第3話 “あの3分間”の記憶
NULLの力で“存在”を消された佐野美優。
彼女の語った「その間の記憶」は、空に新たな疑念を芽生えさせる。
月曜日。朝のHRが始まる直前。
白河空は教室の隅で、佐野美優の様子を見ていた。
彼女は明るく振る舞っていたが、目の奥に違和感があった。
(あの日、確かに“消えた”。でも……戻ってきた彼女は、何か変だ)
放課後。空は、思いきって彼女に声をかけた。
「……金曜日、具合悪そうだったけど、大丈夫だった?」
「……ああ、うん。なんか変な夢見ちゃってさ」
「どんな?」
彼女は一瞬、目を伏せたあと、ぽつりとつぶやいた。
「真っ白な部屋だった。壁も床も……何もない。音もない。ただ、私ひとりだけ」
空の心臓が跳ねた。
佐野は続ける。
「でも……壁の向こうに、誰かがいた気がした。見えないのに、誰かが私を“見てた”ような」
「……声も聞こえた。“お前もか”って。知らない男の声だったと思う」
それは、空が感じた“消失の瞬間の感覚”と一致していた。
NULLの力が、単なる消去ではなく、“どこか別の場所”へ飛ばしている可能性。
しかも、その場所には──誰かがいる。
佐野は空に言う。
「あの3分間、私……1人じゃなかった気がする」
空は背筋に氷を這わせながら、ポケットの中の指輪を強く握った。
(あの声……“お前もか”って、誰が言った?)
(NULL空間に“存在する誰か”が言ったのか。それとも──俺以外にもこの力を使った奴がいるのか?)
NULLの力の真の性質、そして“空間の向こう側”にいる者の存在。
次回は、見えない誰かが空の世界に“干渉”してくる──