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36.アーサードは立ち向かう

はい、そこそこ長かった対窮奇レイドイベント編もこの章で終わります。

(鋼村 浅斗視点)


「ふぅ……皆、覚悟と準備は良いかな?……ちなみに、僕はほぼ出来てる」


(わたくし)も出来ていますわ!」


「「「「「総員、どちらも万全です!」」」」」


……僕は、窮奇が見える場所で[王正騎士団]の皆に覚悟と準備の状況を聞いた。


結果は言わずもがな。


……うん、これ以上は野暮だね。


「さて、それじゃあ"ほぼ"のやり残しも早急に片付けようかな?」


ートンッ……


「……ん?……団長、その本は何ですの?」


僕は、インベントリから重厚な本を取り出した。


……これこそ、僕が雲隠れ先で手に入れた新たな戦力だ。


「すぅ……贖罪せよ、【召喚(サモン)・鏖殺天使】!」


ーファ~ン♪……ポンッ!


「キャヒャヒャ♥️……呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん♥️!」


「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」


僕が持っていた本の名は、[【鏖殺天使】の召喚書]。


まあ効果は名前の通り、僕がこの手で葬った鏖殺天使ことリリメアを従魔として召喚出来るという破格なものだ。


とはいえ、だ。


「リリメア、これから君は僕に絶対服従で人殺しもナシだ」


「え~、人を殺せない人生なんてつまんな~い!」


「……その代わり、モンスターや賞金首はその限りじゃないと約束しよう」


「ふ~ん……ま、どうせお兄ちゃんには逆らえないし、大人しく従ってあげる~♥️……キャヒャヒャ♥️」


リリメアは別に、改心していない。


あくまでも召喚書による契約で縛り付けるだけの、危険な相手のままなのだ。


「ふむ、それじゃあ君にナイフを返そう。……報酬として僕が貰っていたんでね」


そう言って、僕はインベントリに入れておいた2本の[血染めのナイフ]をリリメアへと返す。


……うん、これで良し。


「キャヒャヒャ♥️……で、何をさせるつもり♥️?」


「なぁに、簡単な話さ。……窮奇の討伐、その手助けをして欲しいんだ」


「キャヒ……え、無理無理無理!」


「拒否権はないよ。……後、僕だって今度はフルスペックで挑むつもりだ」


ース~ッ……


窮奇の討伐を食い気味に拒否するリリメアをひとまず放置し、僕は持っていた剣を鞘から抜く。


……今回こそは、この剣の真価を発揮させてみせよう。


「キャヒャヒャ……それ、前にも見た……」


「うん、君を殺した剣さ。……ついでに言うと、[神秘の呪宝]の1つでもある」


[神秘の呪宝]……


それは〘厄災のアルケニカ〙のサービス開始時、[ワールドエンド・ユニークモンスター]や[オンリーワン・ユニークモンスター]と並んで発表された要素の1つだった。


しかし、すぐに発見された他2つと異なり、なかなか発見例も上がらなかった[神秘の呪宝]の話題は次第に消えて行った。


……でも、僕みたいな一握りのプレイヤーは隠れて持っていたりする。


「し、しんぴのじゅほう……って、何?」


「知らないなら良いよ。……とにかく、この僕が持っている剣……[聖剣カリバール]は未だに、僕を真の主として認めてはいない」


現時点でもこの剣、その辺の剣なんか比べ物にならないレベルで強いんだけど、本当の強さはそんなものじゃない。


……特別なダンジョンのボスを[王正騎士団]上層部全員で袋叩きにして手に入れた剣だからこそ、1人で打ち勝てなかった僕を未だ認めていないのだ。


「ふ~ん……あっそ」


「君はそれで良いよ……それじゃあ、今から僕達は無限ゾンビ戦法で戦う事になる」


「多分、何度も死にますわね」


「でも、僕達は必ずやり遂げる……そのつもりで行こう!」


「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」


こうしている今も、多くのプレイヤーが窮奇へと特攻して命を散らしている。


……あのプレイヤー達の攻撃だって生半可な攻撃じゃない筈なのに、それが全く効いていない。


「皆、心の奥底では無謀と思っているのかもしれない……けれど、僕はそれが退く理由にはならないと考えている!」


「……団長、それ長くなりますの?」


「え?……あ、ごめんごめん長話はここまでで終わりにするよ……では改めて、総員突撃!」


「「「「「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」」」」」


僕としてはまだ話していたかったけど、ネカマレードこと希人から催促されては仕方ない。


僕は皆に突撃の指示を出し、僕と希人とリリメアが先頭を走る形で突撃を開始した。


「grrrrrrr?」


「どうせ(わたくし)共は窮奇から敵とすら思われてないのでしょう……それでも、諦める気は毛頭ありませんわ!……【羅貫螺旋】ですわ!」


ーギュルギュルギュルルルル!


……こちらから手始めとして撃ち出されたのは希人が持つユニークスキル、【羅貫螺旋】だ。


これはレイピアの先から、全てを貫く螺旋状の光線を放つという技なんだけど……


「grrrrrrr……」


ーぼすん……


「やっぱりクソ程も効きませんわ~!」


……案の定、露程も効かない。


見る限り、窮奇の鱗は将軍竜こと底岩の外皮よりも硬そうだ。


……ここだけ聞くと、かなり無理ゲーっぽい。


「総員、予定通りに左右へ展開!……その後、各々が持てる限りの攻撃を行ってくれ!」


「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


……厳しい。


そんな事は分かっていた筈なのに、今の時点では僕達がとれる手段は多くない。


他のプレイヤー達に期待するのは癪だけど、こればっかりは仕方ない。


「頼むよ?……僕達だけじゃ、限度があってね」


間違っても、勝てないだなんて口にはしない。


ただ、限度があるとボカすだけだ。


……ここからどう転ぶかは、まさに神のみぞ知るってところかな?



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(俯瞰(ふかん)視点)


そうして、アーサードが他プレイヤーに希望を託した直後……


「チッ、今の今までコソコソ隠れてた[王正騎士団]の奴等がゾロゾロと湧いて来やがって……そいつは俺様がリベンジすべき獲物だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


先程、窮奇のブレスで乱打羽と共に消し炭にされたヴァルメリドは、自身を殺した窮奇への対抗心で燃えていた。


しかし、目ぼしい戦力はこれだけにあらず。


「ハ~ッハッハッハ☆!……あれは実に爆発させ甲斐のありそうなドラゴンじゃないか☆!」


戦場に舞い戻ったグロサリーヌもまた、窮奇へと狙いを定めていた。


「しかしながら、今の状態であれを倒すのはボク様でも骨が折れそうだ☆……であるならば、この子に頼ってもバチは当たらないだろう☆……爆笑せよ、【召喚(サモン)・道化竜】☆!」


ーファ~ン♪……ポンッ!


「ピ~ッチャチャチャ!」


そうして自身の力不足を悟ったグロサリーヌは、恐悦討伐の報酬で手に入れた召喚書で恐悦を召喚していた。


「やあやあ、早速で悪いね☆……君の元主(もとあるじ)を倒したいんだけど、手伝ってくれないかい☆?」


「ピチャ?……ピ~ッチャチャチャ!」


「おお、構わないのか☆!……となれば、善は急げで超特急と洒落込もうか☆!」


ータンッ!


「ピ~ッチャチャチャチャチャ!」


恐悦が窮奇討伐の手助けを承諾すると、グロサリーヌは恐悦の背に飛び乗った。


それから……


「さあ行こう☆!……窮奇の真上へ☆!」


「ピ~ッチャチャチャ!」


ーバサッ!バサッ!バサッ!


……恐悦はグロサリーヌを背に乗せたまま飛び、窮奇の真上まで飛んで行った。


対する窮奇は恐悦withグロサリーヌを脅威とすら思っていないのか、地を進む他プレイヤー達のみを見ていた。


それが悪手だと知らずに。


「よし、この辺りで良いだろう☆……恐悦、適当な爆弾を大量にばら蒔いてくれないかい☆?」


「ピ~ッチャチャチャ!」


ーポヨンポヨンポヨン……


そんな窮奇を気にもせず、窮奇の真上へ来たグロサリーヌは恐悦へと大量の爆弾を投下するよう指示を下す……


……だけで終わる筈もなく。


「ハ~ッハッハッハ☆!……芸術は爆発、投下した爆発全てに【クラスターボムズ】を付与だ☆!」


グロサリーヌは投下した爆弾全てに【クラスターボムズ】を付与し、それが落下するのを待った。


そして……


ードカドカドカドッカァァァァァァァァァァン!


……窮奇へと当たった爆弾から順番に爆発、それが他の爆弾へ引火して爆発、更に飛び散った爆弾の一部が更に爆発……という、悪魔の様な連鎖反応を引き起こした。


「grrrrrruuuuuuaaaaaa!?」


「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」


これには流石の窮奇も反応し、それ以上に地上のプレイヤー達も悲鳴を上げた。


そんな地獄絵図を見下ろす形となったグロサリーヌはというと……


「もっとだ☆!……もっと爆弾を投下するんだ☆!」


「ピ~ッチャチャチャ!」


ーポヨンポヨンポヨン……


……地上の地獄絵図なんて何処吹く風。


その後もひたすら爆弾を投下し続け、地獄を維持し続けるのであった……

ご読了ありがとうございます。


グロサリーヌと恐悦、混ぜるな危険です。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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