表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

第1話「世界から消えた午後3時12分」

※本作は静かな導入から始まりますが、物語はここから大きく動き出します。

午後三時十二分。白河空しらかわ・そらは、いつも通り透明だった。


教室の一番後ろ、窓際の席。昼食を終えた彼は机に顔を伏せ、眠気をやり過ごしていた。四時間目の授業中だったが、教師も生徒も、彼の存在には何の関心も払っていない。まるで彼だけが、この空間に存在していないかのようだった。


「……あれ?」


ふと目を開けると、世界が異様なほど静かだった。


校舎の外には青空、木々の揺れ、陽の光。それらはそのままなのに、人間の気配だけが、完全に消えていた。教師も、生徒も、誰一人としていない。


まるで世界が“停止”したかのようだった。


そのときだった。天井から、何かがゆっくりと降りてきた。


逆さまのまま現れたのは、黒い“ヒトガタ”。表情はなく、体の輪郭も曖昧で、影そのもののような存在だった。声を発することもなく、しかし空の脳内に直接、音のない“意思”が流れ込む。


《null…… null…… あなたに、世界をあずけます》


次の瞬間、空の右手に、冷たく硬い金属のような指輪が嵌まっていた。


「……何、これ」


彼が指を見つめた直後、世界は何事もなかったかのように動き出す。


教室には教師の声が戻り、前の席ではノートを取る生徒のペン先の音が響いていた。隣の席の女子が退屈そうにページをめくっている。空を誰も気にしていないのは、いつも通りだった。


だが、空だけは“さっきまでの異常”を明確に覚えていた。


あの静寂。あの黒い存在。そして、この指輪。


始まりだった。


白河空が、“ただの透明な存在”から、“世界に干渉する者”へと変わる、その始まりだった。

読んでくださってありがとうございます。

この物語は「無」に触れた一人の少年が、世界の“存在そのもの”に干渉していく記録です。

次回から、力が現実に影響を与え始めます。ぜひ続きもお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ