最強の万能剣士のおじさん、新しい仲間と稽古を始める。
「リオさん、もし、あなたが俺達のパーティに入るのなら条件があります」
「な、なんでしょう? わ、私、あなた様の言うことならなんでも聞きます」
「それは…俺の弟子、マリナと仲良くしてあげること。それと、あなたが真面目に剣術を覚えてくれること。それと、途中で道を踏み外さないこと。それだけです」
「大丈夫です。その条件なら、私の許容範囲内です」
「良かった、守ってくれるのですね」
「はい」
こうして、リオさんが新しい仲間になった。まぁ、キャサリン、ジャスミン、ステファニーみたいな奴らとは全然違うと思うが…。違うと思いたい、違うと。
「あの…エヴァンさん。聞きたいことが…」
「うん?」
「私の剣、弱いですか?」
「そんなことを言われても…あなたの剣をみないと何とも言えない」
「私の剣は、この剣です」
んっ。偉く斬れ味が鋭そうな剣だ。それに新品でサビ等はほとんどない。つまり、使ってないということか? でも、これだけじゃ分からない。とりあえず、手で握り、振ってみよう。
俺は、呼吸を整え、振ってみる。
ーブンッー
ほう、この剣はかなりの上級クラスの剣ではないのか? 斬れ味はかなり良さそうだ。この俺が使えば、かなりの魔物討伐は出来るだろう。しかし、今の彼女に使えこなせるか? だな。まだまだ、リオさんはこの剣を扱えるだけの力はないだろう。こんなことを思うのは大変申し訳ないが。
「ど、どうですか? エヴァンさん」
「リオさん、もっと力をつけよう。この剣は何も問題ない。あるとしたら、あなたの力だ」
「わ、私の力ですか?」
「そうです、あなたがもっと、もっと、自身で力をつけないとこの剣は扱いきれません。だから、今からでも、この俺と稽古をするべきです」
「えっ!? さ、早速ですか?」
「そうです、今から稽古を始めましょう」
そう言って、リオさんに木刀を渡す。勿論、俺も木刀だ。場所はギルドの外。そこで稽古を始めるとした。
「い、行きますよ〜」
構えが全然まだまだだな。これでは、俺に勝てない。それどころか、あの剣ですら操れない…。
「てやあああああーっ!!」
ーパンッー
「!?」
彼女の木刀が遠くに飛ばされた。俺が簡単に木刀を当てただけで。
「そんな! 私の木刀が飛ばされた。どうして。エヴァンさん、あなたも木刀なのに」
「それはそうです。あなたは、構えから未熟だ。構え、振り、そこからが、初心者だ。そんなあなたが、この俺に勝てるとは思えない。今のあなたは、俺にも勝てないし、あの子にも勝てない。こんなことをいうのは大変申し訳ないが…」
「……」
「自身をなくしてしまっているようだが、これは才能とかではない。継続だ。正しいことを継続していけば、リオさんだって、マリナや、俺みたいになれる。だから、自身をもって欲しい」
「エヴァンさん…」
「うん、最初は自身の未熟さに打ちのめされるだろうが、それを受け入れる精神力こそが力になるはずだ」
「はい。ありがとうございます。もっと、もっと、あなたに学びたい! そして、私は強くなりたい」
「そうですか。では構えから学びましょう」
こうして、一日中、リオさんに俺は剣を持つ時の構えを教えてあげた。マリナはリオさんのことを応援してあげているみたいだ。
そして、木刀の振りも教えてあげた。最低でも一週間以上は構え、木刀の振りを教えてあげないといけない。身体がその基礎に慣れるまでだ。最初はしんどいだろうが、慣れれば楽になる。もがいて、もがいて、もがいていくことこそが、成長していく証だ。
最初、俺も師範から教わった時も、構え、振りからだった。俺は師範に、振りを千回、いや一万回以上、させられた。それも毎日だ。構えがダメなら木刀で精いっぱい叩かれた。それだけ、師範は俺に厳しかった。嫌、それが愛情の証だった。師範は、学びが遅いことが問題ではない。継続しないで諦めることが問題だと教えてくれた。だから、どんなことでも、継続していけば、必ずや報われることを俺に伝えてくれてたな。
俺は懐かしい気持ちになっていた。師範はもうなくなっているのに、側にいて見守ってくれている気持ちになった。こんなオッサンになったというのに…。師範はこんなオッサンになった俺のこと、どう見ているんだろうな。
そう思って、リオさんの指導をしていると、日が暮れる。
建物の旅館に泊まった俺達は、旅館の中にある湯風呂に入り、ゆっくりした。かなり、気持ち良かった。一日の疲れが飛んで行ったような気分だ。そう言えば、今日、リオさんだけ、指導したが、マリナも教えていく必要があるか? いや、もうマリナは自分で技を取得している最中だ。きっと、時間を見つけては、自身を鍛えて学んでいるに違いない。
俺は、そう思い、銭湯からあがり、部屋に戻ると、外からマリナの姿がみえた。
やっぱり、あの子は自身で稽古をしているな。剣に対する構え、それから、振りの基本が出来ている。遠くの部屋から見ても、それが分かる。
もう、マリナは問題ないかも知れないが、それでも、俺の弟子、心配にはなる。まぁ、でも、リオさんも指導しているということは、俺の弟子になってしまうのか? う~む、それでも構わないが…。マリナは、まだ小さいだけに弟子というイメージでも構わない。リオさんの場合はどうだ? 弟子というか、なんというか? あの成人年齢で師匠って。むしろ、師範になるのか、俺は。まぁ、それでも良いが。すると、仲良く話ながら、マリナとリオさんが入ってくる。な、何だか、仲良くしているな。まぁ良い、それが条件の一つだったもんな。
リオさんは銭湯に入っていたような様子だが、マリナは? もう、入ったのか? 銭湯に。
「エヴァンさん、魔王四天王倒したんですって!! 凄いですね!!」
「えっ?」
「マリナさんから聞いたんですよ! 本当にあなた様は凄いですね!」
「ああ…。いやいや、まだまだですよ、俺なんて」
「エヴァンさんの謙虚なところも良いですね。あっ、そうだ、エヴァンさん、こんなことをいうのは、許可もらえないと思いますが、一緒に飲みに行きません? 私達三人で」
「えっ、なんで?」
「何だか、そんな気分なんです。私、あなたのことをもっと知りたいって思ってしまって」
そうだな。稽古ばかりだと、何だか、堅苦しい奴になるかも知れないしな。飲みに行くくらいの付き合いなら良いか。
「そうですね。まぁ良いでしょう。そのかわり、明日も稽古ありますからね」
「はい、分かりました」
彼女の屈託のない笑顔を見ると、何故か元気になる。何故か分からないが。
まっ、でもこれから、リオさんは俺達のパーティになるなら、必ずや戦力になってもらわないと困るからな。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。これからもよろしくお願い致しますm(__)m。




