第3話
クロウは、内心でガッツポーズを繰り返していた。
こうもスムーズに関係者とコンタクトを取れると思っていなかったが、たまたま見つけた兵士を追い掛けてみたらこれである。
早く終わらせて帰りたい。ゆっくりしたい。休みたい。クロウの原動力は、それだけだった。
そして今、クロウ、ルカ、少女の3人は王都の裏通りにある古びた喫茶店で顔をつき合わせていた。
他に客は居らず、初老のマスターは、注文分を運ぶとカウンターの奥へと消えていった。
どうやら配慮してくれたらしい。
「それじゃ改めて。俺は、クロウ。そしてこいつがルカ。とある依頼を受けて動いている」
「私は、セレナ」
「じゃあセレナ。単刀直入に聞く。君は、今回の転移騒動の当事者か?」
クロウの質問にセレナは目を見開く。その反応でクロウは、確信し今回はツイていると内心更に上機嫌となった。
「私が、異世界人だってどうして分かったの?知ってるって事は、全部お見通しなの?」
「細かい事までは、わからない。だからこうして接触している。だが大まかな流れは理解している」
「それなら話が早くて助かります」
クロウの問いにセレナは、答えると、少し表情を和らげ話を続ける。
「ところで、さっき私の居場所がなんで分かったの? 完全に気配も遮断してたはずなんだけど」
「それ私も知りたいです! 先輩何で分かったんですか? 壁に話し掛けてたから、どうかしちゃったのかと思いましたよ」
「おいルカ。俺に失礼すぎるだろ」
この後輩は、ズバズバとものを言ってくるが流石に暴言だろとクロウは、ため息をつく。
確かにどうかしちゃいそうな位働き詰めだが。
「なんつぅか。違和感って言うか……まぁ直感に近い。俺以外にも感じ取れる奴がいるかもしれんから過信しすぎない方がいいだろな」
ルカに毒気を抜かれたのかクロウは、言葉を崩して話し始めた。
「この力は、万能ではないんですね。分かりました気を付けます」
「そうしてくれ」
場も和んだ所でクロウは、本題に切り込む。
「セレナ。あんた次第で俺達は、手助け出来るかもしれない」
「私……次第ですか」
「あぁ。あんたは、どうしたい?」
クロウの真剣な雰囲気にルカも押し黙りセレナを、見つめる。
「私は……元の世界に戻りたいです」
「そうか。なら、王国のやってることを教えてくれ」
「分かりました。私が知っている事をお話しします」
それからセレナは、これまでの出来事を説明していくのだった。
セレナの、話を要約するとこんな内容だった。
➀召還者は、自分を含め4人。名前はレン、シン、タツヤ。
➁召還の際、何かしらの制約を受けて逆らえない。
➂いずれ魔族との戦いに投入される予定。
「なるほどなぁ。ところでセレナは、制約を掛けられてないのか?」
「私も掛けられましたが、どうも解除出来たみたいです」
「それは多分セレナさんの職業柄によるものだと思いますよ」
横からルカが、話に入ってくるあたり何か分かったのだろうと続きを促す。
「セレナさんは、神官ですね?」
「おいルカ。神官が認識阻害のスキル持ちなんてあるかよ」
「正解です。認識阻害は、スキルポイントを使って取得しました。王城から抜け出す機会を伺う為です」
「何でもアリなんだな」
「チートって言うらしいですよ。シンさんが言ってました」
「他の3人は、取得出来なかったのか?」
その問いにセレナは、苦笑いを浮かべる。
「私は、3人より能力が低かったみたいで軽視
されていました。だから取得するタイミングがあったんです」
そう言葉にするセレナは、何処か自嘲気味だ。1人だけ逃げ出して来たことに罪悪感も感じている様でもあった。
「なるほど。んで、その3人は、今何処にいるんだ」
「あの、会ってどうするつもりですか?」
「勇者に、なるのやめてもらう」
「っ!!」
セレナの、表情が強張る。
「先輩! 言い方が悪いですよ! それじゃ召還者の皆さんを害するみたいに聞こえちゃうじゃないですか」
「展開によっては、そうなる未来もあるには、あるだろ?」
「そうならないように立ち回るのが先輩の、仕事なんでしょ?」
見えない火花をバチバチ散らす2人。
「あの、やめてもらうって具体的には?」
2人の間に入るようにセレナが問い掛ける。
「元の世界に帰るでもいいし、この世界で生きていくのもいい。ただ、勇者になることを諦めてもらうってだけだよ」
「本当に帰れるんです……か?」
「可能だ。下準備が必要だから今すぐって訳にはいかないが、帰ること自体は問題ない。それと出来れば1度に行いたい。コスト的な理由で」
「予算がありますもんね」
苦笑いを浮かべる2人にセレナが驚きの声をあげる。
「あなた達は、一体」
「まぁ、只の社畜だよ。詳しくは、話せないけど協力してもらえないか? 代わりといっちゃなんだけど事が終わるまでの身の保証は、させてもらう」
暫く考える素振りを見せたセレナは、覚悟を決めたのか、2人に向き直り告げる。
「捕らわれている3人を助けてくれますか」
「彼ら次第だけど、最善を尽くすつもりだ」
「セレナさん。先輩優秀らしいんで大丈夫ですよ!」
そうしてクロウは、セレナと協力関係を結んだ。
それから時間が過ぎ、辺りが暗くなった城壁の片隅にクロウは、来ていた。
セレナの情報によると3人は、城内の騎士団訓練所にいるらしい。
「さて、サクッと潜入しますか」
クロウは、認識阻害の外套を纏い城壁を手慣れた動きで駆け上がっていく。
「ルカ置いてきてよかったぜ。アイツうるさすぎて潜入に、向かないからなぁ」
ルカは、セレナを潜伏先へ案内している。とは、言っても息のかかった宿なのだが。
クロウは、誰にも聞こえない独り言を言いながら歩を進めるのであった。




