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一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
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爆砕

 影との戦闘から予想はついていたが、彼は詩ちゃんのように武器を使用するタイプでは無かった。

 己の肉体を鍛え上げ、拳や蹴りで戦う戦闘スタイル。

 即ち、【拳法】!!

 私は大総統の繰り出した突きを躱し、間合いを取った。

「ほぅ……、なるほど、なるほど。奇遇だな」

「えぇ、奇遇ね……」

 私の構えを見た大総統は、それだけで私が思ったことと同じことを察したようだった。

 つまり、私と彼は同じ戦闘スタイルを持つ者だという事を……。

 私は、今までの卵ちゃんとの修行を思い出した。

 卵ちゃんが一番得意な戦闘方法は、【拳法】だった。

 私は、それを教わったのだ。

 何故か、先生お得意の重罪なんちゃら(詳しい拳法の名前は教えてくれなかった)を教えてくれなかったけど、その拳法の基本的な基礎をこれまでずーっと教わってきた。

 おかげで、私自身も【拳法】で戦うのがもっとも得意な戦法になってしまっていた。

 もちろん、私の弟子である神楽坂姉妹も同じだ。

 魔法で補助しながら、拳法で戦うスタイル。

 それが、ZERO流!

 私達の戦闘スタイルだった!!

「しっ!」

 【風受の靴】を発動させながら、一気に間合いを詰めて大総統へ拳を突き出す。

 大総統は、それを受け流して、肘を入れてこようとした。

 私は、それを体をひねって躱す。

 傍から見れば、まるで舞踊を踊っているかのようにも見えるだろう。

 私と卵ちゃんの組み手を見た神楽坂姉妹がそんな感想を漏らしたこともあった。

 完成された拳法の使い手の試合は、美しく綺麗であると……。

 実際に戦っている私自身もそう感じてしまったのだ。

 つまり、厄介な事に相手も相当の拳法使いだってことだ。

「ふふふ、ははは!!!楽しい、楽しいぞ!!ZEROよ!!よもや、これほどの実力だとは思わなかった!!超越していてもこれとは!!」

 超越……。

 詳しい話は、前に卵ちゃんから聞いていた。

 この世界には、体内に神様からの使いの蟲を宿らせている者がいて、その蟲は宿り主をパワーアップさせる力を持っているらしい。

 しかし、デメリットとして正気を失ったり、意識を乗っ取られるなどがあると聞いたけど……?

「くはははは!!!どうした、ZERO!!手も足も出なくなったではないか!!」

 私は、この男の普通を知らない。

 しかし、しっかりと会話も出来ているし、どうにもデメリットを感じさせるような雰囲気が無かった。

「あんた、蟲に意識を乗っ取られてないの?」

「蟲?……ああ、蜘蛛の事か?余が蜘蛛に意識を乗っ取られるわけが無いだろう?あれは、余の友人であり、客人である。ただ、余に力を貸してくれる仲間でしかないわ!!」

「ふむ……」

 拳法の試合のおかげで、良い感じに体内に溜まっていた怒りを消化できていた。

 おかげで、冷静に頭を働かせることができる。

 アドレナリンのおかげなのか?

 ぼーっとしていた頭の中もすっきりしていた。

 先ほどの大総統との会話だが、どうやら彼はその蟲と協力関係にあるようだ。

 何故か、意識を乗っ取られずに力のみを供給されている。

 聞いた話とは違ったが、そういうものもあるのだろう……。

 その蟲も意思がある生物ならば、恐らく話し合いか力技で解決できるだろう。

 んで、それに敗れたほうが勝者に従う事になると……。

 ということは、こいつは勝ったわけだ。

 その超越蟲とやらに……。

「あんた、本当に厄介ね!」

「ははは、そんなに褒めるな!褒美も出せんぞ!!」

 まるで槍のような鋭い突きを連続で躱した。

 私や卵ちゃんの拳法の基本技は、掌底。

 指でも、拳でも無い。

 手の平から内部へのダメージを蓄積させる技が多い。

 それに対して、相手は指。

 鋭さを感じる突きは、食らえば服を破り、肉を裂くだろう。

 加えて、指と掌の動きの違いが速さに出ていた。

 弧を描くような動きに加えて、掌は風の抵抗をもろに受けてしまい、スピードが出にくい。

 それに対して、鋭く槍のようにまっすぐ伸びる突きは、風の抵抗をまったく受けないので、スピードが出る。

 攻撃の速さは、向こうに軍配があった。

 だが、それを補助するのが魔法だ。

 私は、相手の超越に対抗するために自己強化の魔法や特殊能力を使用し続けていた。

 おかげで、超越した彼よりも肉体的には強いだろう。

 なにしろ相手の単純的な強さは、先ほど戦った影と同じなのだ。

 ボロボロになりながらとは言え、4体相手に生き残ったんだ。

 一人ならば、こちらに分があると思っていた。

 しかし、それを補っても余るほどの武の技術。

 正直、私は苦戦していた。

 攻撃は躱せるし、受け流せている。

 しかし、それは相手も同じだった。

 決定打が何もないまま、激しい攻防が続く。

 だが、決定打が無いのは私だけだったようだ。

 それは、何百という攻防が終わった直後だった。

 彼の胸から突然、両手サイズの蜘蛛が顔を出したのだ。

 驚いて一瞬だけ、体が固まった。

 彼は、その一瞬の隙を見逃さなかった。

「くはははは!!!もらった!!!」

 突きが私の腹を貫いた。

「がっ!」

 私は、【風受の靴】を起動し、一気に腕を引き抜いた。

 その直後に、発動中の特殊能力【自己強化再生】が傷を瞬く間に治す……はずだった。

「えっ?あぁ……」

 どくどくと流れる出血が止まらない。

 気を抜くと中身が飛び出そうだったので、慌てて破いた袖で中身がこぼれ落ちないように腹を縛った。

「かっかっかっか!!!もう、お前はおしまいだ!余の勝ちだ!!」

 そう言って豪快に笑う大総統の顔が霞む。

 気合を入れようと力を込めると出血がひどくなった。

「ど、どういうこと……?」

 何故か、特殊能力が発動していなかった。

 自己強化などの魔法は使えていることから、特殊能力だけが使用不可能になっていた。

 感じるのは、お腹の奥にある不快感。

 まるで先ほどの突きの際に、何かを置いてこられたかのような不気味な気配。

「これは、まさか!?」

「そう、余の【呪い】だよ!貴様の特別な力を封印させてもらった!この程度の【呪い】では、1時間ほどしか持つまいが、その出血量だ!!1時間も生きていられるほど器用でもあるまい!!」

「がはっ!」

 ズキズキと痛むお腹のせいで呼吸が乱れる。

 さっきまでクリアだった視界と頭が徐々にもやがかかったようにかすんでいく。

 まずい……。

 私にとって、特殊能力は生命線とも言えるものだ。

 これを封じられたら、万が一にも勝ち目は無くなる。

 加えて、この重傷を治すすべもない。

 せいぜい魔法で傷口を塞ぐぐらいしか出来ないのだが、それにも時間が掛かりすぎる。

 何より傷の治癒に時間とMPを消費していたら、その隙に攻撃を受けて殺されてしまうだろう。

 私に出来る最善策は、自分に残された動ける時間を使って、こいつを倒す!

 むしろ、それ以外の策が無い!!

 考えろ、私……。

 あるのは、魔法と拳法のみ。

 特殊能力は使えない……。

 この条件で、勝てる方法を見つけ出せ!!

 時間がゆっくり流れるほど集中して考えた。

 しかし、何も思い浮かばなかった。

 だから、私がやったのは、いつも通りの攻撃だった。

 拳を突き出して攻撃を与える。

 卵ちゃんがひたすら鍛えろと言っていた、私の特殊能力【修復不能之破壊しゅうふくふのうのはかい】を組み合わせた私のオリジナル拳法で……。

 どんなものでも破壊することの出来る私が創り上げた最強の拳法。

 もっとも、特殊能力が使用不可能な今では只の拳法でしかないのだけど……。

 そう思っていた。

 私の拳が突きをしてきた大総統の拳とぶつかり合うまでは!!

「ぐあああああぁぁぁ!!」

 大総統の絶叫に慌てて目の焦点を合わせた。

 見ると、大総統が突きをしてきた方の指がぐちゃぐちゃに壊されていた。

 ただ押し負けただけでは、こうはならないだろう。

 そう思えるほど、無残に壊されていたのだ。

 私は、先ほど無意識で拳を出していた。

 一番修行をした一番出しやすい拳法の一番慣れていた技で。

「もしかして……」

 私は今まで拳法に能力を付加したつもりでいたが、もしも繰り出した攻撃の手順、間合い、方法、息遣い、速さ等々、色々な要素が組み合わさり、相手の指を完膚なきまでに破壊できる条件が整った攻撃をしていたのだとしたら……、もしも破壊できる特殊能力を条件で再現出来たら……、それは、なんでも破壊できる拳法になってしまうのではないだろうか……。

「試してみる価値は……、ありそうねぇ……」

 特殊能力ではなく、特殊能力と同等の力を持った拳法。

 私は、それをこの場で戦いながら開発しようと拳を構えた。



 後に、こういった拳法は、【能力拳法】と呼ばれていくこととなる。

 そして、その最強の一角である能力拳法【爆砕壊破ばくさいかいは】が今まさにこの瞬間、産声を上げたのだった。

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