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ルリカ視点、会長の考察

 今日の第四層はいつもより静かというか、落ち着いている気がする。テント泊の準備をしながら、妙な違和感を覚えていた。


「魔物の数が少ないですね。誰かが狩り尽くしたみたいに」


 私の言葉に会長が「そうですわね」と応じる。彼女は第二層の頃から、何かを深く考えているような感じがある。それでもダンジョンの探索には支障をきたさない辺り、流石トップクラスの探索者だ。


 テント泊の準備が終わり、カロリーバーで簡単な食事を済ませる。味気ないが、ダンジョンでの食事は基本的にこんなものだ。慣れれば、そう悪いものでもない。


 私とメグさんが地面に腰を下ろし、会長は切り株に腰を下ろした。会長から「少しいいかしら」と聞かれて私たちは頷く。おそらく大事な話だろう。しっかりと聞かねば。


「第二層で、カヤという少女を助けた何者かは、結局のところ見つかりませんでした。また、同じ層でゴブリンロードを倒した何者かも発見できていません」


 会長の語る情報に間違いはない。第二層で……いや、今の渋谷ダンジョンで、私たちの知らない何かが起きている。それが分からないことが、もどかしい。


「この二者は戦闘スタイルがまるで違うように見えました。方や戦闘の痕跡を残さないような戦い方、方や台風が通った後のように明らかな破壊の後を残していく戦い方。ただ、気になるのは……」


 会長が黙る。ほんの少し間を置いてから、彼女は「例えば、なのですが……」と人差し指を立てた。名探偵が推理をするかのようなモーションだが、会長の場合はその見た目のせいか可愛く見える。


「……この全く異なる戦い方をしているように見える二者、実は同一人物だという可能性はないかしら?」

「同一人物、ですか?」

「そうですわ。ルリカさん。憶測ではありますが、この二者は同一人物、それどころか、第一層でワイバーンを倒したあの探索者も、同じ人物なのではないでしょうか?」


 それらの人物は別々の存在だと思っていたけど、もし同じ存在だとしたら、驚くべきことではないか。それほどまでに、戦闘スタイルを変えられる人物が居るものだろうか?


「会長、そのように思われる根拠を聞かせてもらっても良いでしょうか?」

「ええ、そうですね。私がそう思う理由を話しましょう。第一層から第二層、また第三層から第四層にかけて、今のダンジョンでは様々な探索者が話題になっています」

「様々な探索者……ネットで話題になっているとかいう……?」


 時々、会長やメグさんがスマホをチェックしているタイミングがあった。昼頃もメグさんが「誰が丸太男じゃい!」とか怒っていたのが記憶に新しい。彼女もそういう噂を気にするんだと、少し意外に思ったものだ。


 そして、私も休憩のタイミングなどで、彼らについての噂を調べてみたりはした。その噂が本当なら、どの人物も凄いと思う。画像や動画が無いのが残念だ。


「光の探索者、マジックシールド兄貴、謎の投てきマン、丸太男、アクロバット侍、これらの探索者全員に共通する点。分かりますか?」


 会長の視線が私に向けられる。なんだか試されているようで落ち着かない。しかし、そうだな……これらの探索者に共通する点といえば……。


「画像や動画が存在しない……?」


 私の言葉に対し会長は満足そうに頷いた。どうやら、彼女の望む答えを出せたらしい。そのことに安堵しつつ、彼女の言葉を待つ。


「ええ、そうです。これらの人物には画像や動画が全く存在しない。カヤさんを助けた謎の人物も、その姿はどこにも映っていませんでした。噂だけが一人歩きしている状態ですの。それでいて、これらの噂は少しずつ、渋谷ダンジョンを上るように出てきている」

「それらの点から、会長は噂の人物たちが共通の一人であると考えるわけですね?」

「その通りですわ。噂を追っていけば目的の人物を見つけられる可能性は高いと考えます。そして、もう一つ気になった点がありますの」


 もう一つ? なんだろうか? 気になるので教えてほしい。


「光の探索者がワイバーンを撃ち抜く前、空が歪んでいたという聞き込み情報があります。また、カヤさんが助けられた時のことを調べるなかで、空間が歪んで見えたという書き込みを発見できました」


 そんな書き込みがあったのか。私について調べたと言っていた時にも思ったが、会長は情報を集めることに関する何らかの能力を持っているのではないだろうか? そんな風に思ってしまう。


「……それと、良い機会ですし、わたくしのスキルについて、ルリカさんにも教えておきましょうか」

「会長のスキルについてですか!?」


 それは、確かに気になる。でも、本当に教えてもらって良いんだろうか。いや、でもやっぱり気になる!


「なんてことないスキルなんですのよ。わたくしのスキルは直感。レアリティはRに分類されるものですわね」

「直感……」


 それは意外だった。直感は、その名の通り、感が働くようになるスキル。あまり強力なスキルとは言えない。


「わたくしはこのスキルを鍛えあげ、今では限定的な未来視とも呼べるレベルにまで成長させました。ふふっ、この話を信じますか?」


 その話を、にわかには信じがたいが……屈託の無い笑顔の会長を前にして否定する気持ちにはならなかった。

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