おじさんVSゴブリンロード
第二層もだいぶ進んだ。辺りには大木が並び、自然の雄大さを感じる。そんな折に、アイから「少々強力な個体が居るようです」と報告を受けた。さて、どうするかな? もう一度さっきの射出戦法を試したいところではあるが。
「ここから二キロメートル先に、そこそこ強力な魔物の気配ですね。戦艦の砲で一方的に倒すこともできますが、どうなさいますか?」
「んー、砲で目立つのは避けたいし、こちらにはバリアもあるんだろ。一旦は近寄ってみて、無理そうならその時に砲を使うとしようか」
「では戦うのですね」
「そうだね。こっちにはバリアもあるし、経験値はつんでおきたい。今後のことも考えると」
「承知いたしました。私はヨータ様をサポートします」
「うん、期待してる」
ここまで何度も魔物と戦闘しているうちに、俺も結構自信がついてきた。ここらでもうちょっと強い敵を倒して、更に自信をつけておきたい。
「じゃあ、敵までのナビを頼むよ」
「はい、それと強力な魔物の近くにゴブリンの群れも確認できます。気をつけてください」
「そうか。じゃあ、群れの方から少しずつ削っていくか」
少しして、移動した俺は、強力な魔物とゴブリンの群れを発見する。群れの中に、やけに大きな体躯の鬼が居て、そいつがアイの言っていた個体であることはすぐに分かった。大木の影に隠れながら、小声でアイと相談する。
「あれは、なんて魔物? 第二層の情報に大柄の鬼なんて情報はなかったけど」
「ゴブリンロードですね。Bランク相当の魔物です。ゴブリンの錆びた武器だと少々てこずる相手かと」
ふむ。見るからに耐久力ありそうだもんね。少し面倒か? ここは、考え直して砲で倒してしまおうか? でも、困ったらすぐ砲に頼るってのもな……そうだ!
「アイさんや、こういうことはできるかい……?」
俺はアイにそれが可能かどうかを確認する。アイ曰く可能ということで、それならやってみるかと決まった。いざとなれば一回戦艦に逃げ込めば良いんだし、なんとかなるだろう。
「それじゃあ、やってみますか……!」
まずはゴブリンの群れから片付ける。敵の数は三十を越えていたが、そこは隠れながら錆びた武器を射出すれば簡単に倒すことができる。楽で良いね。
ゴブリンたちの悲鳴を聞きながら、俺は準備運動を始める。大木の影から出たらゴブリンロードと直接戦闘だ。怖くはあるけど、今後のためにも今やらねば! 目指すは十階層なんだからな。
「ヨータ様、心の準備はよろしいですか?」
「うーん、もうちょっと……」
「さっさと行ってください。あなたなら勝てます」
アイは頼もしいことを言ってくれるね。なら、期待に応えなくちゃな!
ゴブリンたちの悲鳴が止んだ頃、俺は大鬼の前に姿を表す。大鬼は先ほどの奇襲に動揺している様子で、狼狽えている。そうしてくれていると助かるよ。
「これからちょっと、武器を抜くから……よっと!」
俺は近くの大木を、力いっぱい引き抜く! おおー、まじで抜けた! 身体強化されてるって話で、もしかしたらと思ってたけど、なかなかの怪力。我ながら怖いわ。
「ヨータ様の力は、あなたが意識しなければセーブされるようになっています。安心してお使いください」
「戦闘中に解説どうも。というわけで、行くぞ。大鬼」
俺たちが話している間、ゴブリンロードは唖然としていた。口を大きく開けて、何が起きているか理解できていないみたいだ。えっと、隙だらけだけど、そっちが何もしないなら、こっちから行くぞ? 悪く思うなよ?
俺は振り上げた大木を勢いよく振り下ろした。そして勝負は驚くほどあっさりと終わる。辺りに地響きが轟き、そして大鬼は脳天から潰されてしまったようだ。呆気ないが、勝ちは勝ち。喜んでおこう。やったぜ!
「おめでとうございます。ヨータ様、Bランクの魔物を独力で撃破なさいましたね」
「そだね。というか、近くの自然物をそのまま武器にするってのは、ありだな。近くの木々を何本か抜いておくか」
「それも良いですが、今の音を聞いた者たちが動いています。こちらに寄っているものも居るようですよ」
「まじ?」
……まじみたいだ。少し離れたところから気配が近寄ってくるのが分かる。その全てが魔物という可能性もあるし、探索者が近づいてきている可能性もあるか。アイなら、その辺の判別はつくのかな? さっき、強力な魔物の気配って言ってたしな。
「アイ、近寄ってくる気配が人か魔物かは判断できる?」
「ええ。こちらに寄ってくるのは、全て人の気配ですよ」
「うえぇ!? まじかよ! 目立つの好きじゃない。さっさと移動しよう」
第三層へ急ぐとしよう。それに、自然物を武器にするというアイデアは良かったけど、もう少し取り回しやすい武器も欲しい。次の層へ移動した時にこそ、専用武器を作るとしよう。
「アイ、第三層まで最短距離でナビを頼む」
「かしこまりました。あるいは、ここへ来た人間を全員返り討ちにするというプランはどうでしょう?」
「そんな野蛮なことはしません!」
アイさんや、恐ろしいことをいうのはやめなされ。




