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最強の二人〜彼らの謎多き日常〜  作者: 地野千塩


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多様性とご近所の謎(9)

「という事なんですが、時子さん、何か知りませんか?」


 誠は、そう質問していた。


 ここは時子の畑である菜の花畑だ。そこで収穫を手伝いながら、時子に聞く。時子は普段、息子夫婦と畑を育てるいが、今日は時子一人。息子たちは用事があり、他県に出かけているらしいので、豊も引っ張り出し、手伝っていた。


 収穫は骨が折れる作業だが、普段の仕事もそこそこ体力仕事という事もあり、意外と辛くない。豊は汗だくになり、大変そうだったが、今は時子に褒められながら収穫している。熊木にパワハラされる仕事と違って楽しそうだ。


「さあねえ。でも、女の人影は見たわ。確か黒髪だったしら。豊っちの家のほう見てた」


 時子と豊はすっかり打ち解け、彼女は「豊っち」と呼んでいた。豊は満更でも無いようだった。この男は女にはモテなそうだが、ある程度上の方の女性にはモテそうだ。豊は孫や子供みたいだし。


 時子の証言を聞くと、やっぱり女が犯人だ。問題は動機だ。ストーカーか怨恨か。どちらの可能性も低そうで、謎すぎる。もしかしたら身近な人間が犯人の可能性がある。警察に通報する気分になれない。実際、レモネードをかけた豊も警察に連れて行かない方が良かったのだろう。


 三人でしゃかりきに収穫すると、あっという間に一区切り終わった。


「あら、二人ともありがとう!」


 時子はこの結果に喜び、お礼に菜の花を分けてくれた。これを配りながら近所の人に聞きこむといいとアドバイス。


「美味しい野菜をもらったら、みんな口は軽くなるわよ」

「そうですかね?」


 誠は首を傾げるが、時子と豊はノリノリだった。


「僕は犯人を見つけるぞ」


 特に豊はやる気があるようだった。


「そんな簡単に犯人は見つかるかね?」


 一方、誠はそこまで楽観的にもなれない。犯罪をする人間なんて、どこか頭がおかしい。豊もレモネードをかけるという嫌がらせをやった。余裕がなくなった末の犯行だが、殺人、泥棒、詐欺などはする発想はなかったという。やはり、そう言った行動をとるのは、リミッターが外れているというか、頭のネジが外れていると思う。犯人は、意思疎通ができ、会話が出来ると良いのだが。誠は極貧家庭の出なので、基本的に性悪説だ。チラリと無人販売所の方を見てみるが、泥棒されても、仕方がない気もする。


「大丈夫よー。男二人いれば最強よ!」


 時子も豊の負けず劣らず前向きだった。


「最強?」


 そんな言葉、誠の頭の中の辞書にはなかった。豊もなかったかのようで、目を丸くしている。


「そうよ。最強よ。この収穫だって早く終わったじゃない?」


 あまりにも自信満々に言われてしまい、なんだかそんな気もしてきた。確かにネットでは「弱者男性」と診断される。仕事も底辺。家も極貧出身。それでも、今は頭の中の辞書から「弱者男性」という言葉が消えている。


「そうか、最強か!」


 しかも、あの豊も自信満々に前を向いているではないか。レモネードをかけるような嫌がらせをし、挨拶もできないコミュ障だったのに。


「そうか、最強だと思うことにしよう」


 誠は豊に向きあい、手を叩きあう。そんな二人を見て、時子は応援するかのようにケラケラ笑っている。菜の花の葉っぱの青さが、陽の光を浴びてキラキラしてる。なんだか葉っぱにも応援されているようにも思う。


 何でも気の持ちようなのかもしれない。自分の事を「弱者男性」だと思い、卑屈になっていれば、ずっとそうかもしれない。


 心までは腐っちゃいねぇぞ!


 そう強く思いたい!

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