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一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
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【木草界】の新たな神様

 終わった……。

 全てが終わってしまった。

 結局、私は最後の最後まで守ろうとしていた親友を守る事も救う事も出来なかった。

 よりにもよって最後の転生でヌメっちと再会するなんて、神様はなんて残酷なことをするのだろう……。

 そう思って、自嘲気味に笑ってしまった。

 この世界の神が残酷なことをするのが得意なのは、さっき身に染みて分かったところだ。

 何を今更……。

 瞳があれば、思いっきり泣けるのに……。

 口があれば、思いっきり叫べるのに……。

 体があれば、思いっきり震えるのに……。

 何一つ悲しみを表現する手段が無い。

 今ほど、自分の魂だけという存在を恨んだことは無かった。

 発散という言い方は間違いかもしれないが、悲しみは涙と共に溢れてくれる。

 嗚咽と共に吐き出されるものだ。

 だが、何一つ出来ない私の中では、悲しみが渦巻いて逃げ場を無くして暴れまわっている。

 何か私が悪いことをしたのだろうか?

 だとしたら、誰か教えてほしい。

 私はただ必死に生きてきただけだ……。

 それなのに、大切な人を2人も失ってしまった。

 しかも、その原因は私にあるのだ……。

 後悔と無念で私の精神は押しつぶされそうだった。

 もしも、私が魂を鍛えてなかったらとっくにおかしくなってしまっているだろう。

 いっそ、おかしくなってしまえれば楽なのにとも思った……。

 中途半端に丈夫になってしまった精神力が恨めしい。

 これだけ鍛えてもアダモゼウスの少々より僅かに上程度なんだって……。

 どう逆立ちしたって、あの神様を何とかするのなんて無理じゃないか……。

 あの時の卵に私の【歩み】を視せたのだって、本当に意味があったのか疑いたくすらなってくる……。

 どんどんどんどん考えがネガティブの方向へ向かっていく。

 吐き出す方法が無いから、どんどんどんどん悲しみが溜まっていく。

「ふぅ……、良いお湯だったわぁ……」

 そんなところに、シャワーを浴びて戻ってきた小便タレがやってきた。

「あれ?随分と落ち込んでいるわねぇ~♪さっきみたいに、罵倒を浴びせてもいいわよ?ま、私にとって心地の良いBGMでしかないけどねぇ~。あぁ、本当に恨みや嫉妬の声は気持ちいいわぁ~♪」

 部屋の椅子に腰かけて、私を見下ろす。

 私は、恨みがましくアダモゼウスを睨みつけた。

 目こそ無いが、今までのように外を視る事は出来ていた。

 それにしても、私が生まれた時よりも遙かにこの部屋はおかしくなっていた。

 昔は、アダモゼウスがくつろぎやすい少女趣味の部屋のような感じだったのに、今はまるで実験室のような内装になっていた。

 試験管や液体で満たされたガラス筒などがあり、中では様々な生物が蠢いていた。

 中でも目を引くのが、アダモゼウスそっくりの少女がいるガラス筒だ。

 少女は緑色の液体の中で、眠ったように目を閉じていた。

「ふふふ、気になるのかしら?」

 別に……。

「まぁ、そう言わないの!どうせ、卵ちゃんには全てを話しておこうと思っているんだから……、私の計画をね……」

 計画?

「そう、計画。その為に【木草界】をこの部屋の内側まで広げて、時間と空間に関する修行をしたのよ……。時間だけ、空間だけだったら、【神之力とくしゅのうりょく】でとっくに私は使えるのよ。だけど、それを両方同時となると話は別。修行せざるを得なくなったわけ!」

 【木草界】を広げた?……ってことは、この部屋は【木草界】だってこと?

 私の思念を読み取り、アダモゼウスの顔がニイィと笑顔に歪んだ。

「そうよ。残念ながら、私は木草界の外では只の女の子。とてもじゃないけど、何でも可能な神様の力は使用できないわ。あれは、私が創りだした木草界の中だから出来たこと……。つまり、木草界限定の力だって事よ」

 ……それを部屋の中まで広げたのは、どうしてなの?

「まず、一つは修行の為ね。時間と空間を両方同時に扱えるようになる為の……。卵ちゃんは、知らないかもしれないけど、時間も空間も単品だけだとまったく役に立たない能力なのよ」

 ???

「まず、時間だけど……。時間は、【未来】、【現在】、【過去】の3つしか存在しないわ。分かりやすく言うならば、【早送り◁◁】、【再生◁】、【巻き戻し▷▷】かしら?つまり、それくらいしか出来ることが無いの。現在進行形で常に時は【再生】しているし、【早送り】したところで目的があるのならばやる事は変わらない。【巻き戻し】して過去を変えるにしても、先ほどまでやったことが無かったことになってしまい、何を変えればよかったのかを忘れてしまう。それは、能力を使用した本人も時には逆らえないから」

 !?

「時を早く進めたって、自分自身も早くなるのなら意味は無い。時を戻したって、記憶すら戻ってしまうのならば戻した意味も無い。時を止めたって、自分自身が動けなければ意味が無い。つまり、時間を操ることほど無駄な事なんて無いのよ。空間にしても、わざわざ空間を縮めて移動するくらいなら、加速して移動したほうが面倒くさくなくて早いのよ。メリットの少ない能力だったわけね……」

 ……でも、それをなんとかする方法に気が付いたのね。皮肉にも、私の新たな転生術からヒントを得て……。

「ふふ、さすがは卵ちゃんね。話が早いわ……。その通りよ!」

 アダモゼウスは椅子に深く腰掛けると、風呂上がりのドリンクを一気に飲み干した。

「自分が同じ空間にいるから同じ時の支配を受けることになる。……だったら、別の空間に存在すればいい。そして、私は時空を生成することに成功したわ。これによって、私だけ時間を自由に渡れるようになったわ。まぁ、さすがに止まった時を動くなんてことはまだ不可能だけど……、修行をさらに積めば出来るようになるでしょうね」

 私はその言葉にある魔女の姿を思い出そうとして、慌てて止めた。

 私の思念は、そのままアダモゼウスに伝わってしまう状況だ。

 ここであの魔女を思い出して、わざわざまた大切な人を失うのはごめんだった。

 だから、何も考えずにただアダモゼウスの話し相手になる事だけに努めることにした。

「そして、2つ目は、監視から逃れる為ね……。ここは【木草界】。だから、あのババアの目は届かないの……。ざまあみろだわ!」

 ババア?

 私にはアダモゼウスが言うババアとやらに思い当る人物がいなかった。

 頭に?マークを浮かべて思案していると、アダモゼウスが口を開いた。

「まぁ、どうせ分かるようになるわ……。私は一旦、貴方に吸収されるんだから……」

 はぁ!?

 ドキリとまるで心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受けた。

 いきなり、何を言っているんだこの女神は……。

 逆だろ……。

 あんたが私を吸収するんじゃなかったのか!?

「くくく、最後まで話を聞きなさい、卵ちゃん。だから、一旦・・と言ったのよ……。私は、ある目的を遂行するために【木草界の神】の座を捨てる!そのための準備は、もうほとんど出来ている!」

 そう言ってアダモゼウス指先に青白い炎を灯らせた。

 それが何なのか、私にはすぐに分かった……。

 あれは、アダモゼウスの魂の欠片だ。

 私もアダモゼウスの魂だから分かる。

 アダモゼウスの魂の億か兆か分からないけど、それくらい分の1ほどの量の僅かな魂。

 アダモゼウスは、自分自身とそっくりの少女が入っているガラス筒に近づき、それを少女の中に入れた。

 その瞬間、少女の体が一瞬だけぶるりと震え、目をゆっくりと開けたのだ。

「さぁ、見なさい、卵ちゃん!新しい【木草界の神】様よぉ~♪」

 アダモゼウスが拳でガラス筒を叩き割ると、そこにはアダモゼウスそっくりの少女が虚ろな目をして立っていたのだった。

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