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66話 地下室に眠る不穏 炎鬼繋響(えんきけいきょう)

「おぉー・・・、ほんとーに地下通路があるとはっ・・・」

「なぁー? さっき偶々隠されていたドア見つけたんだよ」


第四寮の地下へ繋がる階段を降りているカズセと柊真、そして秋司とリスタ。

今四人は偶然柊真が見つけた地下通路への入り口を通り、階段を下りていた。

そう、いつも通りの探検だ。


「はわーぁ。まさか寮に地下があるとはねー。フィーべって地下が好きなのかー?」

「あはは・・・。確かによく地下に行くよね・・・。課外学習の時とか」


リスタはあくびを浮かべながら、ゆっくりと階段を下りている。

秋司はリスタの横に並んで階段を下りている。

しかし、秋司はワクワクしている。

地下通路を通っていると、所々部屋が視界に入ってくる。

四人はいくつかの部屋に入っては出てを繰り返していた。

部屋には特に何もない。


「んんーっ・・・。何もないね・・・。地下とかにはお宝があるんじゃないのー・・・」

「ったく、それはどの絵本のお話だー? ドロドロ迷子ー」


リスタはお宝を探しているが、何も見つからず、目を薄くしていた。

そんなリスタに少し煽り口調で話しかけるカズセ。


「お宝つったら、隠された部屋とか、地下とか、険しい大自然の先とかにあるのが鉄則だろー。賢ぶりメガネー」

「だーかーらー、どの絵本の話かって聞いてんだよー」


そしていつも通り言い争いを始めるリスタとカズセ。


「あはは・・・。また争ってる・・・」

「懲りねーなー。あっ、あっちにも部屋がー」


その様子を見ている秋司と柊真。

柊真はまだ見ていない部屋を見つけると、その部屋に向かって走り出した。


「僕も部屋の中を探ってみようかな。うん・・・?」


秋司も柊真が向かった部屋に向かおうとするが、自身の近くにもまだ見ていない部屋があることに気がついた。

秋司はその部屋に入った。


・・・。

なんだろう・・・。

枯れている植物が一、二、三、四・・・、五つ。

それにボロボロの机と椅子。

本やノートもいくつかある。

それに、試験管みたいな物もいくつか。

誰か、ここにいたのかな?

何年か前だと思うけど。


秋司はその部屋を見渡す。


んっ・・・。

これは、日記か、ノートかな・・・。


秋司は机に置いてある一冊のノートを手に取って開いた。


なんだろう・・・。

えーっと、日記かな?

内容は・・・、人間の進化について・・・?

人間は何百年か前に、バリーダ・エアステンが初めて業血司を感じ、血転術を生み出し、扱い始めてから何も進歩していない。

では、進化をやめた今の人間は、生物として完成しているのか?

いいや、それは違う。

不死、強大な力、食べる必要のないエネルギー摂取・・・。

挙げればキリがない。

人類は、まだまだ未完成だ。

それなら・・・、人間が進化をやめたのなら、僕が新たなる領域へ導けばいい。

進化こそが生物の至高だ。

・・・。

ここに来ていた人の日記かな。

この人は進化について興味があるみたい。

バリーダ・エアステン?

血転術を生み出した人。


秋司は一ページ目を読み終え、ページをめくろうとした時。


「おーい、秋司ー。どこに行ったー?」


秋司を呼ぶ柊真の声が聞こえてきた。

秋司はノートを手に持ったまま部屋から出て、通路に戻った。


うん?

ノートの裏側に何か書いてある。

えい・・・、あとは縦の棒線、その上半分?

持ち主の名前かな?


「おっ、秋司ー。どこに行ってたんだ?」

「うん、ここの部屋に入ってた」

「部屋?」


柊真は秋司が目に入ると、秋司に近づいて尋ねた。

秋司は今自分が入っていた部屋を見つめて答えたが、その声を聞いた柊真は不思議そうに()()を見つめた。

秋司はノートを手に持ったまま、歩き始めようとする。

しかし、突然、秋司は何か違和感を感じた。


「何・・・」


そして、突然秋司の視界を強力な光が襲う。


ここは・・・、どこ?

何?

ん・・・、誰かいる・・・。


「おいお前、俺様の部屋掃除しとけよ」

「あー、俺の部屋もよろー」

「俺のもなー」

「ひっひっひっ・・・」


なんだろう・・・。

四人の生徒が一人の生徒を押し倒して、囲んでいる。


「おい、お前たちー。やめないかっ」


あっ・・・。

新しく一人の生徒がやって来て、倒れている生徒を庇っている。

四人の生徒がこの場を去っていく・・・。

あれ・・・。

なんだろう・・・。

場面が・・・、入れ替わった・・・?

あっ・・・。

さっき一人の生徒を囲んでいた四人の生徒と助けに来た一人の生徒、そして先生がいる。

先生が助けに来た生徒を怒っているのかな。


「お前が生徒をいじめていると報告があった」


さっき助けた生徒が・・・、いじめてる・・・?

なんで?

ん・・・?

あれ、さっき倒れていた生徒もいるけど・・・。

四人の生徒の側にいる。


「はい・・・、良蓮よれくんにやられました・・・」


えっ・・・。

なんで・・・?

なんで助けた生徒のせいにされてるの? 

んっ・・・、また場面が変わった?

今度は・・・、廊下を歩いている?


「おい、いるぜ。あのバグり野郎」

「ねー。頭おかしいよね、あいつー」

「おいおい、関わんない方がいいぜー、ああいう頭も心も異様な奴は」


あ・・・。

僕が言われているのかな?


「君たち、そんな言い方はないだろ」


あれ、あの人は・・・、さっき一人の生徒をいじめていた四人組の一人・・・。

今度は助けてる・・・?

あれ、また場面が変わった。


「ねえ、なんであんなおかしい奴の味方するの?」

「あー? 利用価値があるからだよ。悪口を言われている生徒を庇う。将来桜日を背負う俺様のイメージアップになるだろう。それにあいつ、実力だけは高いだろ。恩を売っといて損はない。俺様にトップを譲ったり、手加減するかもしれないだろ」

「あははっ。私も話しかけてみようかなー。利用するためにー。本当はあんなおかしい奴と話したくないんだけどー」


今度は女の人と、さっき僕? を庇ってくれた人が話している。

あれ、また場面が変わる・・・。


「わー、凄いー」

「きゃあー、汚因おもとくんかっこいいー」


ここは・・・、運動会みたいな感じかな?

いじめていた四人組の一人で、さっきは僕? を助けてくれて、でもよくない事を考えていた人、汚因くんっていうんだ。


「ああ、ねえー。手加減してくれたんだよね? ありがとう」


あれ・・・、僕? に話しかけてる・・・?

また場面が変わった。


「ぷふっ。あいつー、ほんとに、あんたに優しくしてたねー、あのイカればか」

「はーはっはっは。なぁー。ああいう利用価値がある奴は利用してなんぼだ。俺様は将来桜日を担う存在だからね。俺様には権力がある。最も偉大で強力な力だ。その力で国民・・・、奴隷どもを利用して支配する。俺様のためにな」

「ぷぷっ、何それぇー。ねえ、私も奴隷の一人ー?」

「あんっ? いいや、俺様の側にいる間は違う」


またさっきの女の人と汚因くんが話してる・・・。

あれ・・・、また場面が変わる。

今度は・・・、暗い・・・。

何も・・・、見えない・・・。


(・・・。正直。嘘。善。悪。おかしい。バグってる。イカれている。利用。支配。そして権力・・・)


何・・・?

誰の声・・・?

何も見えない・・・。

・・・。

僕・・・?

僕の声?

いいや・・・、違う・・・。

僕じゃない。

この人・・・。

今僕がなっている誰か・・・。

今僕が見ている、この人の記憶・・・、かな?


(でもね・・・、僕は君たちに・・・、興味がないんだ。君たちの言葉も、思惑も、存在も、全く興味がない・・・。ああ・・・、でも、あの話だけは、少しだけ興味があったよ。権力は最も偉大で強力な力。そして、支配する力・・・か・・・。その考えは・・・、違うかもね。その力は善と悪をもすり替える。そもそも、善と悪なんて人の数だけあるんだけどね・・・。社会が求める善と悪。普通の善と悪。それをすり替える。支配をもたらす力。だけどね、結局一番強大な力は、武力なんだよ。まあ、君の考えには興味がないんだけどね。僕の興味は進化と自由だけ・・・。いいや、少しだけ、この歪んだ世界にも興味がある・・・かな・・・)


・・・。

何・・・?


(進化こそが至高)


はあはあ・・・。

何、何、何、何、何、何・・・。


「・・・。秋司?」


リスタは、部屋を出てから立ち止まっていて、今全身が震え、多くの汗をかいている秋司に視線を向ける。


(自由こそがこの世界のあるべき姿)


はあはあはあはあ・・・。

うっ・・・、息が・・・苦しい・・・。

全身が・・・、覆い尽くされる・・・。


「おい・・・、秋司ー」


リスタは様子のおかしい秋司に大声で呼びかけながら急いで近づく。


(進化を促し、自由を生み出す)


「私が創り変えてみせよう」


だ・・・、誰かが・・・、見ている・・・。


「はあはあ・・・、うわあああああーーーっ・・・」


暗く何も見えていなかった秋司。

しかし、急に誰かの目と視線が合い、声も鮮明に聞こえる。

秋司は視界が真っ暗になり、何かに襲われる感覚に陥る。

そして、大声で叫びながら力が抜け、その場に倒れそうになる。


「秋司ーー」


リスタは秋司に近づき、倒れる秋司の背中を左腕で支える。


「秋司・・・? 秋司ー」


部屋を探索していた柊真とカズセも急いで秋司に近づく。


この力・・・、恐ろしさ・・・、怖い・・・。


秋司は意識が薄れ、目をゆっくり閉じた。


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