34.ヴァルメリドはぶん投げる
念のため再度言っておきます、〘厄災のアルケニカ〙はバランスが崩れたクソゲーです。
(鋼村 乱波視点)
「………………………」
「…………………まだか?」
ヴァルメリド、焦らすんじゃねェ。
こういうのはちゃんとしたタイミングがあんだよォ。
「ふゥ……よ~いドンだァ!」
「よっしゃぁ!」
そうして、オレとヴァルメリドは駆け出したァ。
その姿は、まるで戦場を走り抜ける伝令兵を連想させ……
その視線は、ただ目の前の敵だけを射貫いていたァ……
「ガガ……ガ……」
ーボォォォォォォォォォ!
「【不死喧嘩】ァ!……ヴァルメリド、死んでもオレの背後から出るんじゃねぇぞォ!」
「おう、俺様を信じやがれ!」
まず才智が繰り出したのは、灼熱の業火だったァ。
……つっても、この程度ならどうにかならァ!
「温ぃなァァァァァァ!」
ージュゥゥゥゥゥ!……ジュクジュクジュク……
「ひゅ~♪……乱打羽の嬢ちゃん、やるなぁ!」
オレのアバターは業火で焼かれるも、焼けた場所から瞬時に再生していたァ。
ただし、服はその限りじゃねぇがなァ……
「センシティブモザイク、仕事してくれよォ!」
「うおっ!?……俺様の目が確かなら、服が焼け落ちた場所がモザイクになってやがる!」
このゲームには、良い子に見せられない様なエログロにモザイクをかけるセンシティブモザイクって機能が存在してやがる。
これのお陰で、オレの服が焼け落ちた場所にはモザイクがかかってる訳だがァ……
「うォォォォォォォォォォォォォォォ!」
「俺様達、全速前進だなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
業火が何だァ!
その程度で止められるだなんて思うなよォ!
「ガ……ガガ……」
ーバッシャァァァァァァァァァン!
「洪水がナンボのもんじゃァァァァァァ!」
「うおぉぉぉ!……お、俺様だけの力じゃ流されそうだぁぁぁぁぁ!」
次の洪水は、何とか流されねぇ様に踏ん張……
「あ、無理だこれェェェェェェェ!?」
ーズルッ……
「いや流されるんじゃねぶへっ!?」
ードンッ!……バシャバシャ……
やっぱ洪水は無理あったかァ……
けど、流れが弱い場所に辿り着いたぞォ!
「ガガガガガ!」
ーピシピシピシ……ピキィィィィィン!
「あっ……」
「おっ……」
こ、今度は氷漬けかァ……
……………………………………もう死ねやァ。
「ふ……ふ……ふざけんじゃねェェェェェ!」
ーピキピキ……パリィィィィィン!
「お、俺様も……助けろ……」
「分かってらァァァァァァァァ!」
ーゴンッ!ゴンッ!……パリィィィィィン!
「ぷはぁっ……た、助かった……」
オレは自力で氷を割り、ついでにヴァルメリドの氷も割って助け出したァ。
にしても、あァ……
こりゃ確実に駄目だなァ……
走りでの特攻は無謀が過ぎたァ……
……となれば、残る策は1つだァ!
「ヴァルメリド、後は頼んだァ!」
ーガシッ!
「ま、待て待て待て!……何をするかは何となく察せちまったが、最後に1つだけ質問をさせろ!」
「ん?……何だァ?」
「……俺様って、乱打羽の嬢ちゃんから見てタイプだったりするか?」
ハァ?
こいつ、何を言ってんだァ?
「生憎、オレのタイプは年下の雑魚だァ……テメェ、オレより年上で強いだろォ?」
「それは残念。……まあ俺様の方も別にタイプじゃねぇんだが、ここから助かるにはそれでタイプって答えになるしかねぇと踏んだんでだなぁ……」
「テメェは馬鹿なのかァ?……じゃ、次の魔法が来る前に死ねェ!」
ーブンッ!……ヒュ~……
「嬢ちゃん嘘だろぉぉぉぉぉ!?」
オレはヴァルメリドを掴むと、そのまま全力を込めて才智へ向けてぶん投げたァ。
……ヴァルメリド、テメェの勇姿は忘れねぇから、次の策でも練ろうかねェ……
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(ヴァルメリド視点)
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
ヤッベェな乱打羽の嬢ちゃん!
まさか、この俺様をぶん投げるとはなぁ……
「ガガガ……」
「よぉ、宰相竜……俺様のユニークスキル、受けてみやがるかぁ?」
それでも、乱打羽の嬢ちゃんの実力は本物。
ある程度、才智が見える位置まで俺様は飛ばされた。
けど、問題はここからだ。
「ガ~ガガガ……ガガガ……ガ~ガガガ!」
ーブワン……キュルキュルキュルキュルキュル!
「チィッ!……お次はブラックホールかよ、マジふざけんなぁ!」
さっきの同じ順番になってた時点で薄々察してたが、氷漬けの次はブラックホールか……
巻き込まれたら、俺様ですら間違いなく即死だ。
……となると、一か八かに賭けるかぁ……
「ガガガ……」
「よぉ宰相竜、もう俺様を排除したつもりか?……そんじゃあ、その認識は今すぐにでも更新して貰おうか……ってな訳で、俺様渾身の【魔喰血斧】を食らいやがれ!」
ーブンッ!……ぐるぐるぐる……
俺様はハルバードを宰相竜に向けてぶん投げ、同時にユニークスキルを発動した。
さて、ここで俺様のユニークスキルである【魔喰血斧】を説明すると、それはまあ使い勝手が難しいスキルだ。
その効果は、直近1週間以内に倒したモンスターの個体数×100万ダメージって仕様の破格な攻撃を放てるってもんだ。
ただし、クールタイムは発動から丸々1週間……つまり7日に1回放てる大技って事になる。
この制約が1番キツい。
ま、それはともかく……
……俺様はこの1週間以内に、西の戦場で何十万って数のゾンビやスケルトンなんかのアンデットモンスターの軍勢を葬ってる。
要するに、だ。
「そのぶん投げたハルバードは、最低でも何千億ってダメージを叩き出す"暴"の塊だぁ!……そんで、その効果は何かに着弾するまで続くし、技で相殺しようにも何千億ってダメージがねぇと相殺し切れねぇ!」
俺様はブラックホールに吸い込まれてる真っ最中だが、ぶん投げたハルバードはブラックホールの効果範囲から抜け出したらしい。
そのまま一直線に、宰相竜めがけて回転しながら飛んで行く。
「ガガガ……ガガガ!」
ーヒュン!ヒュン!ヒュン!
宰相竜は逃げるのが嫌なのか、負けじと岩石を飛ばしてハルバードを落とそうとするが……
「いでででで……甘ぇな!」
ーぐるぐるぐる……ガンッ!ガンッ!ガンッ!
何千億ものダメージの塊であるハルバードを落とすには、ちょいと役者不足ってもんだ。
……それはそうと、俺様はもう死ぬな……
「ガガガ……」
「じゃ、俺様は死ぬんで後はリスポーン先で確認させて貰うな?」
ーキラン……
「ガガガ!?」
こうして、俺様は死んでリスポーンした。
だが、それでもハルバードは戦場に残存したままだった……
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(俯瞰視点)
「ガガガ……」
"全知の宰相竜 才智"に搭載されていたAIは、一瞬の内に何度も逡巡していた。
ここはハルバードを避けるために逃げるべきか、それとも魔法で撃ち落とすべきか……
この問いに才智は後者を選び……自身の命運がかかった2択を間違える事となる。
ーぐるぐるぐる……ガンッ!ガンッ!ガンッ!
窮奇の忠臣としてのプライドが故に、自身の逃げを許さなかった結果……
才智は、逃げる機会を永遠に失った。
「ガガガ!?」
ーぐるぐるぐる……ザシュッ!
「ガギャァァァァァァァァ!?」
魔法をいくら撃とうと止まらなかったハルバードは、才智の首下を大きく切り裂いた。
しかし……
「ガヒュ……ガヒュ……」
魔法を撃っていた時にいくらか勢いが殺され、即死だけは避ける事に成功したのだ。
……ただし、ダメージを受けた直後の一瞬で晒した隙は大きかった。
「ひゃっはぁぁぁぁぁぁぁ!」
「死ねやこのクソボスがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「勝ち確わっしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!」
「漁夫の利ばんざぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」
「ガッ……ガヒュ……」
魔法を撃つ余力を失い、魔法攻撃を途絶えさせた一瞬で、数多くの上澄みプレイヤーが押し寄せたのだ。
彼等は総HP減少の通知が流れるよりも早くに才智へと殺到し、残りHPがミリ単位だった才智を思う存分タコ殴りにした。
ーピロリン♪
……やがて、イベントエリアにたった1通の通知が流れた。
その気になる内容は……
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[全知の宰相竜 才智が討伐されました]
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……という、押し寄せたプレイヤー達によって才智の討伐が成されたという報告だけなのであった……
ご読了ありがとうございます。
ヴァルメリドのユニークスキル、クールタイムの長さに見合った?破格の仕様です。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




