69.残りブロックは緊迫する
一旦、本編はここで切ります。
(淡魂 希人 《※ネカマレード》 視点)
ふむ。
そろそろ他ブロックでは勝者も現れて来た頃か?
なんて、現実逃避している余裕もねぇか。
「副団長、どうします?」
「あれ倒せなきゃ、プレイヤーの誰かが勝ち残るのも難しいと思いますが……」
「ええ、その通りですわね……」
Eブロックへと割り振られた己と部下達は現在、ただ一点を見つめていた。
そこに居たのは……
「……ウ~ガァァ~……」
「火臓……まさか私達が当たるなんて、とんだ不幸ですわ……」
……この突発イベントにおける特別ゲストにして七怨将の一角、"腐竜将軍 火臓"だった。
その身を一言で言い表すならば、腐りかけのドラゴン。
四足歩行で背中からボロボロの翼が生えた、スタンダードなドラゴンのゾンビとしか言えなかった。
しかし、その身の丈は翼を除いてもせいぜいがダンプカー程度。
……ドラゴンとしては、小さ過ぎないとはいえ小柄な方だ。
「……副団長、行きますか?」
「行くしかありませんわよ……というか、多分気付かれてますわ……」
「え?」
チッ、己の運もここまでか……
けどま、やれるだけの事はやって浅斗に託すべきだろうな。
「ウ~ガァァ~!」
ーボッ!ボッ!ボッ!
「……名の通り、火を扱うんですのね……」
臨戦態勢に入った火臓が業火を纏い、周囲に火の粉が舞った。
……この火の粉に当たるのがマズい事ぐらい、深く考えずとも分かってしまった。
「ウ~ガァァ~」
ーバサッ!バサッ!
「……ええ、いざ尋常に勝負と行きますわよ!」
背中の羽を動かし、火の粉を飛ばす火臓。
……勝てるとは思えないが、後に託すためにも出来る限り長く生きて削らねぇとな……
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(源徳 村雨視点)
「ん……"灼熱の処刑竜 煉獄"、それが今や火臓と名乗っているドラゴンゾンビの名でございます……」
ースパパパパッ!
「「「「「あっ……」」」」」
ードサドサドサッ……
「ふ~ん……それ、今じゃなきゃ駄目か?」
Fブロックに割り振られてから、どれだけ経ったか分からねぇ頃合いに。
影奇に乗って無双していた俺は、いきなり影奇から火臓についての話を切り出されていた。
「ん……いえ、主様が聞いて来られないので……」
「だって興味ねぇからな。……あの火臓とかいうドラゴンゾンビが窮奇に反逆した事実とか、聞いても別にって感じというか……」
こう言っちゃ悪いが、俺としてはそんな設定もあったな程度の認識だ。
……つうか、火臓にとって因縁の相手に当たる窮奇は既に死んでやがるし……
「ん……火臓改め煉獄は、窮奇へ仕えるのが勿体ない程の女傑でございました……」
「あ、雌ドラゴンだったんだな」
「ん……そんな煉獄が、どうして嫉妬で身を滅ぼす様な真似に出たのか……某、未だに分からないんでございますよ……」
「そうかそうか……」
「ん……露骨に興味なさげでございますね?」
「そりゃなぁ……奴の生前を聞いたところで、ゾンビになっちまった今が当時と同じ思考回路だと思えねぇから参考にもしづらいし……」
もし、ドラゴンゾンビになった後の火臓改め煉獄について詳しく教えて貰えるなら話は別だがよ……
生きてる時の奴について聞かされてもなぁ……
とか思ってたんだが……
「ん?……何か誤解してそうでございますが、煉獄は当時からドラゴンゾンビでございましたよ?」
「は?……え、どういう事だ?」
煉獄は、当時からドラゴンゾンビだった?
……てっきり、窮奇との戦いで死んだとばかり……
いや、よくよく考えたらアレと戦ってゾンビになる死骸が残る筈もねぇか……
……だが、それはそれとして当時からドラゴンゾンビだったってのはどういう……
と、新たな疑問が浮かんだタイミングだった。
「ん……主様、無駄話はここまででございます」
「へ?……そりゃどういう風の吹きま……あ~、そういう事か」
突如として話は切り上げられ、俺は前を見てその理由を察した。
何せ……
「え、もう話は終わりなのカナ?……せっかく、おじさんも聞き耳を立ててたのに……」
「まさか同じブロックに居たとはなぁ……初めましてだった筈だよな、粗4さん……」
俺達の前に立っていたのは、迷彩柄の軍服を着たダンディーな中年アバターのプレイヤー。
……[機道兵団]の副団長、粗4さんだった。
「おっと、ムラザメ君はおじさん構文に無反応なタイプか~……おじさん、ツッコミ待ちして損した気分だよ」
「な、何だって?……こう言っちゃアレだが粗4さん、俺達を舐め腐ってるのか?」
「いやいや、舐めてなんかないよ。……ただ、おじさんとしても消耗品禁止縛りで手榴弾や閃光弾が使えなくなっちゃって戦術の幅が狭くなっちゃってるからね~……こっちも手段は選んでられないんだ」
ーバババンッ!
「うおっ!?」
ーぐわん!
「ん……回避、間に合ったでございます!」
ゆ、油断した……
粗4さん、訳の分からん無駄話からノーモーションでエネルギー弾による銃撃へ移行しやがった……
何とか影奇が回避に成功したから良かったものの、下手すりゃ脳天貫かれて一撃お陀仏だった。
「こちとらおじさんなんで若い子みたいには動けないけど、そこはほら経験で」
ーバババンッ!
「話の途中で撃って来るなよ!」
「ん!」
ーぐわん!
粗4さんはどうも、戦いのペースを俺達に握らせるつもりはねぇらしい。
……こりゃマズいな。
「あちゃ~、また回避されちゃった……こうも自分の老いを痛感させられるとおじさん、やっぱり年は取りたくないもんだと思わされるよ……」
「飄々としてて掴み所がねぇな……」
「ん……恐悦と話してる気分でございます……」
え、恐悦って竜語だとこんな感じなのか?
……って、そんな事はどうでも良い!
「ほれほれ、おじさんは逃げも隠れもしないから何処からでもかかっておいで♪」
「……腹立つな……」
「ん……」
認めるしかねぇが、粗4さんは強ぇ。
けれど、ここで粗4さんに勝てなきゃ本戦なんて夢のまた夢だ。
……どうせ参加自体が記念みてぇなもんだし、この強敵相手に全力で挑んでみるとするか!
「お、良い顔つきになったね?……おじさん、そういう若者好きだよ」
「本っ当に何考えてんのか分からねぇな!」
とまあ、口ではこう言いつつ。
……俺は粗4さんの一挙一投足を深く注視しつつ、足らない頭脳をフル回転させて戦いに臨むのだった……
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(ラビリー視点)
「うお~っとぉぉぉぉぉ!……Eブロックでは火臓選手とネカマレード選手が、Fブロックでは粗4選手とムラザメ選手が、それぞれ戦いを開始したヨ~!」
「どちらも注目選手同士の戦い……目を見張るものがあるピポね♪」
「……って、そうこうしてたらGブロックではヴァルメリド選手と乱打羽選手が戦いを……ありゃ、Hブロックでヘビイチゴ選手と白鶴選手も戦いを開始しちゃいそうで……あ~もう、こうなったら同時実況モードONでガンガン行くヨ!」
「無理は厳禁パポよ?……あ、観戦側は専用チャンネルへ分かれてくれたらありがたいピポ」
うおぉぉぉぉぉぉぉ!
どいつもこいつもすぐに戦るのは分かっていたとはいえヨ!
……全部一気に実況するとか無謀の極みヨ!
「この感じだと勝ち残りは……火臓、ヴァルメリド、ヘビイチゴはほぼほぼ確定として、Fブロックがどっちに転ぶか……否、他3ブロックもジャイアントキリングが起こる可能性すら……」
「お~い、ちゃんと実況しろパポ~♪」
「煩いヨ、ラスボス」
ハァ……
あ、Cブロックに続きA、B、Dブロックも勝者が確定したっぽいヨ。
となると、残りは3ブロック。
……もう何だって良いから、さっさと勝者を決めてくれないかヨ~?
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