19.窮奇は進軍する
レイドイベント編、始まります。
(俯瞰視点)
リリメア討伐から1週間後、イベント開幕直前……
「ハァ……ハァ……この期に及んでもなお、団長は帰って来ねぇのか!?」
「無駄ですわよ!……あの馬鹿は、イベントが始まるまで実力を温存する事にしましたわ!」
「「「「「なっ!?」」」」」
「……そして、私もそれに賛成しましたわ!」
「「「「「ハァ!?」」」」」
未だに帰還しないアーサードへと怒りを滲ませる団員に対し、ネカマレードは自身も帰還しない事へ賛成したと語った。
「……恐らく、イベントが始まるまで窮奇を倒す手段は存在しませんわ……だからこそ、ここは団長を温存するという手段をとりましたわ!」
「ふ、副団長……」
「ええ、これは負け戦……されど、可能な限り相手を削るための負け戦ですわ!」
「ふ、副団長!」
ネカマレードは分かっていた。
ここでいくら頑張ろうが、あの駄目ゲー量産女がイベント開始前にレイドボスを倒せる様に作っている訳がないと。
……それでも尚、彼は残る事を選んだ。
最高戦力の精神状態を、ベストコンディションにした上で戦いに臨むために……
そして、無情にもその時はやって来た。
『パンパカパ~ン!……これより大規模レイドイベント、〘対厄災防衛戦~悪逆の暴君竜 窮奇を討て~〙の開始だヨ~!……皆、拍手~♪』
そう告げるラビリーの声が、辺りに響き渡る。
……ああ、間に合わなかった……
そんな考えが、[王正騎士団]全員の脳裏によぎる。
彼・彼女等が窮奇の軍勢と戦っていた期間は3ヶ月もなく、とても短い。
……にも関わらず、全員が窮奇を倒せなかった事への悔しさを抱えていた。
しかし、悔しがっている暇もない。
「グォォォォォォォォォ!」
ーピロリン♪
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[オンリーワン・ユニークモンスターが出現]
個体名:猛攻の将軍竜 底岩
種族名:アースドラゴン変異個体
個体数:1匹
レベル:6000
備考:窮奇に仕える4重臣の一角。
完璧な攻防を揃えた無敵の将軍。
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高い実力を誇る、無敵の将軍が現れた。
「ガガガ……ガガ……」
ーピロリン♪
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[オンリーワン・ユニークモンスターが出現]
個体名:全知の宰相竜 才智
種族名:マジックドラゴン変異個体
個体数:1匹
レベル:6000
備考:窮奇に仕える4重臣の一角。
あらゆる魔術を網羅した無敵の宰相。
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魔術を知り尽くした、無敵の宰相が現れた。
「ピ~ッチャチャチャ!」
ーピロリン♪
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[オンリーワン・ユニークモンスターが出現]
個体名:爆笑の道化竜 恐悦
種族名:ワイバーン変異個体
個体数:1匹
レベル:6000
備考:窮奇に仕える4重臣の一角。
暴君すらも笑わせる無敵の道化師。
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暴君すら笑わせる、無敵の道化師が現れた。
「シュゥゥゥ~ッ……」
ーピロリン♪
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[オンリーワン・ユニークモンスターが出現]
個体名:隠密の暗殺竜 影鰐
種族名:ウォータードラゴン変異個体
個体数:1匹
レベル:6000
備考:窮奇に仕える4重臣の一角。
静かに影を泳ぐ無敵の暗殺者。
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影を泳いで標的を消す、無敵の暗殺者が現れた。
将軍、宰相、道化師、暗殺者……
この4匹からなる窮奇の重臣が集結し、窮奇へと頭を垂れる。
しかし、当の窮奇は4匹を一瞥すらせず……
「grrrrrrrrrrrrrrrrrrrraaaaaaaaaaaaaaa!」
ーゴゴゴゴゴッ……
……辺り一面に重圧を放ち、竜の軍勢へと命令を下した。
「グォォォォォォォォォ!」
「ガガガ!」
「ピ~ッチャチャチャ!」
「シュゥゥゥ~ッ……」
すると、先程まで頭を垂れていた重臣達が軍勢の先頭に立ち、進軍を開始したのだ。
……ただし、この時を待っていたのは竜だけではなかった。
「よっしゃ!……ここから先は騎士団以外も参加OKだ!」
「待ちくたびれたぜ!」
「早い者勝ちだぞ!」
[王正騎士団]以外のプレイヤー達もまた、この時を待ちわびていた。
しかも、ただのプレイヤーだけではない。
「ふぅ……僕のせいで皆には苦労をかけたから、出て行きづらいよ……」
「愚弟の自業自得だなァ!」
「乱打羽はん、いくら正論でも言い方ってもんがあるやろうに……」
「どうして俺達がこんな最前線に……」
「ゆ、夢みたいデッス!」
「ハ~ッハッハッハ☆!……早い者勝ち、か☆!」
アーサードと愉快な仲間達もまた、この戦場とやって来ていた……
……そうして集まった、ドラゴンとプレイヤー。
プレイヤーは四大クランの残り3つこそ不参加を貫いたが、他の中堅プレイヤーはこぞって参加した。
対するドラゴンも、戦力としては不足なし。
こうして、厄災の一角を落とすための戦いが幕を開けたのだった……
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(数時間前、源徳 村雨視点)
「つう訳で、ここに居る6人で[竜の都]まで行くぞォ?」
「……いや何で?」
あれ、おかしいな?
俺達って、お世辞にも攻略最前線に行ける様なプレイヤーじゃねぇ筈なんだが……
なのに、何故か乱打羽さんから提案されたのは攻略最前線の都市へ行くという無謀とも言うべきもの。
……これ、夢だっけか?
「何でも何もねェ!……テメェ等だって、今日から[竜の都 ドラゴネリア]で大規模レイドイベントが始まるのは知ってんだろォ?」
「ああ、俺達には縁のねぇ攻略最前線クラン様専用みてぇなイベントだろ?」
「……エンムスビ、グロサリーヌ、テメェ等2人もムラザメと同意見かァ?」
「まあ、私達じゃ厳しいのが現実デッスし……」
「悔しいけど、スルー推奨だろうね☆」
俺じゃ話にならねぇと踏んだのか、乱打羽さんはエンムスビとグロサリーヌへ話を振るが……
既に、2人は現実を思い知っている。
こんな無謀な案には乗らねぇよ。
そう、思っていたら……
「だから行っただろ?……ムラザメさん達は僕達と違って、攻略最前線の戦場で戦える様なプレイヤーじゃないって。……というか、本音を言うと姉さんですら厳しいからね!?」
突如としてやって来たアーサードさんが、俺達の側に付いて文句を言ってくれたのだ。
よし、そのまま言ってやれ!
「愚弟かァ……んな文句は良いから、頼んでた件は遂行したのかァ?」
「ハァ……一応、ちゃんと連れて来たよ」
ありゃ?
文句はもう終わりか……
って、そういやアーサードさんの横に誰か立ってるな?
「あ、乱打羽はん!……こないだはホンマごめんやで~?」
「それは気にしてねェ!……それより、今回はどうだァ?」
「今回?……そんな心配せんでも今回のウチは結構ツキがあるさかい、ばっちり役に立てるで~♪」
「おォ!……それはありがてぇなァ!」
その人はエセ関西弁に裏切りそうな糸目、金魚が描かれた着流しが特徴的な女性プレイヤーだった。
……にしても、ツキってどういう事だ?
「ああ、僕から紹介するね。……この人は賽子丁子さんって名前のプレイヤーで、姉さんにとっては古くからのリアルでの友人にあたる人なんだ」
「せやで~。……ちなみにジョブは遊び人、持っとるユニークスキルは【丁半賭博】っちゅうんや!」
「加えてこいつ、昔はオレが喧嘩する度に勝敗を賭けた賭博大会を開いてたレベルで生粋の博徒だったんだよなァ~」
……えっと、なるほど……
つまり、ギャンブル狂いな遊び人の方?
「も~、昔の話に決まっとるやん!……今はそこまでやってへんよ!」
「あ、そう……で、何で連れて来た?」
「……乱打羽はん、また何も説明してへんの?」
「後で良いだろォ?」
「ハァ~……もうあかん、乱打羽はんは説明を面倒臭がり過ぎやねん!」
おっと?
賽子丁子さん、もしかしなくても乱打羽さんに比べたら常識人寄りなのか?
「……あ、ムラザメさん達への説明は僕からしておこうと思ってるんだけど、どうする?」
「頼む……ちょっと、話が理解出来てねぇんだ」
何はともあれ。
……そうして俺はアーサードさんから説明を受けたのだが、聞けば聞く程に訳が分からなくなった。
いやだって、何をどう考えたら俺達を最前線の戦力に起用しようだなんて考えるんだよ!
もう、訳が分からねぇ……
ご読了ありがとうございます。
基本的に、主人公パーティーはこの6人からアーサードを引いた5人で回す予定です。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




