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最強の二人〜彼らの謎多き日常〜  作者: 地野千塩


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多様性とご近所の謎(10)

 時子の畑を後にすると、次は県道沿いの原田家に向かった。正直、二人とも原田家には行きたくないが、娘の晶子が何か知っているかもしれない。


 あの庭に残されたメモのキーワードで検索する。特に「攻め」「受け」は、BLのカップルを表す事が出てきた。BLといえば、あの晶子も腐女子だ。何か知ってそうだし、犯人の可能性もある。誠達をキモいと騒いでいたし、逆恨みでアイスコーヒーをぶっかけたと思えば、辻褄は合う。


 最初は露骨に容姿差別をしてくる晶子は、避けた気持ちはあったが、豊は案外強気だ。犯人を見つける為だったら、多少悪く言われても良いとか言っている。そんな豊を側でみていたら、強気で行くべきだと考えを変えた。それにしても、短期間でも豊じゃこんなに変わるとは。やはり時子の言葉の影響も大きかったのか?


 人は言葉によって変わると聞いた事がある。中卒で学歴のない誠だったが、図書館で本を読んだり、勉強自体は嫌いではない。豊が仕事では思うように実力発揮できていないのも、その影響かもしれない。熊木にドヤされるのは、メンタルが強めな誠でも、良い気分はしない。仕事でも豊をちょっと褒めてやっても良いかもしれないと思う。


「弱者男性」という言葉もやっぱり差別的だ。そう思い込んだ男性は、よりそうなてしまうかもしれない。思えば病気、障害、貧困など、人間を構成する全てではない。一部だろう。やっぱり一部で何かを判断するのが、差別的だ。いや差別そのものだ。


 こうして二人で畑から県道に出て、原田家に向かった。時子から貰った野菜は、豊が持っているのだが、かなり量が多く、採れたてで新鮮だ。このエサを上手く使って娘の晶子から、聞き出そう。


 さっそくチャイムを押すと、玄関から晶子が出てきた。前あった時と同じように芋臭い中学生だ。片手にはスマートフォン。スマートフォンのケースは、BLアニメの金髪碧眼の美形カップルのイラストが描かれていた。


「な、何?」


 前あった時より堂々と背筋を伸ばしている豊を見て、晶子はちょっと後退りしていた。ジャリという小石を踏む音も響く。


 誠も負けてはいられない。三白眼を鋭くさせ、晶子を見据えた。向こうは明らかにビビっている。しかし、ビビらせる事は目的ではない。採れたて新鮮な野菜を渡すと、晶子はバツが悪そうだった。さすがに前回の「キモい」などの発言は、良くないものという自覚はありそうだった。晶子はクソガキではあるが、サイコパスでは無いようだった。それだけは救いかもしれない。話せばわかる人間かもしれない。


 誠は全ての事情、そしてあのメモも見せ、何か知っていないか聞いた。


「何のメモ。私の字じゃないし!」

「本当かよ?」


 誠は疑いの目。しかし、豊は自身のジーンズのポケットからメモ帳を出し、何か文字を書かせた。確かに論より証拠だ。


 晶子は「私は犯人ではありません!」という文字をメモに書いた。


「誠っち、これどう思う?」

「確かにこれは……」


 あのメモと見比べる。あのメモは、お手本をコピーしたかのような美文字だ。一方、晶子が書いた文字は丸文字でマンガっぽい。ちいかわみたいな文字だった。


「本当か? 本当は美文字書けるに隠してるんじゃないか?」


 それでも誠は性悪説。再び三白眼で睨む。


「こんな美文字書くの無理だって! ほら」


 晶子はメモ帳をひったくって再び書く。「だから犯人じゃないって書いてるだろ!」とある。確かにちいかわみたいな文字で、この美文字を書くのは無理だ。もっとも、ちいかわ文字はマンガの中だったら可愛いが。


「しかし、この犯人はきっと腐女子のヲタクでしょ。プロットとか書いてるし、何か二次創作かやってるヲタクじゃない?」


 晶子によると腐女子は、二次創作に走るものも多いという。同人誌だけでなく、Web小説などでも活動しいる腐女子も多いらしい。


「だったら、晶子ちゃん、犯人の心あたりない?」


 豊は柔和な笑顔を見せる。誠の三白眼キツネ顔とは全く違うものだった。


「わからない。まさかあんた達をネタにして、BL小説とか書いてるヤツが犯人? だったら、家をのぞいているのも筋が通るけど」


 その後、晶子は大爆笑。


「でも、こんなキモいオッさん二人のBLはないわー。絵にならないw ネタにしたくないwww」

「ちょ、草生やすな! キモいって言ったな! っていうか俺ら単なる同僚だから! それに俺らはLGBTじゃねぇよ!」

「まあまあ、誠くん。僕らをネタにBLとか書いてたらおかしいよねー。僕も笑っちゃうよ」

「だよね! ウケるw」

「ちょ……」


 なぜか晶子と豊は一緒になって大笑いしていた。誠もその二人の雰囲気に飲み込まれ、思わず笑ってしまう。綺麗な笑顔というより苦笑だが。


 しかし、このメモの内容といい、自分達をネタにしてBL的な何かを創作している可能性はあるか?


 わからないが、腐女子の性癖など想像がつかない。キモいおじさん二人でも、萌える事は可能か? 晶子の様子を見る限り、可能性は低そうだが、今の段階では小さな可能性を排除するのも危ない気がする。


 一つ確実に言えるのは、犯人は腐女子な事だ。動機は不明で、まだ何もわからないが、それは確定と言っていい。豊からメモ帳を取り上げて、こう書く。


 ・犯人は腐女子

 ・俺らをネタ?

 ・しかし、動機不明。


 仕事でもメモをとりながら熱心にやった事は少ない気がするが、今は何だかヤル気が出ていた。


「で、晶子ちゃんは、本当になんか知らないの?」

「デブなおじさんが晶子ちゃんとか言うのキモいから」

「どーでもいいから、知ってる事は全部吐け」


 三白眼でキツネ顔のおじさん。そしてクマ顔だが、デブおじさんに囲まれてしまった晶子は、空を見ながら何か思い出す素振りを見せた。


「あ!」


 10秒ぐらいたって何か閃いたらしい。


「そういえば、荷島家のお嬢様。アリスちゃんだっけ? あの子も私と同じスマフォケースだった」


 印籠のようにあのBLアニメのイラストがついたスマートフォンケースを見せる。金髪碧眼の男二人が熱い視線を絡ませているイラスト。それを見ていると、あの美人お嬢様のアリスが上手く結びつかない。豊も疑問の思っているのか、首を傾げていた。誠も同感だが、メモ帳に素早く書く。


 ・荷島アリスも腐女子


 しかし、アリスとあのメモの雰囲気は、そっくりだった。それにあの娘も黒髪ロングだった事も思い出す。


 状況証拠も集まりつつあるのか?


 ・犯人はアリス?


 でもなぜ?


 誠達をネタに何かを創作していた可能性もゼロでもないが。


「一つ聞きたいんだが、晶子ちゃんが好きなBLってイケメンばっかり? ブサおじさんが主役カップルのとかある?」


 豊はブサおじさんなんて言ってる。自分の立ち位置もよくわかっているようだ。案外プライドは無いタイプなのかもしれない。


「そんなの無いよ。みんなイケメンばっかり。でも腐女子も色々いるから。お箸と箸置きにも萌える子もいるし。不細工おじさん達に萌えてる人がいてもおかしくはない? 趣味は悪過ぎるけど?」


 なぜか疑問系。まあ、実際にブサおじさん達を目の前にしたら、疑問系になるのもわかる!(自虐)


 問題は、アリスだ。あのお嬢様が犯人?


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