おじさんVSクラーケン
海底ダンジョン第一層。採掘ポイントに戻った俺は、そこを中心に探索を進める。何が見つかるかなとワクワクしながら、暗い水中を進んでいく。そんな中、遠くから急に現れる気配に気づいた。何か、巨大な気配を感じる。どういうことだ?
「アイ、巨大な気配が現れたようだ。動きも結構早い。こっちに向かってきているな」
「ヨータ様、気をつけてください。くれぐれも、無茶はしないように」
「そのつもりだが、どうやら相手はこちらを逃すつもりはなさそうだぞ」
俺はこちらへ迫る気配に対して、身構える。やがて、そいつは姿を表した。長い胴は頭のようであり、不気味な瞳がついている。十二本の足は滑らかさと力強さを両立し、強力そうだ。つまり、目の前に居るのは巨大なイカの魔物。
「クラーケンか。イカ刺……いや、イカ焼きにして食べると美味いか?」
「では、戦うのですね? ヨータ様」
「たぶん、水中での動きは相手の方が速そうだからね。逃げるのは得策じゃあないだろう」
イカの足がこちらを向き、迫る。焦るなよ、俺。焦らずにスピアガンを構えて、撃つ。しかし、発射したそれはイカの足に掴まれた。ちっ。
全速力でイカから距離を取ろうと動いてみるが、なかなか離れることはできない。攻撃は回避できてるけど、このままじゃあ掴まるのは時間の問題だな。それは困る。
「そろそろ、こっちも強力な攻撃を見せてやろうぜ。アイ」
「承知いたしました」
「槍を射出だ。いっぱいな!」
俺の声に合わせ、イカを囲むように大量の槍が出現する。それらが同時に射出され、イカを狙う。相手の反応速度は速い。同時に十本以上の槍を掴む姿は、敵ながら天晴だ。
「だが、足の数以上の攻撃は防げまいっ」
イカの体に何本もの槍が突き刺さった。けれど、それでもイカの魔物は動こうとしている。ならば、こちらにも考えがあるぜ。
「アイ、敵に撃ち込んだ槍にもバリアは張れるよな?」
「可能です。ヨータ様の装備にはすぐバリアを張れるようになっています」
「よし、全ての槍からバリアを広げてくれ」
「なかなかエグい攻撃を考えますね。承知いたしました」
バリアを同時展開! イカの体があちこちから押し潰される。内側からバリアを広げられるのは効くだろう。俺なら絶対、あんな目には遭いたくない。
それでも、イカは俺に足を伸ばそうとしていた。が、その足は俺に届くことはなく、海底に沈む。一時はどうなることかと思ったけど、終わってみれば、危なげなく勝てたな。
「危なげなくは勝てたが……アイ、この魔物はどの程度の危険度だと思う?」
「そうですね。このダンジョンの環境も考慮すると、Sランクにはなるかと」
「……なるほどね。とりあえず倒した魔物の回収を頼むよ」
「承知いたしました。それでは再び、ダンジョンの探索をお楽しみください。イカの魔物は、私の方で調理しておきましょう」
お、嬉しいね。アイがどんな料理を作ってくれるか楽しみだ。
「しかし……アイ。ダンジョンの第一層にSランクの魔物が出てくるってのは気になるな」
「このダンジョンにも魔王種の影響が出ているとお考えなのですね?」
「ああ。もしかしたら、このダンジョンのレベルが特別高いって可能性もあるが……懸念事項だな」
ワクワクする海底ダンジョン探索だったが、急にきな臭い状況になってきやがった。俺の思い過ごし……ではない気がするんだよなあ。
「水中の戦闘は動きが制限される。何か、これを解決するプランがあれば良いんだが」
このダンジョンが魔王種の影響を受けているのかを考えなければならないし、海底での動きを改善するプランも考えなければならない。できればミスリルの鉱脈をさらに発見したいし、課題は山盛りだ。
頭を悩ませながらの水中探索だったけど、嬉しい発見があった。さらにミスリルの鉱脈を発見したのだ。数時間の探索で二つ目の鉱脈を発見できたのは大きい。
「……ヨータ様、そろそろ時空戦艦にお戻りください。夕方には道場での稽古が始まります」
「分かった。戦艦に転送してくれ」
「承知いたしました」
周辺の景色が歪み、数秒後には時空戦艦に戻ってきていた。ここは時空戦艦のドックだったか。ドック……ちょっと、良いこと思いついたかも。
「ヨータ様、お疲れ様です」
アイがドックまで迎えに来てくれていた。パワードスーツを脱ぎ、少し休憩。アイに「こちらです」と案内される。
「食堂までお越しください。イカの魔物を使った料理が出来ています」
「クラーケンの料理か。どんなものを作ったんだい?」
「今回は、焼いてみました」
「イカ焼きかー。楽しみだ」
その後、食堂でクラーケンのイカ焼きをいただいた。しっかりとした肉質で食べごたえアリ! 甘めのタレが染みていて、疲れた体に嬉しい一品だった。
「……お! 美味そうなもん食ってんじゃん!」
声のした方を見るとメグさんの姿が。こっちに来てたのね。俺を呼びに来てくれたのかな? まだ時間には余裕があるはずだけど、あまり待たせては悪いな。ま、飯を食う時間くらいは待ってほしい。
「クラーケンと戦ってね。アイに調理してもらった。まだあるけど、一つ食べるかい?」
「良いのかい? 嬉しいねぇ」
メグさんがイカ焼きを一つ食べ「うめえなこれ!」と叫ぶ。その様子が可笑しくて、俺とアイはそろって笑うのだった。




