海底ダンジョンのエピローグ
日々はあっという間に過ぎていき、夏も終わろうかという頃。日が沈んだばかりの時刻。突然メグ師匠から告げられた。
「……免許皆伝だ。あたしから兄さんに教えることはもう何も無い」
「え?」
師匠は俺にもう教えることは無いと言う。ほんとに? 俺はまだまだ色々教えてもらうつもりでいたが……なんだか寂しいな。
「免許皆伝の後も日々の訓練は欠かさないように……以上! だぜ」
「……これまで、ありがとうございました」
「ヨータ兄さんはあたしが何か教えると、スポンジみたいに吸収していくからな。一緒に居て楽しかったよ」
そして師匠から「頑張れよ!」と激励された。嬉しいが、日々の目標が無くなると、今後が少し不安だ。が、まあ、なるようになるか。
この間、リッチ先生からも直接教えることはもう無いって言われたんだよね。剣と魔法の特訓が終わり、夏の間に埼玉ダンジョンも攻略してしまった。今すぐには、特にやること、無いよなあ。
メグ師匠たちと道場で別れ、俺は時空戦艦へ。船は海底ダンジョンの第七層に停泊中。甲板に出ると夜空に星が輝いている。ダンジョンの中に星があるというのは、改めて考えると不思議だ。
甲板では釣り人姿のアイが釣竿を構えていた。長い糸がダンジョンの海へと伸びている。アイも色々楽しんでいるようで、その様子に心が和む。
「釣果はどうだい?」
「そこそこ釣れていますよ。クーラーボックスに入っています」
「見ても?」
「ええ、どうぞ」
ボックスの中を見ると、数尾の魚が確認できた。というか、クーラーボックスを用意しなくても、収納能力を使えば良いんじゃないかと思ったりする。口にはしない。きっとアイのことだから釣りの形を楽しんでいるのだろう。
「ヨータ様、道場の方はどうでしたか?」
「免許皆伝だってさ。もう教わることは無いって」
「まあ! でしたら今日はお祝いしなくては。釣った魚で寿司でも作りましょうか」
「寿司か。良いねえ」
ひとまず、今は免許皆伝を祝うとしよう。嬉しいことではあるものな。
そんな俺たちへ「おーい!」と声をかける者たちが居た。声のした方を見ると、そこにはメグ師匠とルリカさんの姿。二人とも、何かを抱えている。
「免許皆伝のお祝いです。ピザを持ってきました。みんなで食べましょー」
「オードブルもあるぜー」
なんと、二人は俺を祝いに来てくれたようだ。嬉しいね。
「二人とも、ありがとう」
そうして、二人は甲板にピザやらオードブルやらを並べ始めた。ここで食べるつもりらしい。まあ、外で食べると気持ちいいもんね。ピクニックみたいだ。
「では、私は寿司を用意してきます。こんなこともあろうかと、ある程度の準備は進めていますので、十分ほどお待ちください」
「まじか。十分とは早いね」
「私は完璧なメイドですので」
それから十分ほどして、予告通りにアイは戻って来る。いつもの和装メイド姿に変身し、寿司を持って来てくれた。
「お飲み物はいかがなさいますか?」
「適当に。瓶ジュースとか出してくれ」
「承知いたしました」
食事の準備が整い、甲板の上でお祝いが始まる。皆がそれぞれ手に瓶ジュースを持ち、軽くぶつけあった。
「「「かんぱーい!」」」
これから先のことは分からないし、今のところは何をやるべきか迷っているような状況だ。けれど、きっと今後も楽しい冒険が待っている。俺は、そう思う。
だから、俺たちの冒険はまだまだこれからも続いていく。きっとそう遠くない未来に起こる大冒険が今から楽しみだ。
【第二部、海底ダンジョン編、完】




