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一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
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生まれ変わる

 ガラス筒の中から緑色の液体が、部屋の中に溢れ出た。

 空っぽになったガラス筒の中で、アダモゼウスにに似た少女はぼーっと虚空を見つめ続けていた。

「ほら、新生アダモゼウス!外に出ておいで!」

 アダモゼウスはガラス筒を破壊して、少女の手を取るとゆっくりと手を引いた。

 少女はおぼつかない足取りでガラスを踏まないように外へ出ると、アダモゼウスの横に立った。

 こうして並ばれると、どちらがアダモゼウスなのか分からないくらいそっくりだった。

 ……いや、さっきも言ってたけど、これは恐らくどちらもアダモゼウス?

「ふふふ、混乱しているみたいねぇ~、卵ちゃん」

 アダモゼウスは、少女の体を肩から掛けていたバスタオルで拭くと、衣装ケースからいつもの服を取り出し、それを少女に渡した。

 少女は相変わらず虚ろな感じで、黙ったままそれを着る。

「この子は、私の細胞から造った生物よ。魂が分裂出来るのならば、肉体も分裂出来てもおかしくは無いと考えて、修行をしたのだけど……これが思ったようにいかなくてねぇ~。結局、ZEROって魔女の実験を参考にクローンを作成する事で、肉体を増やすことに成功したわ!」

 気になる名前が出てきたが、私はそれを敢えて無視した。

 余計な事を言って藪蛇になるのは、もう嫌だったのだ。

 だから、私は別の気になる単語について聞いた。

 クローン……?この子は、貴方のクローンだっての?

「そうよ。私の複製された肉体に、たった今私の魂を分け与えたわ。これなら、見た目や内面で、私じゃないと判断する事は不可能でしょうね……。ま、下剋上を狙えないよう保険って意味で、木草樹とどっこいどっこい程度の力しか授けていないけどねぇ~。【神之力】も使えないし、形だけの神様ってわけよ」

 えぇ……、なんでわざわざそんな事を……。

「……神様がいなくなると色々と都合が悪くなるのよ。私の肉親にバレるととても面倒なことになるの……。だから、影武者が必要なの。私と外見も中身も同じ完璧な影武者が!!」

 アダモゼウスの言葉に衝撃を受けた。

 この神様にも家族がいたんだっていう……いや、そりゃいるか。

「まぁ、結構複雑な家庭環境なんだけど……そこについては記憶を共有すれば分かるようになるはずよ!……あら、もう新生アダモゼウスの準備は出来たみたいねぇ~♪」

 もう意識がはっきりしたのだろうか?

 先ほどまでぼーっとしていた少女は、椅子に腰かけてふてぶてしい態度で私達を見ていた。

「ええ、古いアダモゼウス、準備はとっくにできているわよ。私を影武者扱いってところに腹は立つけど、あのババアを始末する為だってんなら、喜んで捨て駒役も引き受けてやるってものよ!……さぁ、善は急げ。そっちの準備は良い?」

「ええ、とっくに……」

 そう言うと、アダモゼウスは両手を上に向けて力を込めた。

「ふぅ!!」

 気合の掛け声と共にアダモゼウスの手の上に金色の球体が出現した。

 そして、それを自分の真上に投げた。

「はい、いくよー!」


 ザシュ!!!!


 まるで夢を見ているような感じだった。

 それほど、目の前で行われた光景は信じられないものだったのだ。

 新生アダモゼウスと呼ばれていた少女は、アダモゼウスの胸を思いっきり貫いたのだ!

 そして、青く燃える炎の玉みたいなものを取り出した。

 目を開けたまま倒れたアダモゼウスの元へ金色の球体が落ちてきて、アダモゼウスの体を飲み込む。

 その球体を新生アダモゼウスが拾い上げた。

 時間にしてほんの1分の間に、創造主アダモゼウスが姿を消した。

 代わりに立っていたのは、右手にアダモゼウスの魂、左手にアダモゼウスを吸収した光の玉を持った新生アダモゼウスだったのだ!

 意識が真っ白になり、何が起こったのかが分からない。

「ほい、お疲れちゃーん!」

 そう言って、新生アダモゼウスは魂に何やら術式を掛け始めた。

 狼狽する私を無視して、新生アダモゼウスは、その術式を続けながら今までの事とこれからの事を話し始めた。

「まず、言っておくけど、私は完全に性格も知識も旧アダモゼウスと同じに分けられたから、命乞いとか助けを求めても無駄だってことは言っておくわね。旧との違いは、肉体の強さ、魂の強さが桁違いに弱いくらいしかないと思ってくれて構わないわ。まぁ、卵ちゃんがMP完全の状態で【変身】した状態よりかは、それでも強いんだけどね……」

 一体、何が起こっているの……?

「それは、貴方にこいつが吸収されれば分かる事。だから、私はこれからやる予定の事のみを貴方に伝えることにするわ……。まず、こいつの魂に今掛けている術式は、16歳の時に記憶と性格が覚醒するようになる術式よ。それまでは、完全に眠った状態になるようなやつね……」

 え?意味が分からないんだけど。

「あぁ、そっか……。まずは、そこからの説明がいるのか……。アダモゼウスは、訳あって【木草界】の生物へ転生して生まれ変わる必要があるのよ……。元々、貴方はただアダモゼウスの基礎精神力を上げる為に、木草界で強制的に修行させられる分けられた魂の一つに過ぎなかったわ。でも、時間や空間を超えて転生して、成長していくうちに、アダモゼウスの魂だった貴方に変化が訪れたの……」

 変化?

「きっと、貴方自身は気が付いていないでしょうね……。色々な生物へ転生して【歩み】を吸収して、自我が強まるたびに、貴方の魂はアダモゼウスの魂とは別物へと成長、変化してしまった。……まぁ、元々木草界のある魂を合成したから起こった変化かもしれないけど、つまり貴方はアダモゼウスの魂とは、似て非なるものになってしまったのよ。だけど、それはアダモゼウスにとって大きな収穫となったわ……。だって、人格や記憶を形成する魂だけは、浄化しなければ生まれ変わる事でも変化しないのだから……」

 ……どういう事?

「肉体は、生まれ変われば別物となる。だけど、魂は転生しようが同じ物なのよ。それこそ、木草樹の浄化システムを経由しない限り、知識と経験は引き継がれて、前世の記憶も残り続ける。だけど、それを経由してしまったら、前世の情報を全て失い別人になってしまうわ。アダモゼウスは、アダモゼウスとして生まれ変わらなければいけなかったのよ。だから、貴方は本当に役に立ったの……」

 ゾクっと寒気が走った。

 なんとなく、先ほどの言葉の意味が見えてきたような気がしたからだ。

「アダモゼウスの記憶と人格を封印して貴方に吸収させれば、それで魂の生まれ変わりは完成する。16年後に卵の人格や記憶を封じて、アダモゼウスの記憶と人格が覚醒するようにすれば、生まれ変わったままアダモゼウスは復活する。今、その術式を掛けている所なのよ……」

 くらっと眩暈がしたような錯覚に陥った。

 あまりの情報量の大きさに、処理能力が追い付かない。

 つまり、私自身がアダモゼウスに乗っ取られるってこと?

 魂に寄生され続けるという事なの?

 いや、でもなんで16年後なんだ……?

「そんなの……ある程度肉体が成熟してからじゃないとバレた時、太刀打ちできないからに決まっているでしょう。恐らく、人格が覚醒したら、私の家族にバレるリスクが上がってしまう。その時、赤ん坊だったらお話にもならないわ。だから、自分で考えて行動できる年齢まで、貴方を隠れ蓑にしようって寸法よ」

 そこで、アダモゼウスの魂への術式が終わってしまった。

 新生アダモゼウスは、それを雑に私に向かって投げてよこした。

 わっ!わぁー!!!!!

 避けることも逃げることも出来ない私に、アダモゼウスの魂はぶつかった。

 アダモゼウスの魂は、私の内側へもぐりこむように侵入してきた。

 拒もうとしても拒めない。

 水の中にジュースを混ぜるように、徐々に私の内側から何か異物が混ざっていく。

「喜びなさい。元アダモゼウスの魂であった貴方にしか出来ないことよ」

 新生アダモゼウスの声を全力で否定する。

 こんな事、喜べるはずがない!

 しかし、一度混ざり合ってしまった魂は、もう分けられることなんて無い。

 水とジュースを再度分けることが不可能なように……。

 私とアダモゼウスの魂は、これ以上に無い素晴らしい相性で混ざり合ってしまった。

 今は、私の人格しかないが、【歩み】を確認してゾッとする。

 私の知識とは別の何かが視える。

 それは、私では到底理解できない未知の情報だった。

 ガタガタと恐ろしさで何も言えなくなる。

「封印したけど、少しこぼれ出ちゃったかな?まぁ、いっか。基本的にアダモゼウスの知識や記憶を探ろうとしないことをお勧めしておくよ。16歳より早く消えたくはないでしょ?……さて、次は肉体かぁ」

 椅子から腰を上げて、新生……もうアダモゼウスでいいか。

 アダモゼウスは、あるガラス筒の前まで歩いていった。

 私は、そのガラス筒の中を見て驚きの声を上げた。

 鈴ちゃん!?

 そう、その緑の液体で満たされたガラス筒の中には、鈴ちゃんそっくりの女性が先ほどのアダモゼウスと同じように目を瞑って入っていたのだ!

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