1.ゲームの始まり
……うん、私は何をトチ狂って新作なんて書き始めたんでしょうね……
(俯瞰視点)
これは、科学が超発展した近未来世界での出来事。
車が空を飛び、あちこちでホログラムによる広告が垂れ流される……
そんなSFチックな世界において、未だ人類が叶えられずに居た夢があった。
……その夢とは、仮想現実。
俗に言うVRMMOの世界である。
「う~ん、やっぱり今回のも作り物感が拭えないな……」
「夢は夢のまま、ってか?」
一応、この世界でも限りなく現実に近いクオリティのVRMMOは幾つも開発されていた。
しかし、その全てに必ずと言って良い程作り物感が付き纏っていた。
「……やっぱり、実現は不可能だったんだ」
「さらば、"もう1つの現実"……」
民衆は、かつて自分達の先達が夢見た仮想現実に見切りを付け始めていた。
……そんな時、とある企業が1つのゲームを発表した。
『来年夏、源徳ゲームズより発売されるのはこちら!……〘厄災のアルケニカ〙というVRMMOです!』
この国において高い影響力を持つと言われる源徳一族、その内の1人が経営するゲーム会社が新作VRMMOの発売を発表したのだ。
「おい聞いたか、例の新作……」
「勿論だ!……何だあのクオリティ、現実かと思ったぞ!」
「まあ待て。……まだCMが発表されただけだから、実物は違う可能性だって……」
その新作発表に人々は歓喜し、熱狂の渦に飲み込まれた。
……が、しばらくすると1つの不安事項が浮かび上がって来た。
「おいおい聞いたか?……例の新作、開発担当はまさかの源徳 霞が主導してるらしいぞ」
「うげっ……よりにもよってあの駄作ゲー量産女かよ!」
その不安事項とは、主となる開発担当の存在だった。
源徳 霞……
彼女はゲーマー達の間で忌避される、最悪のゲームクリエイターだったのだ。
「手掛けたゲームは数知れず、されどもその全てがゲームバランス滅茶苦茶になって崩壊していったとかいう伝説のゲームクリエイター……」
「彼女の作るゲームのステータスに、各パラメーターの数値は存在しない……何故なら、細かい数値を決めるのを面倒臭がっているから……」
「最終的にはインフレしまくるんだっけ?」
「悲報、〘厄災のアルケニカ〙終わる」
源徳 霞が開発の担当だと聞いた民衆は、皆揃って絶望した。
……が、次第に絶望する者達へ反発する層も現れ始める。
「いいや、あの現実そのものなグラフィック見たろ?……見た感じデータの最適化もバッチリ出来てそうだし、評価は発売されてから判断しろよ」
「確かにカクついてないな。……これは希望が持てるかもしれない!」
「いやいやいや、そうは言うが霞の作品が大成功した事なんてこれまで1度も……」
「評価は発売されてから決めましょうよ!」
「メシウマwww」
結局、〘厄災のアルケニカ〙に関する議論は混沌を極めた。
そして、時は流れ……
……〘厄災のアルケニカ〙発売日。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「凄ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「どっからどう見ても現実世界みてぇな中世風世界じゃねぇか!」
「しかもカクつかねぇしスタックもしねぇ!……バグも今のところは見つからねぇぞ!」
「ハァ!?……普通、このレベルの高クオリティなら現段階でバグの1つや2つ見つかってる頃合いだろ!?」
〘厄災のアルケニカ〙を購入し、ログインし始めたプレイヤー達はまたもや熱狂の渦に飲み込まれていた。
何せ、現実そのものな高クオリティに反してバグが全く発生しないのだ。
当然ながら信じていた側は歓喜した。
……だが、これまた全員が熱狂していた訳でもなかった。
「……けど、ステータスは五角形のグラフを軽く操作するだけだったよな?」
「数値での割り振りを意地でもしない辺り、マジで細かい調整する気0なんだな……」
「今更だろうよ。……私は寧ろ、まだ何か爆弾が眠ってるんじゃないかと疑ってさえいるからな?」
「霞女史に対する負の信頼が高いな……」
ステータスは五角形のグラフを操作するだけで数値の割り振りはなく、加えて数々の前科から爆弾が眠ってる可能性を指摘する者すら居た。
……と、そんなタイミングの出来事だった。
ーザザザ……
『んっんっ……あ~テステス……よし、レディースアンドジェントルメン!……吾輩のゲームにログインしていただき、誠にありがたいのだよ!』
「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」
突如として上空に、青いホログラムで形作られた人影が現れたのだ。
『ふむ、どうもどうも。……吾輩は源徳 霞。……このゲームの開発者にして、この国屈指のエンジニアなのだよ!』
「よくもまあ、ぬけぬけと……」
「今まで沢山のゲームをサ終させておいて言う台詞じゃないだろ!」
『煩いのだよ……とはいえ、君達の言う事にも一理あるとは思ってるのだよ?』
「「「「「「……それ嘘だろ!」」」」」」
当然、霞に対するプレイヤーの認識はあまり良くない。
いくら取り繕っても、彼女はゲーム運営に向いている人材ではなかったからだ。
……それでも、霞は言葉を続け……
『コホン……さて、お楽しみのところ悪いが、君達にゲームの説明をしようと思ったのだよ……ああ、別にデスゲームの開催を宣言するとかではないから安心して欲しいのだよ』
「この演出でデスゲームじゃない事あるんだな?」
『そりゃあるとも。……そもそも吾輩としては、ゲームは何度も死んだ上で挑戦してナンボのものだと思ってるのだよ!』
「それはそれで偏ってんな……」
そんなこんなで霞はプレイヤーと軽口を交わしながらも、言葉を続ける。
『ふむ、それではこのゲームにおける吾輩秘蔵の要素を告げていくのだよ!……まず、君達が冒険を繰り広げるこのアルケニカ王国外郭の四方に君臨する厄災、[ワールドエンド・ユニークモンスター]の討伐がメインストーリーになるのだよ!』
「「「「「「お、おぉ……」」」」」」
『また、これの他にも1体ずつしか存在しない特別なクエストモンスター、[オンリーワン・ユニークモンスター]も星の数程存在してるから、じゃんじゃん倒して欲しいのだよ!』
「「「「「「は、はぁ……」」」」」」
『そして最後に[神秘の呪宝]!……手に入ればチートクラスの実力を得られるインフレ武器で、これまた星の数程用意してるから探して欲しいのだよ!』
「「「「「「え、えぇ……」」」」」」
霞により次々と発表されるゲームの要素。
……これを聞いたプレイヤーは、ひたすら困惑していた。
"自分達は何を聞かされているのか?"
"この女、それをわざわざこんな形で言うか?"
"もっとマシなやり方あったろ?"
そんな考えがプレイヤー達の総意になりかけた、その時であった。
『ちょちょちょ!……霞サン、いったい全体何やってくれちゃってんのヨ!』
『おっと、ラビリーか……どうもその言い方だと、吾輩のやり方がマズかったかの様なのだよ』
『……普通にマズかったのヨ』
突如として、何者かが霞の通信に割り込んで来たのだ。
「ん?……誰だ?」
「別の開発者か?」
「内部統制すらマトモに出来てないのかよ……」
プレイヤー達はもう、半ば絶望しかかっていた。
『あ~もう絶望しないで欲しいヨ!……あ、自己紹介しておくと、アテシはこのゲームに使われてるLabyrinth-systemのメインAI、ラビリーだヨ!』
『ふむ、彼女のお陰でこのゲームはゲームたり得ていると思って欲しいのだよ』
『今それ言うかヨ!……あ、プレイヤーの皆さんが今聞いた事は改めて報告するから、今回はこれで失礼するヨ!』
『あ、ちょっと待つのだよラビリー……あ、いだだだだだだマジで痛……』
ープツン!
「「「「「「「「「……は?」」」」」」」」」
この時、プレイヤー全員の思考は1つに纏まった。
"何だったんだ、これ?"
……なお、それから数時間後に霞の発言が分かりやすく纏められた通知がプレイヤー全員に届いた事により、このゲームは早くもサービス開始以降初の炎上をかます事になる。
それは後に、このクソとも神とも言いがたいゲームを分かりやすく象徴する炎上だと評される事になるのだが……それはまた、別のお話。
ご読了ありがとうございます。
主人公は次回から登場します。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




