疲労蓄積
私はすぐさまZEROの元へ駆けつけ、影の何体かを相手取った。
意外な展開に思いっきり焦って、動くのが数秒遅れてしまったのが悔やまれた。
ZEROに背中を預けるように立ち、彼女を庇う様に立ちまわった。
「まったく、寝ぼけてたんかい、先生?えらく遅かったじゃない?」
「いやいや、私が一番早いんだけどねぇ……。確かに、この現状を見る限り、遅いと言われても仕方がないかな?」
最初から全力で影を相手する。
【自己強化再生】に【重罪心疲】、【木草砲】に【蒼翼】。
幸いにもMPは、ほぼMAX状態だったので、湯水のように使用してZEROの負担を減らした。
影が何回目か分からない同じような攻撃をしてきた。
さすがに早くて重いだけの分かりやすいパターンの攻撃では、何回も見ていれば慣れてくるものだ。
これも、【蜘蛛の手】の重要な欠点だと思う。
影達は、柔軟な対応が出来ないのだ。
全部が意思を持たない所有者の人形。
なので、考えて行動することが出来ない。
ただただ、所有者の命令を遂行しようとするだけのお人形さん。
きっと、今は『余に逆らう者達を殺せ!』とでも命じられているんだろう。
動きが単調になるのもそのせいだ。
もしも、全員がまんま大総統と全く同じ規格だったら、詩ちゃんもZEROも複数なんて到底相手に出来なかっただろう。
「とはいえ……」
相手は、超越者並みの強さを誇る影の化物。
双葉ちゃんでさえ、成長した遙か先の未来で、超越化した詩ちゃんに一度殺されている。
ちらりと神楽坂姉妹を見ると、なんとか死なないように立ちまわってはいるが、それでも徐々に押されている。
私は、チィっと舌打ちをすると、魂刀【蒼翼】で相手を牽制する。
これならば影でさえダメージを与えられ、消滅させることが可能だ。
しかし、消滅して大総統の影に戻ったやつは、何度でも所有者の意思によって復活させることが可能だというチート界宝。
それが、最悪の界宝【蜘蛛の手】なのだ。
私は、詩ちゃんに教わった知識を思い出しながら、影の相手をする。
皆が必死になって、それぞれの影と交戦し続ける。
「くっ!どうするの!先生!!このままじゃ、私達の負けで完よ!」
「大丈夫よ、そんなことにはさせないから!」
「何か良い作戦でもあるの?だったら、早く教えてよ!!」
お互いに背中を預けながら、私とZEROは影の攻撃を受け流していく。
良い作戦なんて、まさに今やっているこれがそうだ。
影は物理攻撃無効体質なので、拳や刀などで傷つけることが出来ない。
特殊能力や魔法で消滅させる事は出来るが、所有者の意思1つですぐさま復活出来てしまう。
つまり、現状維持のこの状態が、一番最適な影の対処法なのだ。
影を抑えている者達と所有者を倒す者で役割を分けて行動すること。
それが、【蜘蛛の手】攻略の一番最適な方法だ。
問題は、影が強すぎて所有者の元へ行けるものがいないという事だけ……。
もっとも重要な役割の人物が不足しているだけだ。
だからこそ、待っているのだ。
現状維持で、助けが来るのを待っているのだ。
そして、ようやく彼女達が来たのだ。
「待たせたわね、卵!」
その姿を見て、私以外の皆が目を見開いて驚いた。
そりゃ、そうだろう。
本来ならば、そこにいるはずの無い者がそこにはいたのだから……。




