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最強の二人〜彼らの謎多き日常〜  作者: 地野千塩


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無償の愛の謎(6)

 冷蔵庫には、先日聡から貰ったすき焼きセットが入ったままだった。そろそろ作らないと材料が腐りそうだが、次の休日のでも作るか。次はゴールデンウイークの振替休日があるので、三連休になる予定だった。


 仕事から帰った誠は、冷蔵庫の中見を確認し、手早く夕食を作り始めた。今日は豊は飯が要らないとLINEがきた。「亜由案件か?」聞いたら、どうやらそうっぽい。会社帰りデートして来たという。


 久々に一人分の夕食を作っている誠は、やり甲斐もなく、あまり物で野菜炒めを作っていた。ご飯も冷凍庫にある余り物でいいだろう。


 フライパンを温めると、魚肉ソーセージやキャベツやにんじん、ピーマンなどの余った野菜くを炒めていく。魚肉ソーセージというのが貧乏くさいが、ご馳走は次のすき焼きにとっておこう。


 ジュワジュワと野菜や魚肉ソーセージを炒めるいい音がする。フライパンはまるで楽器のようにも感じる。美味しい音を奏でる楽器だ。今日は、一人だけの夕飯のせいか、そんな音も妙に大きく感じてしまった。


「できたぞ。いい匂いだ」


 さっそく出来上がった野菜炒めを皿のもり、ご飯も解凍して茶碗に盛り付けた。それを全部お盆にのせ、リビングに持っていく。今日は、一人しかいない。妙に広く、静かに感じてしまい、テレビをつけた。振り込め詐欺のニュースなどろくな情報がないが、何の音もないよりは良いかもしれない。


「いただきます」


 こうして一人で食べ始めた時だった。聡とアリスのセレブ兄妹がやってきた。二人とも、血相を変えて慌てた様子だった。


「なんだよ、どうしたんだよ」


 とりあえず、茶を出し、二人をリビングに招き入れ、夕食を食べながら話を聞く事にした。


 ニートの聡は相変わらず上下ともスエット姿だったが、アリスは制服姿だった。派手なデザインのセーラー服で、いかにもお嬢様らしい。もう半袖だった。季節の変わり目を感じた。


「あの亜由って女、ヤバいわ!」


 そんなお嬢様が「ヤバい」なんて言ってるから、相当らしい。ちょっと興奮気味なアリスより、聡の方が冷静だろう。誠は聡に視線を向け、事情を聞く事にした。


 聡はセレブ人脈を駆使し、亜由について調べたらしい。すると、警察もマークしている結婚詐欺師だと判明した。ネットでも「白うさぎの悪女」と呼ばれる有名な詐欺師で、真面目だがモテない男性をターゲットにし、貢がせているという。整形も何回も繰り返している為、顔も何パターンかあり、警察も手を焼いているらしい。


 こんな田舎で結婚詐欺とか、警察という言葉が飛び交い、誠は耳を疑う。しかし、重奏町でも振り込め詐欺の話は聞くし、あり得ない話でもないが……。


 アリスがまとめてくれたネットの情報も見てみる。わざわざ印刷してまとめてくれた。被害者は多数のようだが、亜由に本当に惚れてしまったものも多く、金銭を盗まれても、訴えでない被害者もいるようだった。


「許せない。純粋な男性を弄んでいるなんて」


 アリスは頬をふくらませて怒っていたが、誠は一緒に怒る気分にれない。もし、詐欺だとしても、一時の夢を見られたと思えば訴え出ない被害者の気持ちもわかってしまい、複雑だ。


 誠は野菜炒めを食べていたが、あまり美味しく感じなくなってしまった。今日のA定食と全く同じような味がしてきた。


「だったら、あいつは結婚詐欺師もターゲットになっているって事だな? どうすればいいんだよ……」


 警察に行くか? しかし、あの様子だと亜由を訴えるどころか擁護しそうな雰囲気だった。


「その可能性が高いね。誠くん、困ったね」


 聡が口からではそういうが、ずっと冷静だった。金持ちは詐欺にあう事もあり、日常茶飯事だというが。


「でも何で豊が? 詐欺師のターゲットにするような男か?」


 金持ちでは無いはずだ。まさかkonozonの社員だとガチで信じているわけでも無いだろうし、そこが謎だった。


「まあ、豊くんはよく見れば育ちは良さそうじゃないか」

「そうよ。食べ方も綺麗だし、私たちと同じ感じよ」

「アリス、嫌味ぽいなぁ。でも、アイツの実家は元金持ちというのも事実だしな……」


 それにいかにも騙されやすそうなタイプだ。亜由がターゲットにしてもおかしくない。豊に金がなくても借金させば良いわけだ。資料を見る限り、貧乏人の被害者でも借金漬けになっており、亜由の悪行に震えてきそうだった。


 とにかく問題なのは豊だ。この「白うさぎの悪女」の被害から、守るのが先決だ。


 すぐに豊にこのめ事実をLINEするべきだったが、なぜか手が止まる。


 もし、詐欺師だとしても一時の良い夢を見ているとしたら? 


 おそらく豊は女との付き合う経験は一生ないはずだ(断言)。その夢を無闇に壊していいか分からない。


 アリスには「すぐに豊さんに本当の事を教えて!」と騒がれたが、どうすれば良いのかわからなくてなってしまった。


「だったら、現行犯で捕まえれば良いんじゃないか? 例えな亜由が豊くんにお金せびっているところを捕まえるとか? おそらく豊くんは、警察に訴えたりもしないだろうしね」


 そこで助け舟を出したのが聡だった。


「そうね。二人のデート中に尾行でもする?」


 ストーカーみたいな事をやっていたアリスは、ニヤニヤ笑いながら提案してきた。


「おま、楽しんでね?」

「ええ、だってあの豊さんが結婚詐欺にあってるなんて、ね?」

「うん、妹の言う通りかも。ちょと笑ってしまうよね。いかにも詐欺に遭いそうというか」

「おまえら、他人事だと思って失礼だ」


 そう言う誠だったが、何だか笑えてきた。確かに豊がこんな目に遭っているのは、ちょっとだけ面白い。


「お、豊のやつ。休日もデートするから夕飯いらないとか言ってるぞ」


 たった今、LINEが送られてきた。普段は使わないキャラクターの派手なスタンプもつけている。これは、相当浮かれているらしい。やっぱり少し笑えてきた。


「じゃあ、この日、尾行しましょう!」

「賛成! どんな馬鹿面で騙されてるのか見てみたいもんだな」

「わー、私もその顔みたいわ。作品のネタにしたい!」


 という事でアリスと二人で、休日、豊を尾行する事に決めた。


「面白そうだけど、僕は家でニートしてるよ。はあ、眠いし」


 聡は呆れていたが、実際面白くなってきたの、誠は止められなかった。


 夕飯は美味しく完食した。途中不味く感じたが、気のせいだったのかもしれない。


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