武器工房
あれからさらに肉やら工芸品やらの屋台を見るのに付き合わされた。初めは面倒だなと思ったが、肉は美味かったし工芸品の出来は中々で意外と興味深かった。桃色娘などははしゃぎすぎて城下町に来た目的を見失いかけていたが、正午の鐘が鳴った時に我にかえった。
「はっ…!危ないところだったわ!さてはこれもルークの罠なのね…!?」
「いや、お主のせいだろう」
わなわなとしながら怒る桃色娘。さすがにそれは濡れ衣ではなかろうか。
「そろそろルークが街に来ちゃうわ!あの揚げパンの屋台で食べるのは最後にして、武器工房に行って!」
「いや、まだ食べるのか?」
こやつは意外とよく食べるな。しかも時間がないと言いながらなぜまだ食べようとする。
「きなこ揚げパンは絶対食べなきゃなのよ!さあ!早く並ぶわよ!」
もはや叫びながら走って行ってしまった。やれやれ困った小娘だ。仕方なく桃色娘の後を追い、並ぶことにした。決してきなこ揚げパンという響きが気になったからではない。飯など数日食べなくとも平気なのだ。誤解してはいけない。
きなこ揚げパンはかりっとしてじゅわっとして美味かった。
ーーーさて、そんなこんなでいべんと?とやらを恐れる桃色娘を置いて単身武器工房に来た。
中にルークが入って行くのも確認済みだ。が、ここの店主はおそろしく気配を察知するのが上手い。子供の頃に天井裏で潜んでいたら槍で突かれたことがある。あの時は驚いたものだ。
高い木の上から店内を覗くのも無理だ。これも子供の頃に小刀を投げられた。あの時はその正確さに感心したものだ。
そもそもこそこそした事が嫌いらしく、店内に潜ませてくれと頼むのも無理だ。見た目もいかにも歴戦の戦士と言う顔をしている親父だ。今日も万一攻撃を受けた時のために、一応だが服の下に鎖帷子を着込んできている。
とにはかくにも、もはや取れる手立てはただ一つ。
「頼もう!」
正面突破のみ!そう思い勢いよく店の扉をがらりと開いた。ら、怒られた。
「うるせぇ!おめぇは潜むか殴り込むかの二択しか無えのか!?」
開けた瞬間にこれである。ではどうすれば良いと言うのか。解せぬ。まったくもって気難しい店主だ。
ふむ、店主の目の前にいるのはルークか。こちらを向いたまま口をぽかんと開けて間抜け面を晒している。世界の敵にしてはお粗末な面だ。手には洋弓を持っている。む?
「それは珍しい形だな。狩猟用か?」
「お、わかるか。このコンパウンドボウは大型の獣を狩りやすいように工夫されているんだ。俺の地元では良く使われているんだが…」
「今から分解するんだが見せてやろうか?嬢ちゃん興味あるだろそういうの」
ルークが弓について説明をし出すとすぐに店主も乗ってきた。この店主は武器の話になると目の色を変えるのだ。しかし確かに興味はある。ルークの地元というと、辺境で使われている狩猟弓ということか。王都で鷹狩に使われている物とは幾分形が異なるようだ。ガルシアの家でも弓矢の試し打ちをさせて貰ったことはあるが、それともまた違う。どのような威力なのか、精度はどのくらいなのか今後のためにも確認しておきたいものである。
「ぜひ頼もう」
「何ならその後試し撃ちもしてみるか?店の裏にある的場を借りて良いだろ?」
「あぁ、好きに使え」
なんと!試し撃ちもさせてくれるのか。中々話がわかる奴ではないか。是非も無い。
ーーーそのまま三人で武器談義が盛り上がり、試し撃ちが終わる頃には日が暮れていた。




