王太子の事情
今回は王太子クロード目線です
キリーから屋敷に招待された時、嬉しくてすぐに侍従長に報告した。すぐにでも父たる国王に許可をもらうためだ。もちろんその許可とは招待日当日にエイル公爵家に出かけるための許可だ。僕が求めたのはそれだけ。なのになぜこんなことになったのか…。
「エイル公爵家の長女、キリルシュカ=エイルとの婚約が決まった」
呼び出された謁見室。国王直々に、厳かにそう告げられた。
「へ」
いきなり予想外なことを言われ、僕の口から空気が抜けたのは仕方ないと思う。
「婚約…ですか?」
「そうだ。こちらから打診を出したのちすぐに公爵家から返信がきて正式決定した」
「正式決定…」
そりゃそうだ。よっぽどの事情でもない限り、王家からの婚約の申し出を断るなんてことはないだろう。
キリーは内心どう思っただろうか?
そんな大事なことを勝手に決められて怒ってないだろうか?
基本無表情なため普段から何を考えているかさっぱりわからないが、あの子にだけは嫌われたくないとなぜか思った。
息子のうかない顔を不思議に思った国王は尋ねた。
「どうした?お気に入りの令嬢なのだろう?」
あぁそうか。ガルシアも一緒だったとはいえ何度も王城に呼び出していた。そういう意味だと捉えられても仕方がないことを自分がしていたのだ。
侍従長を始め周りは気を利かせたつもりなのだ…。
「そう…ですね。気に入ってはいます。ですが…」
婚約などは頭になかった、そう言おうとして、はっと気づいた。
キリーに出会って半年あまり。つい先日もガルシアとのことを聞いてやきもちを焼いたばかり。3人で遊ぶのも楽しい。だけどキリーを独り占めしたいと思ったことはなかったか?
こんなにとんとん拍子に婚約が決まったのだ。公爵家は幼いうちの婚約に賛成ということは確実だ。もしここで自分がこの婚約を否定すればすぐにでもキリーには次の婚約者が当てられてしまうかもしれない!
「…いえ、ありがとうございます」
受け入れてしまった。
キリーの気持ちなど考えていないこの婚約を。他の誰かに取られたくないなどという子供じみた理由で。しかも王家の特権を振りかざし。
後ろ暗い気持ちを感じつつも、僕はキリーを自身の婚約者として縛り付けることにしたのだ。
大事にしよう、キリーのことを。
こうしてクロードは素直な恋心には気づかないまま、僅かな罪悪感が生まれてしまった。
国王「なんか息子暗くなかった?」
王妃「マリッジブルーじゃない?」




