おじさん、狙い撃つ
翌朝。第五層での飛行テストを終え、第六層へやって来た。まだ午前。色々試しながら次の層を目指していこう。
で、第六層の様子だが……なんといっても涼しい! ここは渓谷。谷の下で川の側を進んでいくのが結構気持ちいい。それに空気がうまいんだよな。思わず深呼吸をしてしまう。
「こういう場所で弁当を食べたら、また美味いんだろうな」
「でしたら、私がお弁当を用意しましょうか?」
「うーん、良い提案だけど、また今度おねがいね。今日はここで、こいつを試す」
俺が手に取ったのは光線銃。普段は肩に担げるようにして、すぐに構えられる飛び道具。念願の強力な遠距離攻撃手段だ。たぶん……!
「それじゃあ、今日も張り切って進んでいこう!」
「張り切りすぎてドジを踏まないように」
「分かってるって」
アイとのやり取りを楽しみながら進む。第六層の渓谷にはゴブリンや、その亜種。さらに大カエルやスライムなども登場する。あまり怖い敵は出てこなさそうかな?
渓谷を進むこと数分、この階層で初となる魔物との戦闘。敵はゴブリンとゴブリンアーチャー。アーチャーの方はこの層で初めて戦う相手だな。
前衛のゴブリンが何か叫び、それに合わせて、アーチャーが弓を引く。すぐに矢が飛んでくるけど、それは見えてるぜ。これまでの戦いの経験が俺に自信と余裕を与えてくれる。
飛来した矢は最小限の動きで回避。おかえしとばかりに光線銃のトリガーを引く。一瞬で光線が飛んでいき、アーチャーの胴体に穴を空けた!
「ナイスショットです。ヨータ様」
「良いね。結構、当たるじゃないか」
仲間の死に驚き戸惑っている前衛のゴブリンを、冷静に光線銃で撃ち抜く。うん、悪くない。
「アイ、カニバサミを片方だけ出してくれ」
「承知いたしました。武器のコンビネーションを試すのですね?」
「ああ、そんなところ」
渓谷を流れる水の音を楽しみながら気配を探る。ほどなくして、また別のゴブリンたちを発見。今度は杖を持ったゴブリンも居るぞ。確か、ゴブリンメイジとかいう個体だ。特に恐れる必要はない。落ち着いて戦っていこう。
ゴブリンたちがこちらに気付くより早く、こちらから先制攻撃を仕掛ける。素早くアーチャーを撃破。残るは前衛の通常ゴブリンが二体、メイジが一体。さあ、やるぞ。
二体のゴブリンが俺に向かって走ってくる。その後方ではメイジが何かを唱えている。魔法を放つ気だな。俺も、魔法とか使えるようになりたかったり。
そして、ゴブリンたちの突撃に合わせて、後方から火球が飛んできた。ほうほう、これは逃げ場を塞がれた形だ。まあ、飛べば良いし、バリアもあるんだけど、それじゃ面白くない。なら、こうさせてもらおう。
右側のゴブリンを光線銃で撃ち抜く。そうしてできた隙間を縮地で走り抜け、メイジをカニバサミで叩き殺す。そして、俺に背を向けたまま困惑した様子のゴブリンを背後から撃ち抜いた。
俺、魔物を殺すのにだいぶ抵抗が無くなってるな。それ事態はダンジョンでは、悪いことではないはずだ。ポジティブに考えよう。
「アイ、光線銃の残弾とかは気にする必要あるのかい? やっぱあるよね?」
「そうですね。あまり多くは打てません。ですがファクトリーで残弾をチャージするためのカートリッジを作ってありますので、そちらをご利用ください」
「あーね? で、カートリッジの材料は何なのさ?」
「スライムの魔石とマッドクラブの殻で作っています。カートリッジは私が空間転移の応用でリロードします。ヨータ様は敵を狙い撃つことだけに集中してください」
「なるほど、了解」
一応残弾を気にしつつ、リロードはアイに任せる。しっかし、一個百円の魔石で一カートリッジとはずいぶん効率が良いな。時空戦艦の化学力は世界一か?
ゴブリンたちの他、スライムや大カエルといった魔物を見かける度に倒していく。魔物の素材の回収も忘れない。良いね良いね。光線銃の使い方は完璧に覚えたぞ!
そして興味深い発見もした。光線銃による攻撃は水中の相手には効きが悪いのだ。川の中に潜む大カエルを狙った時、そのことに気づいた。おそらく水中で光が拡散してしまうせいだろう。
ともあれ、第六層は特にトラブルもなく抜けられそうだ。進み続け、第七層までもう少しというところで大きな滝を発見する。おお、これはなかなか。
「雄大な滝、良い景色だ」
「ダンジョンには、もっと大きな滝もありますよ。ヨータ様」
「それは、いつか見てみたいね」
「ヨータ様なら見に行けますよ。どんな場所でも」
「ああ、そうだと良いな」
しばらく、この場に立ち止まり滝を眺めているのも悪くない。そう考えていた時、アイから嬉しい提案をされる。
「ヨータ様さえよろしければ、簡単な食事などを用意してみました。先ほど、お弁当を食べたがっている様子でしたので」
「なになに? 嬉しいね。何か作ったの?」
「塩だけの、おむすびではありますが、いただきますか?」
「もちろん。いただこう」
「艦内のキッチンを稼働させた甲斐がありました」
そうして、俺はアイが用意してくれた塩むすびを食べながら、第六層の自然を眺めるのだった。




