお嬢様だぞ』と言いたいのをグッと堪えた。

 そんな陽介を置いてけぼりにして、クラスメイトの男子たちは言葉を重ねる。


「いやいや、シンプルでわかりやすいインパクトがあった方がいいんだよ、こういうのは」

「そうそう。それにさっきのIDの話もさ、こう……お堅いというか、身持ちが堅いっていうか。いかにも良家の完璧なお嬢様って感じだからな」

「あ~それはそうかもな……?」


 とりあえず曖昧に同意しているように聞こえなくもない返事をしておく陽介。

 ただ、内心では首を傾げていた。


(常陸院さんを神聖化しすぎじゃないか? まぁ、本人も結構、他人に対して一線を引いている感じはあるけどさぁ……。そういうところも、ミステリアスに見えて恥ずかしいあだ名をつけられる原因になってるのかもなぁ)


 数回、言葉を交わしたことがある陽介から見ても、クラス内で見かける咲月は誰に対しても人当たりはいい。

 だがその反面、クラスメイトの誰に対しても常にフラットな態度だと感じていた。


 教室でクラスの女子と話している時も、事務的な連絡を担任の高梨先生としている時も笑顔で対応しているのだが、どこか壁があり距離があるように感じる。


(あの日、本屋でラノベを譲った時の笑顔はホントに綺麗だったし、図書室であった時も柔らかい表情だったんだけどなぁ……。うん。やっぱ、ただの小説、ラノベ好きなお嬢様だわ)


 その後も、男子たちはクラスの女子たちの話で盛り上がっていた。

 陽介は彼らの話を聞きながら授業の準備をするのであった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


(ステータスも関係あるんだろうけど、やっぱ予習復習って大事なんだな)


 暦乃宮学園は県内でも三本の指に入る進学校だ。


 そんな進学校で陽介が授業を簡単に感じている理由は、毎日しっかりと予習復習をしていること。

 さらには中学範囲の復習テキストと高校範囲の参考書で自主学習していることによって、学力のステータスを上げているからだろう。


「うぅっ……やっぱり高校の授業は難しいよぉ……」


 隣の席で信司がグデッと机に突っ伏しながらぼやいた。


「最初でつまずくとリカバリーが大変だから、家に帰ったあと復習くらいはしておいた方がいいぞ」

「うわ~……星崎くん、それは優等生発言だよぉ……」

「俺は別に優等生じゃないけどな。それに一日分の復習なんて、一、二時間もあれば終わるんだからササッとやればいいんだよ」

「やる気が出ないんだよねぇ……」

「やる気か……」


 陽介からすれば、やればやるだけステータスが上がる感覚があるので、それがモチベーションになっている。

 なのでやる気が出ない、ということはない。


(でもそれは俺がステータスの存在を知っているからなんだよな)


 未だに机に伏せたままの信司。

 その後頭部を見ながら、陽介はあれこれ思いを巡らせる。


(ただなぁ……この世界が『フォーシーズンズ』の世界で四季が主人公なら、学力のステータスをある程度上げないと、秋海綾子と冬谷(ふゆや)文華のルートが開放されないんだよなぁ……だから四季には頑張って勉強して欲しいんだけど……)


 陽介としては信司にはハーレムルートを目指して欲しい。

 ただ、それを強要するつもりもない。


(まぁ、まだ一年の四月だ。しばらく様子を見た方がいいんだろうな。どうせ三年間クラス替えもないわけだし)


 結局、静観を選ぶ陽介であった。

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