45.ムラザメは押し切られる
ちょっとアイデアが降って来たので、急遽書いて更新しました。
(俯瞰視点)
窮奇の軍勢を相手取ったレイドイベントが終結してから1週間後。
アルケニカ王国、南の外郭にて……
「ぶぅ~……本官達がいくら頑張ったところで、後3ヶ月は絶対に渾沌を倒せないのが確定してるであります……」
そこでは四大クランの一角、[機道兵団]の団長を務めるミリ・タリー隊長が不貞腐れていた。
なお、ミリ・タリー隊長は迷彩服を着た華奢な女性アバターを使用していたが、その姿は軍人というより軍人のコスプレをした一般人といった有り様だった。
「う~ん……そうなる気持ちも分かるけど、落ち込んでたって何も始まらないとおじさん思うな~」
「叔父さ……副団長には本官の気持ちなんて分からないでありますよ!」
不貞腐れるミリ・タリー隊長へ宥める様に話しかけたのは、[機道兵団]で副団長を務めるダンディーな中年アバターのプレイヤー、粗4だった。
……実はミリ・タリー隊長の叔父にあたる彼は、プレイヤーの誰よりもミリ・タリー隊長の事を心配していたのだ。
「ハァ~……ほんと団長は分かってないな~」
「んなっ!?……何が分かってないんでありますか!?」
「つまりだよ?……後3ヶ月は、渾沌を放置しておいたって問題はない訳で……おじさん達、遂に渾沌を監視するだけの日々から解放されるって事じゃないか!」
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
粗4が語った理由を聞き、クランメンバー達は歓声を上げた。
何せ、ここ最近はずっと混沌の監視ばかり。
加えて、渾沌は他の厄災と違って何の行動も起こさない訳で……
監視役のプレイヤー達は、ただただ暇を持て余していたのだ。
「……本官のやり方に不満があったんなら、早く言って欲しかったであります……」
「別に駄目って訳じゃないし、このクランのメンバーは団長が好きで集まった人達だ。……勿論、おじさんだってその1人だけどね?」
「……皆、本当に感謝するであります……でも、本官はここに残りたいであります……」
クランメンバーがミリ・タリー隊長の方針に従う理由を改めて自覚しつつも、ミリ・タリー隊長はここを離れるつもりがなかった。
「へぇ、その心は?」
「本官は、やっぱり渾沌との手に汗握るバトルを諦められないのであります……」
「ふ~ん、そっか……おじさんとしちゃ、そろそろ息抜きしたって良いと思ってたんだけど……」
粗4としては、そろそろミリ・タリー隊長に休んで欲しかった。
渾沌から離れ、精一杯ゲームを楽しんで貰いたかった。
……しかし本人がそれを望まないなら、やりたい事を応援し尊重する。
粗4は、そういう男だった。
「ご、ごめんであります……後、皆には来るクラン対抗戦に備えて他クランの調査も頼みたいんでありますが……駄目でありますか?」
「「「「いいえ、まさか!」」」」
「じゃあ、宜しく頼むであります!」
「「「「サー、イエッサー!」」」」
こうして、[機道兵団]は散り散りになって情報収集に勤しみ始めた。
……余談ではあるが、実質的に[機道兵団]を纏め上げているのは副団長の粗4であり、団長であるミリ・タリー隊長は全体の方針を決めるだけのマスコット的ポジションに位置していたのだが……
それを知らないのは、[機道兵団]でミリ・タリー隊長本人だけなのであった……
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(源徳 村雨視点)
「うわぁ……3ヶ月後のクラン対抗戦に向けて、何処のクランもピリピリしとるわ……」
「そうか、やっぱりな……」
あのレイドイベントから1週間……
俺達はというと、今日も今日とて始まりの街でのんびりと過ごしていた。
「ムラザメさん、クラン作りマッスよね!」
「いつになったらクラン作んだよォ?」
「ハ~ッハッハッハ☆!……ボク様がクランの主戦力になってみせよう☆!」
……訂正。
あれからずっと、この3人にクランを作ろうってせがまれてた。
「ってか、俺抜きで作りゃ良いだろ?」
「それは違うじゃないデッスか!」
「そうだそうだァ!」
「ボク様も同じく☆!」
「あ、ウチもや」
「……俺の何がそんなに良いんだ……」
こうやって俺抜きでクラン作れって言っても全くと言って良い程に効果はナシ……
これ、退路はとっくに塞がれてやがるのか?
「ん……主様、元気を出して欲しいでございます……」
「影奇……」
「ん……それはそうと、クランが出来たら某がマスコットポジションいただいても良いでございますか?」
「……お前も俺の敵なんだよなぁ……」
挙げ句の果てに、俺の相棒たる影奇すらクラン推奨派と来やがった……
「ムラザメはん、もう諦めたらどうや?」
「…………あ~もう分かった分かった。……ったく、俺込みでクラン作ってやるよ……」
もう潮時だ。
諦めてクラン作ってやるよ、ったく……
「おおきにやで♪……ところでムラザメはん、いい加減にあの童貞卒業発言についても教えてくれへん?」
「「ブフォ!」」
「ん?……何でエンムスビはんまで吹き出すんや?」
……そう。
俺は未だに、童貞卒業発言について茶を濁し続けている。
……まだ、縁との関係を言う訳にはいかないのだ。
「べ、別に良いだろ!……んな事より、クラン作るならクラン対抗戦について話さねぇか?」
「そ、それが良いと思いマッス!……実際、どう立ち回るのが正解なんデッスかね……」
クラン対抗戦……
敵になるのは、何も四大クランだけじゃない。
フリーの上澄みプレイヤー達が臨時で組むだろう即席クランも、強敵になり得る。
「一応、あれから追加で発表もあったやろ?……霞はんが意識不明になってから3日後に……」
「そうだったな。……確か、1度以上クランから抜けているプレイヤーは、抜けたクランと同盟を組めないんだっけか……」
あのレイドイベントが終わってから3日程度経ってから新たに発表された情報として、1度以上クランから抜けているプレイヤーは、抜けたクランと同盟を組めないというルールがある。
……それがどうイベントに作用するのかは未定だが、あの運営が事前に伝えておくべきだと考えたからには何かあるんだろう……
「せやせや。……それが何を意味するかは知らへんけど、絶対に何かあるやろ?」
「駄目な元凶の霞があんな状態とはいえ、あの運営がわざわざ発表するぐらいだしな……」
普通なら、絶対に当日かギリギリまで言わないって確信がある。
だってのに言うんだから、イベントのゲーム性を左右する何かがあるんだろ。
「ま、その辺はまだ分からんとして……やっぱ同盟組む相手は[王正騎士団]が安牌やろな……」
「あァ、愚弟なら絶対に組んでくれるからなァ!」
「……問題は、副団長のネカマレードさんを始めとした[王正騎士団]のクランメンバー達が受け入れてくれるかどうかだが……」
「そこはまぁ、アーサードはんに頼めば何とかなるやろ!」
……現状、俺達5人のクランが単独で勝てる見込みは微塵もねぇ。
だからこそ、どうせ同盟を組むなら交流のある[王正騎士団]が安牌なんだが……
……そう簡単には行かないんだろうな……
「……で、もし[王正騎士団]と組めたとすれば警戒すべき相手は誰だ?」
「せやな……まず、[機道兵団]やと副団長の粗4はんが要警戒対象や。……ぶっちゃけ団長のミリ・タリー隊長はんはユニークスキルが強い割に制御し切れとらんから警戒に値せんけど、反対に粗4はんはマジでヤバい……」
「[機道兵団]、あんまり戦術が表に出て来にくいから詳しくないんだが……どうヤバいんだ?」
「粗4はん、ユニークスキルはかなり地味なタイプでパッとせんのやけど、素の身体能力で軍属帰りかってぐらいの動きを見せるらしいんよ……」
「……要は、グロサリーヌ様以外が当たったらアウトって訳か……」
素で軍属帰りそのものな動き、か……
……副団長がそれなのに団長がユニークスキル制御し切れてないって、本当なのか?
「んで、次に[黒塗旅団]やけど……ここは団長も副団長もヤバいで……」
「……[黒塗旅団]については戦闘方法も有名だし知ってるぞ?」
「なら詳しくは省くけど……副団長のヴァルメリドはんは暴走機関車、団長のZENOはんは強い上に頭も回る切れ者や……」
「……らしいな」
うん、ここも当たったらマズそうだ……
「更に[猫田森さんファンクラブ]は……」
「説明しなくて良い……あいつ配信者だから、情報は出回ってるだろ?」
「それが全部やないやろうけど……ウチが知っとる範囲もそれだけやしな……後、フリーのプレイヤーにも何人か要警戒対象が……」
「……頭が痛くなって来た……」
3ヶ月後に、そんな魑魅魍魎の巣窟で勝てと?
……無理だろ、絶対……
「ん……主様、頭を撫でた方が良いでございますか?」
「……すまん、頼む……」
ーなでなで……
そうして俺は影奇の頭撫でによって現実逃避をしながら、3ヶ月後のクラン対抗戦に思いを馳せたのだった……
ご読了ありがとうございます。
なお、ムラザメ達のクランは人数的問題により強さが全体で中の下辺りです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




