42 石囲いの町②
「リュウジさん、下を見て。」
「ああ」
「下に井戸があって、ここの真下から中庭に出られる。」
「なるほど…水は、ロープを引いて上げるのか…」
「もちろんそうだよ。」
「そうか」
この建物はコの字型らしい。建物のない部分には小屋があり、ロバが顔を出していた。なるほど客の足を預かっているのか。
ロバたちの小屋の近くに、ドアが並んだ小屋があった。
屋根はかかっているが上下が開いていた。小学生の頃見たことのあるようなドアのつけ方だな…嫌な予感しかしない。
「あれは厠です。」
「そうか」
最悪だ。あんな作りだと中に穴があって板を渡してありそう。臭いとか想像するまでもないだろう。絶対近寄れない…。近寄りたくないが、生理現象だから使わない方法なんてないだろう。
「部屋はここだよ。」
「角部屋か…」
「うん、僕はいつもその隣なんだ。角部屋は、余裕のある客が多いからお近づきになれるだろ?」
「なるほど…今回は俺で悪いな」
ロティはキョトンとすると笑顔を見せた。
「一番安全でもあるから、リュウジさんにぴったりさ。」
「そうか?」
「荷物を置いて、落ち着いたら部屋へ来てください。」
「ああ、そうだな」
「リュウジさんの場合、丸ごとできてももちろん大丈夫です。」
「ははは、またあとで」
部屋のドアには鍵の抜けと同じ形が張られていた。俺は逆三角の鍵をドアへ差し込んだ。
部屋が暗い。
スマホで明かりを取り、正面にあるドアについている横に動かす鍵を手探りで開けると、ベランダがあった。明かりが入ったので、スマホの明かりを消す。
今入ってきたドアを振り返ると内側には棒を動かすタイプの内鍵がついていたので、鍵をかけた。
部屋は、8畳ほどの広さがあり、ベッドが2台と小さな丸テーブルと背もたれのある椅子が2客、壁の手前に服を掛けるらしい台だけだ。これは洗濯干にありそうな…簡単に言うと一角が短い三角の頂点に棒がかかっているような造りだった。
箪笥のような物は見当たらない。ベッドサイドには箱が置かれていて、サイドテーブル兼入れ物らしい。
ベッドはベッドの形状をしているものの、板張りでありマットレスも布団もなかった。
まさか板の上で寝るのか?
どこを見ても明かりを取るためのランタンのような物は見当たらない。みんな私物を使って明かりを取るのか?
風呂はない、トイレも外の厠、布団のないベッド。明り取りの道具もない。
想像以上にないない尽くしだ。
街に近づいて入る前に、水浴びしたのも身支度を整えるだけではなかったらしい。久しぶりの水浴びだったので、しっかりと体を洗ったが…すでに埃まみれの自覚はあった。すっきりとしたいのに…。
ベッドサイドの箱を2つとも開けたが、空だった。
なるほど、初めて来る宿の部屋なら明るい内に来ないと位置も把握できないのか…。ロティがいてよかった。町の中では車での移動は出来なかった。自分一人でスムーズにここにこれたとは思えない。
部屋の状況を確認できたので、