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一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
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母は強し……

 私がZEROを背負って、古城の中をみんなで進んでいった。

 若い卵については、私の分身の術で増やした一人と説明しておいた。

 どういった経緯で増えたのかをなんとなく察しているZEROと詩ちゃんには説明不要だったので、その説明をしたのは神楽坂姉妹だけだ。

 素直で純粋な二人は、それをすぐに信じて追及しようともしなかった。

 おかげで若い卵は、すぐに皆の輪の中に入れた。

 無駄に詳しい説明が嫌いな私にとって、本当に助ける出来事だ。

 まぁ、これも二回目だけどね……。

 コツコツと城の中を歩いて、辿り着いたのは古城の最上階だった。

 広い一部屋の中に、赤ん坊を抱いた女性の姿があった。

「ん?」

 私は、何やら不思議な雰囲気を感じた。

 なんか、懐かしいというか、会ったことがあるような、そういう不思議な印象。

 それを彼女から感じたのだった。

「貴方が、この帝国の参謀長【芭蕉ばしょう 華凛かりん】に間違いないわね?」

 ZEROの言葉を聞いた女性は、こちらを向くと赤ん坊を地面へ寝かせた。

「!?」

 突然の動きに神楽坂姉妹が、臨戦態勢に入ろうとしたが、それを詩ちゃんが止めた。

「待って……」

 そんな私達の前に華凛がした行動は…………土下座だった。

「私の命ならばいくらでも差し上げます。なので、一つだけ、たった一つだけお願いを聞いてもらえませんでしょうか?」

「…………聞いてみましょう」

「ありがとうございます」

 ZEROの言葉に顔を上げることもせず、ただ地面に額を擦り付けたまま、彼女は願いを口にした。

「この子の命だけ、この子の命だけは助けてください。私と旦那と親友たちには、確かに罪はあります。しかし、この子には罪がありません!」

「……もしも、この子が親を殺した私達を憎むようになったらどうするの?」

「そうならないように育ててくださって構いません。私達の存在を偽って話してもいいです。ただ、この子が生きてさえいてくれれば、それでいい……」

 背中のZEROは、何か考え事をするように顎に指を当てていた。

 そして、赤ん坊の方を見る。

 赤ん坊は、キャッキャッと無邪気に笑顔を浮かべていた。

「この子の両手には、恐ろしい力が封じ込められています。しかもその力は、代々(だいだい)子孫へと遺伝していく力です。女性であれば生まれてきた子供に、男性であれば命を失った時点で子供へと引き継がれます。必ずや、貴方の力になり得る存在になりましょう」

「……分かった。その子の命は、助けよう。……でも、あんたには死んでもらわなくちゃいけない。それは、分かるな?」

「はい……」

「明日の明朝に、連合帝国【アダモグランディス】の全国民へ向けて、私達の技術で映像を流す。その時に、あんたを処刑して、連合帝国が終わりを迎えたことを国民たちへ認識させる。…………明日の朝、迎えに来るまで最後の時を赤ん坊と過ごしなさい」

「……貴方様の御慈悲に感謝いたします。ありがとうございます」

「お礼なんか言われる筋合いないわよ……、馬鹿ね……」

 ZEROは少し困ったように笑うと、撤収と皆に声を掛けた。


 私は【転送】で皆を隠れ家まで運ぶべく、魔法を使用した。

 そして、その時に【アダモグランディス】から出られない原因となった転生を思い出していた。

 あの時に初めて出産を経験して、授乳もしたんだっけ?

 木草の巫女への転生。

 それが、この帝国へ縛り付けられる原因にもなったのだ。

「まったく、母親は強いなぁ……」

 子供の為に平気で命を捨てられる。

 私が転生した千鳥も、あの華凛という女性と同じくらい強い母性を持った母親だった。

「ほんとにねぇ……、私達の母親もあれくらい強かったら、きっと私達も救われていたんだろうね」

 ボソッとした小声でのZEROの言葉は、誰に向けられた言葉だったのか?

 聞こえていたのは、きっと背中にZEROをおぶった私だけだったろう。

 そして、ZEROは神楽坂姉妹を見ているような気配がした。

 ああ、そうか……。

 彼女達の両親は弱かったからこそ、捨てたり置き去りにしたのか……。

 いや、必ずしも人間は強くなれるとは限らない。

 強い者も弱い者もいるのだ。

 そういった中で、皆が普通に笑いあって生きていける国を……って、そうだよ……。

 私達みたいな子を生み出したくないからって神楽坂姉妹は頑張っていたんだった。

 もしも、弱い両親だったとしても、子を捨てる必要が無い国。

 うん、鈴ちゃん達なら出来るよ!

 未来を見てきた私が言うんだから、間違いない!!

 まぁ、【死合制度】とか訳わからない制度取り入れたりしちゃってたけどね!

 そんなことを考えているうちに、隠れ家にようやく着いた。


「皆、今日はお疲れさま!各自、ゆっくりと休んでちょうだい!明日の朝は、正装でこの場所に集合!解散!!」

「あ、若いわたしは、詩ちゃんからこれまでの経緯を聞いといてね!詩ちゃんも、お疲れだと思うけど、それには付き合ってあげてね!」

 神楽坂姉妹は、フラフラしながら隠れ家の中へ戻っていった。

 詩ちゃんは、若い卵を引き連れて、わたしの部屋へと向かったようだった。

「さてと……、これにて一件落着かしら?」

「まぁ、明日次第だけど、彼女は子供の為にも逃げ出したりはしないでしょ。とりあえずは、終わったってことでいいんじゃないかな?」

「ねぇ、卵ちゃん。一番初めに建てた小屋を覚えてる?」

「小屋って言うな~。頑張って建てた隠れ家でしょ!もちろん、忘れたことなんてないわよ……」

「疲れていると思うけど、今日はそこに帰りたいな。久しぶりに、卵ちゃんのオムライスっていうやつが食べたい」

「えぇ~、あそこって全然整備してなかったし、もうボロボロになってるんじゃないの?魔女狩りで隠れ家をあらかた壊された時にも見逃されてたし……」

「ボロボロでもいいの~!!行きたいの~!!」

「はいはい、まったく2人だと甘えん坊なんだから~」

 私は、再び【転送】すると、初めて二人で建てた隠れ家へやってきた。

 そこは、見る影もないほどボロボロとなっていて、辛うじて雨風が防げるかというような佇まいだった。

「ほら、来たわよ……」

「うん……」

 二人で家を見上げる。

 思い出すのは、懐かしい今までの思い出だった。

「卵ちゃん……、これでお別れなの?」

「……そうなるかな」

「もう、会えないの?」

「……多分、難しくなると思う」

 背中から回っている手がギュッと強く握られた。

「や……だ……」

「……」

「卵ちゃんと会えないの……嫌だ……」

「……」

 徐々に声が震え、背中に押し付けられてる頭が重くなる。

「いやだ、いやだ!!やだよぉ~!!なんで、なんで会えないとか言うのぉ?私は、まだまだまだまだ卵ちゃんと一緒に居たいもん!!ずっとずっと、一緒に居たいもん!!なんで、ねぇ、なんで会えないの!!会ってよぉ~!!」

 背中に温かい水がじわっと広がっていく。

 嗚咽が響いて心に刺さる。

 私は下唇を噛んで涙を堪えた。

 でも、どうあっても自分の意思で転生生活をコントロールすることは出来ない。

 この帝国から出られない呪いが解けたら、私はまた悠久の時と場所を飛んで転生していくことになるだろう。

 だから、約束なんて出来ない。

 【アダモゼウス】との命がけの鬼ごっこが始まるまで、残り30年しかないのだ。

 30年の間に再び鈴ちゃんと出会えるかと聞かれても、約束が出来ない。

「ごめんね、約束は出来ないけど、会える可能性があるときには、会いに行くわ……」

「ねぇ、なんで?なんで会えないの?やだよぉ……会いたいもん……ううっ……」

「私も会いたいわよ……。でも、約束が出来ないの、ごめんね……ごめんねぇ~!!」

 そこが、私の限界だった。

 お互いに人目もはばからず、大きな声を上げて泣き続けた。

 ようやく二人が落ち着いたのは、すっかり日が暮れた夕方になってからだった。

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