おじさん、第四層でキノコ狩り
第三層から第四層に到着。この辺りはキノコがよく見つかる。森の中を探せば、シイタケによく似たものが見つかるだろう。ルリカさんが過去の配信で美味しそうなバターソテーを食べていたのが印象に残っている。
俺もあのバターソテーを食べたい。というわけで今日はこの層の魔物相手にも武器を試し、その後は第四層のキノコ、シブヤダンジョンタケを見つけるのが目的だ。程よく緊張を保ちつつ、ある程度はリラックスして進んでいこう。
「ところでアイさんや、ちょっと頼みたいことがあるんだけど……」
「はい、どのようなことでしょうか?」
「俺の周囲のバリアを張ってる範囲、ある程度狭くすることはできないかい?」
「それはまた、どうしてですか?」
「俺はダンジョンに潜ってるんだ。少しずつでも戦う動きができるようになりたい。そのためには回避を学ばないとでしょ」
「なるほど」
「だから、例えばなんだけど、俺の体を膜みたいに覆う形でバリアを張ることはできるかい?」
「ええ、可能ですよ」
「それじゃあ、よろしく頼むよ」
今は硬そうな鎧もあるし、万が一にも大丈夫だと思う。まあ、バリアを切れって言うわけでもないし、死にはしないだろ。
「……ヨータ様が戦闘にも積極的になられることは良いのですが、バリアの範囲をそこまで狭めると少し不安があります」
「不安?」
「攻撃を受けても痛みはないはずですが、衝撃は受けます。一時的に、体が動かなくなるくらいの衝撃を受けることもあり得るかもしれません」
「攻撃を受ければ衝撃があるってことか。それくらいの方がちゃんと回避が出来てるか分かりやすくて良いよ」
「……分かりました。そういうことでしたらバリアの範囲を最小限に狭めます。ですが、ヨータ様が危ないと感じた時には、私の意思でバリアを強くしますからね」
「うん、アイの判断を信じてる」
そういうわけでバリアの範囲を狭めてもらう。そして近くの気を探り、そちらに向かってみた。ほどなくして発見したのは短い手足が生えた巨大なキノコ。マイコニドという魔物だ。でかいシイタケみたいで美味そう。
「それじゃ、戦ってみようか。アイ、カニバサミを出してくれ」
「承知いたしました。グッドラック」
両手に双剣を持ち、魔物を挑発するように構える。体長三メートルはあろうかというキノコが俺めがけてずんずんと進んでくる。その動きは結構早い。
力強いパンチが迫り、俺は急いで回避する。体に衝撃は無し、回避成功! さあ、今度はこっちのターンだ。カニバサミの連激をぶちこんでやる!
「くらいやがれっ」
魔物との距離を詰めながら、相手の脇腹に連激を叩き込む。魔物は膝をつくが、まだ動けるみたいだ。ならば、さらに攻撃を叩き込む! そう思ったのだが……!
勢いよく迫ってくる裏拳をブリッジっで回避、そのまま後方へ転がるようにして魔物との距離を離す。今のは、ちょっとかっこ悪かったな。バク転とかしながら回避できたらかっこいいんだけど。
体を起こし、仕切り直す。再び迫ってきた魔物のパンチを避け、カウンターを叩き込むように、カニバサミを降った。その一撃が決め手となったのか、キノコの魔物は仰向けに倒れた。ふぃー。やったぜ!
「からだの動き方は覚えたつもりだったけど、まだ課題はあるな」
「ヨータ様、それはどのような課題でしょうか?」
「もっとかっこいい動きで戦えるようになるって課題」
「……なるほど」
なんだい今の反応は。若干呆れてるような反応だったぞ。これはひとつ、言ってやらねばならんな。
「かっこよさってのは、大事なものなんだからねっ」
「承知いたしました。かっこよさは大事。記憶しておきましょう。それは、それとして、この魔物は倉庫に収納しますか」
「ああ、よろしく頼む」
その後、俺はこの層に出現するマイコニドたちを相手にかっこいい回避の仕方を研究した。強化された身体は学習も早いのか、すぐ戦闘にバク転や側転のような動きを取り入れることが可能になった。体を思ったように動かせると気持ちいいよね。
マイコニドたちを相手に戦った後は、お楽しみのキノコ狩りだ。シブヤダンジョンタケの他にも様々なキノコが見つかり、その度にアイがキノコについて解説をしてくれた。毒キノコが結構な割合であったので、キノコ狩りをする時は気を付けたい。
今日は探索に、戦闘の訓練に、充実した一日だった。そう思いながらダンジョンから時空船艦へと移動する。湯に浸かり、食堂でキノコのバターソテーを楽しんだ。
ダンジョンで見つけたそれは肉厚で食べごたえがあり、一口食べる度に溶けたバターが口の中に広がった。美味い! 美味すぎるっ! 最高だね。それに、これもビールが合うんだなあっ。
船長室に戻り、椅子に座りながらスマホをチェックする。おーおー、昨日から思ってたけど、俺のこと話題になってるよなあ。目立ちすぎるのは避けたいが、探索を楽しめないのも嫌だしなあ。なんか、良い手が無いかなあ。
ま、なるようにしかならんだろ。面倒なことになりすぎなければ、それで良い。今日のところは歯でも磨いて早めに寝よう。




