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第1話:摩耗する日常、あるいは砂場の少女

『ユーゲリオン』へようこそ。


これは、異世界に飛ばされる前の男の物語です。

転生でも、チートでも、無双でもありません。


ただ、一人の疲れ果てた人間の、

小さくて大切な一夜の物語。


どうぞ、ゆっくりお読みください。

— Tuttimi

彼のブースだけが、まだ明かりがついていた。

「相沢、お先」と、ドアのところで声がした。

書類に埋もれながら、彼は「お疲れ様です」と短く呟いた。神経質に時計をちらりと見る。あと三十分しかなかった。

今出なければ、終電に間に合わなくなる。彼の人生は、職場と小さなアパートを往復するだけだった。 それは、よく知った道を行って帰るだけの、終わりのない旅であった。

処理を終えた書類をトレイに入れ、残りは机の上に残した。『明日やろう』と、彼は心の中で思った。 従業員のほとんどが夜遅くまで残るため、会社の正面玄関の鍵は各自に与えられていた。

しかし、その他の部屋は上司が帰宅する前に念入りに施錠されていた。時々、相沢はどうしてさっさと辞めてしまわないのかと自問した。

なぜこの仕事を投げ出さないのか。そのたびに彼は、契約書のことを思い出した。破滅的な違約金なしに契約を解除するには、少なくともあと一年は働かなければならない仕組みになっていたのだ。

「うんざりだ」と彼は一人ごちて、深呼吸をした。

椅子の背もたれからコートを手に取り、デスクのスタンドを消して、出口へと向かった。

もう一度周囲を見渡したが、彼の目を引くものは何もなかった。ドアを開けた。

敷居に立ち、誰もいないブースに最後の一瞥を投げかけると、メインの照明を消して外に出た。

ポケットから鍵の束を取り出した。金属の上を視線をさまよわせる必要さえなかった。

指はすぐに目的の、使い古されたオフィスの鍵に触れた。

鍵は滑らかに差し込まれたが、すぐに抵抗に遭った。金属同士が嫌がるように擦れ合った。

相沢がそれを一ミリ引き戻し、軽く動かすと、ようやくカチャリという小さな音とともに機構が従った。

『鍵穴でさえうんざりしているのか』と、彼は苦い皮肉を込めて心の中で思った。

外に出ると、冷たい空気が顔を打った。時計に目をやると、焦りが現実のものとなった。 終電まであと二十分。

ポケットから煙草の箱を取り出し、軽く開いた。残り三本。

コートの反対側のポケットに手を入れたが、マッチは見つからなかった。

他のポケットを神経質に探り、ようやくズボンの中でそれを見つけた。

一本を取り出し、滑らかな動作で側面に擦りつけると、小さな炎を煙草の先端に近づけた。

火を吹き消し、マッチを捨てた。

見上げると、夜空にはいくつかの青白い星が彼を出迎えていた。

都会の喧騒の残滓が空気に漂っていたが、それは夜の蝉の音色に負けていた。

彼の勤める会社は東京の郊外にあり、彼自身は家賃がはるかに安い、都心から遠く離れたアパートを借りていた。

活気あふれる都心に出ることはめったになく、彼は絶え間なく「往復」という単調なダンスを踊り続けていた。

煙を肺の奥深くへと吸い込んだ。まるで目に見えない重荷を一緒に吹き飛ばそうとするかのように、恭しくゆっくりと吐き出した。

しかしその重荷は、灰色の煙とは違って、そこにとどまったままだった。彼は煙草を根元まで吸い終え、駅へ向かって歩き出した。

自分の足取りは、本当に望む場所へと続いているのか、本当に望む場所へと続いているのか、それともただループの中に閉じ込められているだけなのかと、彼はよく考えた。

相沢は長い間、何か根本的なものを見落としているという痛切な予感に苛まれていた。そしてその不安の震源地は、繰り返し見る夢だった。

一つの夢は、その内容によっていくらでも解釈できる。

しかし、まるで注意を引こうとするかのように夜ごと繰り返される夢は、無視しがたい現象となる。

あいにく、相沢はこの手の謎解きが得意ではなかった。

しばらく前から、砂場で遊ぶ少女の姿が彼を悩ませていた。

見覚えはなかったが、それでもなぜか、不思議と親しみを感じる存在に思えた。

彼女が彼と関わることは決してなかった。彼を呼ぶことも、彼を見ることもなかった。

彼はその小さな世界における、ただの無言の観察者にすぎなかった。背景は様々だったが、モチーフはいつも同じだった。

それが何を意味するのかわからなかった。この夢が理解できなかった。彼の頭には、次々と無益な仮説が浮かんだ。忘れ去られた幼なじみだろうか。

いまだに燻っている感情?あるいは単に、人生がまだループではなかった時代への郷愁だろうか。

どの答えも彼に救いをもたらさなかった。ただ、ますます途方に暮れるばかりだった。

突然、プラットホームでの彼の物思いは、激しく息の詰まるような咳によって遮られた。発作は非常に激しく、相沢は肺を吐き出しそうな感覚に陥りながら、体を二つに折り曲げた。

「大丈夫ですか?」と、近くに立っていた男の穏やかな声が聞こえた。

彼はこのさりげない気遣いに驚いた。 彼の麻痺した単調な世界において、ありふれた人間の思いやりは異質なものであり、ほとんど忘れ去られたものだった。

ほんの一瞬、彼は感謝に似た何か、凍りついた心に刺さるような温かさを感じた。しかしその直後、羞恥心の波が彼を飲み込んだ。

どう反応していいかわからず、彼は狼狽した。目をそらし、わずかに頷くだけで、この気まずい時間がこれ以上続く前に、咳の発作が治まることをひそかに願った。

幸いなことに、発作は現れた時と同じくらい素早く弱まった。彼は駅に立っており、彼と一緒にいた何人かの人々が、今は横目で彼を盗み見ていた。

スピーカーから接近する電車の案内放送が響いたが、相沢は聞いてさえいなかった。

彼の視線はすでに、暗闇の中の二つの光の点に釘付けになっていた。それはゆっくりと形を成しながら、大きくなっていった。

やがて、ブレーキをかける電車の金切り声が、彼を完全にトランス状態から引き戻した。

いつものように、彼は車両の後方に座った。家までは五駅と、そこからの短い徒歩の距離だった。

煙草を買うために、コンビニに寄らなければならないことを思い出した。

アパートに何か食べるものがあったかどうかも定かではなかった。

車窓の外の光は、小さな火花のように暗闇の中に溶けていった。

最近、彼は考えをまとめることができなかった。まるで自分の体から、一滴また一滴と生命力が抜け出していくような、居心地の悪さを感じていた。

思考はどこか遠くへ逃避していた。気がつけば、夢に現れるあの少女のもとへ再び戻ってしまっていた。

彼女が誰なのか、なぜこれほど執拗に彼の注意を引こうとするのか、依然として見当もつかなかった。 現実に引き戻されると、彼は少し混乱した様子で神経質に辺りを見回した。窓の外に、見慣れた景色が目に入った。

家まではあと二駅だった。彼はプラスチックの座席から立ち上がり、ドアの方へ歩み寄った。

スピーカーから、次の停車駅を告げるメロディアスなアナウンスが流れた。相沢は虚ろな目で、ドアの小さな窓ガラス越しに外を見つめていた。

電車が減速し始め、開閉ボタンが緑色に点灯した。彼はそれを押した。

シューという音とともに扉が左右に開き、刺すような空気が車内に流れ込んだ。寒さが彼を襲った。

都心を離れると、体感温度はずっと低かった。

彼以外にプラットホームに降り立ったのは、もう一人だけだった。相沢はいつも電車の一番後ろの席を選んでいた。そうすれば、公園のすぐそばにある裏口から、素早く駅を抜け出すことができるからだ。

彼は木々の間の狭い小道を歩いた。線路の向こう側には、ただ暗く、眠りについた野原が広がっていた。

どこからともなく、蝉の単調な鳴き声が聞こえてきた。彼は少し立ち止まった。まるで魔法のような虫の音にだけ破られるこの夜の静寂の中に、

彼は一日の中で唯一、真の安らぎのひとときを見出していた。 濃くなる闇にもかかわらず、生命は至る所で脈打っていた。草むらの中で、重い空気の中で、そして、彼自身の中にも。彼自身はまだそのことに気づいていなかったが。

帰り道、彼はいつものコンビニに立ち寄った。

「あ、相沢さん!いつものですか?」と、若者の明るい声が響いた。「こんばんは」と彼は答えた。

レジには二十歳くらいの青年が立っていた。相沢は仕事帰りに買い物をする際、よく彼を見かけていた。

彼はかなり痩せていて色白で、長い前髪が絶えず目にかかっていた。

店舗のロゴ入りシャツに、濃い色のジーンズを穿いていた。

「ああ、いつもの。それと、赤くてきついやつを頼む」と彼は言った。「かしこまりました」と、レジ係は笑顔で応じた。

「特売品は何だ?」と、相沢は棚をざっと見渡しながら尋ねた。「今週は魚の缶詰ですね。」

「二つ買うとお得になっています」と、青年はレジのキーを勢いよく叩きながら答えた。「わかった、じゃあ二缶追加してくれ」

彼はコートのポケットから財布を取り出し、支払いの準備をした。

「いつものと、お煙草、それに缶詰が二つで……」と、店員は小声で呟いた。

「お会計、四千三百九十円になります。現金ですか、それともカードで?」「現金で」と相沢は言い、紙幣を差し出した。

「五千円からお預かりします……お釣りが六百十円……」青年は小銭を数えながら呟き続けた。「はい、お釣りと商品です」

カサカサと音を立てるレジ袋を彼に手渡した。相沢はそれを受け取ろうとしたが、彼の手は突然宙で止まった。

彼は躊躇し、目の前の空間を虚ろに見つめていた。

「どうかしましたか?」と、青年は心配そうに尋ねた。「君は、定期的に繰り返される夢を見たことがあるか?」

その質問は、生々しく、全く不意に彼の口からこぼれ落ちた。完全な理解など期待せず、彼は虚ろな目で店員を見つめた。

しかし、見知らぬ他人の何気ない考えが、自分では見つけられないヒントや鍵になるかもしれないという、不合理な希望を抱いていた。

「いえ……」と、青年はゆっくりと答え、軽く首を横に振った。

その時、ドアのセンサーが陽気に鳴った。別の客が店に入ってきたのだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


相沢の「往復」の日々、いかがでしたでしょうか。

次の話では、彼の夜がさらに深まっていきます。


第1話のテーマ曲はこちら:

[https://youtu.be/x3b3HdrGK7E]


続きをお楽しみに。

— Tuttimi

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