2 試験
魔法とは別に超能力が存在することが判明してからおよそ30年。
つまり、つい10年前くらいの話である。
イタリアの魔法研究者、ドナテッロ・カッサーノによって超能力と魔法、両方使える人物の存在が確認された。
その後、世界各国が躍起になって探し回ったが、そんな人物はこれまでに3名しか見つかっていない。
それが、去年偶然にも、それが俺にも該当していることが判明した。
ちなみに、ご本人の感想としては、
「えっ?マジで。それで、どうなるの?」
である。正直どうでもよかった。
だが、政府としてはそうはいかなかったようである。
時は戻って現在。
「それでは、試させてもらっていいかしら?」
柊生徒会長がそう言った瞬間、背後から銃弾が飛んできた。それが頬をかすめて日本海を一望できる窓ガラスにクモの巣模様を作る。
「え・・・」
それはどういうことですか?と訊ねる前に背後のドアが勢いよく開いた。
反射的に壁際に移動する。
何か来る!
目には見えない“何か”が自分の目の前にいることが分かった。
足を思いっきり蹴り出すと、間違いなく手ごたえ、いや足応えがあった。その証拠に俺の数メートル先の絨毯が不自然にしわを作った。
“脱出”
瞬時に頭がそれが一番と判断した。
開きっぱなしのドアから出ようとして、ドアの陰に2人潜んでいることがわかった。そのため手近にあった何かのトロフィーを思いっきり投げた。
「フン!」
その飛んでいったトロフィーを俺と思ったのか大男が斧を振り下ろす。
その時、非常ベルが鳴った。
俺は大男の頭を踏んずけて、廊下に出た。大男の後ろで待ち構えていた女子は、突然の非常ベルに驚いているようだ。そのせいで突然飛び出した俺に反応できなかった。
俺は廊下を走った。
校内は俺の予想とは反対に、あまりパニックになっていなかった。
正直、非常ベルでパニックになってそれに乗じて脱出する気満々だった。
「お~お~、驚きだねぇ~。ここまで来た新入生は初めてだよ~」
制服をだらしなく着た女子が階段前で待ち構えていた。
階段前に人がいるのはわかっていたが、敵が多すぎないか!?
そもそも、柊生徒会長、いや、いったい誰が俺を殺そうとしているのだろうか?まったく見当がつかない。
「考え事している暇はないぞ!」
女子が木刀をもってこちらへ“飛んで”きた。しかも、尋常じゃない速度だ。
「あ、まず・・・」
そう思ったときには超高速で飛ぶ女子の真横の壁が吹っ飛び、廊下ごと女子はどこかへ飛んでいった。
「やっべ・・・。あれじゃあ生きてないな。」
俺は崩れ去った廊下の前で女子が飛んでいったであろう方向を見ながら言った。
廊下にあった消火栓のホースを使って地上に降りる。こういうことは友人のおかげで色々と経験していたので、慣れていた。今さらながら友人に感謝。
駐車場に駐めてあったプラドに戻ると、柊生徒会長が待っていた。
「さすがですね。八島渡君。ここまで逃げてきた新入生は初めてです。」
「そりゃお褒めの言葉をどうも。それで、あんたも俺を殺そうとするのかい?」
「さて、どうでしょう?」
もう意味が分からなくて泣きたくなってきた。
すでに体力は尽きている。
周りにはまだ多数の敵と思しき人がいるのが分かる。
これを突破するには、今以上の混乱を起こさなければならない。
「では、」
柊生徒会長が何かしようとしたとき、突然プラドがクラクションを鳴らしながら走り出した。
俺はそのプラドの運転席に飛び乗った瞬間、気を失った。




