解析不能!?
「さぁさぁ!去る者は、追わないよ!!私と命のやり取りをしたい者だけかかっておいで!!!」
足元に横たわる兵士達の真ん中で、私は声高々にそう宣言した!
ちなみに、足元に倒れている兵士たちは、死んでいるわけでは無い。
私の【重罪心疲】で、疲労困憊にさせただけである。
とはいえ、立ち上がることも出来ないほどの筋肉痛に苦しんでいる状態であるけどね!
流石に、死ぬ覚悟の出来ていないやつを殺すのは、躊躇する。
我ながら、戦争中になんて甘いんだろうと思うけど、仕方がない。
これが、私の性格であり、私のやり方なんだから。
言っても分からない分からず屋だけ、ここで命を粗末にすればいい。
いくら銃で撃たれようとも、瞬時に修復してみせた。
こちらは、素手で圧倒してみせた。
ただの小娘でないところを証明してみせたのだ。
ここで、勝てない、殺されると、判断できないような馬鹿者とだけ、私は命のやり取りをやってあげよう。
そんな愚か者多くは……。
「殺せ!魔女だ!!」
「全ては、アダモゼウス様の為に!!」
「我らが、総統閣下の為に!!」
「命を捧げよ!!」
……いっぱいいたぁ!!
なんでだよ!
なんで、そうなるんだよ!!
私は、思いっきり舌打ちをすると、【重罪心疲】の構えから、【勝底密御】の構えに変えた。
「しっ!!」
気合の掛け声と共に、何十という兵士達が吹き飛ぶ。
両手を指揮者のように振るい、圧縮した空気圧を兵士達にぶちかました!
まるで、砂山を吹き飛ばすかのように、人間が空を舞い、辺りに飛び散っていく。
「ひっ、ひぃ!魔女め!!」
「そう思うんなら、向かってこなければいいのに……」
いくら吹き飛ばしても、兵士達の歩みは止まらなかった。
中には、こっそり離脱した賢い者もいたようだけど、そんなの全体の数%に過ぎなかった。
大多数の兵士達は、神【アダモゼウス】を信じて、命を捨ててまで私を殺そうと向かってきていた。
とはいえ、実力の差は歴然だ。
銃や剣を片手に特攻をする一般人じゃ、相手にもならない。
兵士として体を鍛えているとはいえ、私からしたら鍛えていないのと同じレベルだ。
0.1と0.1000000000001ぐらいの微差。
話にならない。
加えて、私は本気を出していない。
「銃は、遠距離武器。それが効かないからって、近寄ってきて発砲しようとか、銃の良い所潰してるよね?ってか、そんな鉛玉、0距離でも効かないからね?」
無駄に命を散らそうと特攻してくる兵士に、そんなアドバイスまでしてしまった。
ならばと、今度は刃物を取り出し、特攻してくる始末。
おい、誰かこいつらの脳みそを鍛えてあげてちょーだいな……。
「はぁ……、もう手心は十分に加えたし、いいかな」
私は、右手に思いっきり力を込めると、それを全力で薙いだ。
圧倒的な空気圧の暴力が生まれ、それは暴風となり、全てを吹き飛ばした。
そして、私の目の前には、瓦礫と人の山すら残さない、平らな大地だけが残った。
「うわ……、ちょっとやりすぎた」
どうやら、町の半分ほどを吹き飛ばしてしまったようだ。
生き残った兵士達は、圧倒的な力の差を見せつけられ、その場で固まっていた。
次第に、状況を理解し始め、涙を流しながら歯を震わせた。
「ごめんね、追わないから逃げなさい」
私は、それだけ言い残して、【サーベルアダモ】の総統閣下とやらがいる屋敷を目指す。
が、その途中、彼と出会ったのだ。
「おやおやおやおや?これはこれは、【木草の巫女】の服装の少女が、何故こんなところにおられるのかな?」
不敵な笑みを浮かべた青年は、道の真ん中で仁王立ちをしていた。
「【サーベルアダモ】の参謀長だっけ?」
「おや、こんな田舎娘も私を知っているとは、有名になりすぎてしまいましたかな?」
ああ、そっか。
この幼女の姿じゃ、会ってないから分からないのか。
まぁ、いい……。
「名前は知らないけど、顔だけ知ってる」
「ああ、これは失礼いたしました!私は、帝国【サーベルアダモ】参謀長にて、帝国のNo2!【木原 幹彦】と申します。以後、お見知りおきを!!」
そう言って、大げさな仕草で頭を深々と下げる幹彦。
私は、そんな彼に冷ややかな声を浴びせた。
「No.1だろ?隠すなよ」
「……いやはや、流石は魔女ですなぁ~。……てめぇ、何者だ?」
「なんだ、知ってるじゃない。魔女だって……」
「あ……。ハハハ!これは、一本取られましたな!!そうか、そうでしたか!!魔女とは!!」
道に佇む二人から、笑い声が冷たく響く。
その目は、笑っておらず、まるで獲物を駆る獣のような目であった。
「参謀長【木原 幹彦】、参る!」
「帝国に敵対する勢力の魔女よ、遠慮はいらないわ!」
言葉の応酬の間に、こっそりと【魂糸】を幹彦に突き刺すことに成功していた。
まずは、敵を知るところから始めなくていけないと思ったのだ。
そして、【魂情報】を視て、私は唖然とした。
全ての文字が、バグったかのような意味不明な文字のみで構成されていたのだ。
「なんだこれ……」
初めて他国の文字に触れたかのような感覚。
これは、もしかして魂自体が何か特別なものなんじゃないのだろうか?
辛うじて読み取れる文字は、【不老】と【啓示】と【夜】というキーワードのみ。
「……何もかも分からない相手とやり合うのは、久しぶりねぇ~」
私は、こちらに向かってくる幹彦の姿を確認して、慌てて【重罪心疲】の構えを取った。
が、少し遅かったようだ。
「え……」
一瞬にして、視界がぼやける。
ものすごい頭痛がして立っているのも辛くなった。
「なっ、なニぃふぉ……」
口がだらしなく開き、涎が止まらない。
堪らず膝をついた私の頭を、幹彦は思いっきり踏みつけた。
踏みつけられた勢いで、その場で倒れこんでしまう私。
状況は最悪なのに、頭がぐらんぐらんと揺れる様で、考えることが出来ない。
踏みつけられている痛みのおかげで、意識を保っているような状態だ。
「こちらの被害は甚大だ。楽には、殺さんから覚悟をしろよ?」
意識が混濁している私に向かって、幹彦は思いっきり剣を振りかぶった。




