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黒き乙女の鬼語  作者: 紅河崎アリス
人魚姫
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雷槍

人々はお金で貴いものは買えないという。

そういう決まり文句こそ、貧乏を経験した事のない何よりの証拠なのだ

〜ギッシング〜

無慈悲な雷槍が空間を抉り取りながら迫ってきていた。


『くぅっ…』


霊華は苦悶の声を上げながらその場から跳躍。


そのまま隣のマンションに飛び移りアリーヤの射程範囲から離れマンションの影へと隠れる。


『おいおい、糞女ファッキンガール!そんな風に逃げたってこの《雷天狼牙ヴァジュランダ》からは逃げられないぜぇっ!』


そんな霊華に対しアリーヤは楽しそうに高らかに雄叫びを上げながら右手に持っていた雷槍を霊華のいる方面へと投擲する。


だが、霊華のいる詳しい場所はわからなかったらしい。


霊華のいるマンションの目の前にある少し高めのマンションへと槍は直線に進んでいく。


『隠れて正解だったようですね。あの修道女が短気で助かりまし…あっ…』


霊華はそう呟こうとして止まった。


いや、止まらざるをえなかったのだ。


突然自らの脇腹から槍が生えてきたのだから。


『そんな、どうして…』


霊華は脇腹からおびただしい量の血液を流し、さらに口からも垂れ流しながら呟く。


自らの疑問を。


なぜ槍が自分の脇腹に突き刺さっているのか?


明らかに眼前のマンションによって守られている筈の自分に。


なぜ、突き刺さっている?


『おっ、突き刺さったみたいだな。やったな処女ヴァージン卒業じゃん。太くて逞しいだろう?あたしの雷天狼牙ヴァジュランダは』


『…なぜ、この槍が私の脇腹に?』


霊華は自らの痛む脇腹を抑えながら立ち上がりアリーヤへと問いかける。


そんな霊華を見てアリーヤは笑う。


『あんた、インドの伝承は知ってっか?』


どうやら、説明してくれるらしい。


だから、答える。


『ええ、まあ一応少しくらいは』


『んじゃ、話が早い。この槍はな。そのインド伝承から来ている槍なんだ』


ーーヴァジュランダ。


それはインド伝承・ラーマヤナに出てくる英雄ラーマが聖者ヴィスバーミトラから授かった雷の牙と呼ばれた神々の持つ投げ槍の名前である。


神々の化身である猿の王スグリーパの敵である彼の兄バーリを倒した伝説の槍である。


『曰く、全てを貫き全てを射抜く投げ槍ってね。効くだろう?私の愛槍は。処女ヴァージン喪失の心地はどうだい?糞女ファッキンガール


そう言ってアリーヤは槍を拾い上げ構え直した。


『最悪ですね。母親を尊敬したくなるくらい』


『はっ、強がるにはまだ…早いんじゃあねえのか⁉︎』


霊華の皮肉を気にせずにアリーヤは霊華へと襲いかかる。


槍を斜め上から斬り下ろしつつ持ち手を切り替えして切り上げ。


そのまま大きく槍を回転させ突きへと流れを持っていく。


霊華はそれを紙一重でかわしながら足技で対抗する。


まずは重心を下げアリーヤの顎めがけて蹴り上げる。


それをアリーヤは槍で受け流しながら柄の部分で霊華の足を払う。


見事に足を払われ霊華は体勢を崩す。


アリーヤはそこ目掛け全力で槍を投擲する。


それで戦況は終わりだった。


《化物》と《狂人》の闘争はそんな短絡的な終わり方をした。


槍は霊華の胸部をやすやすと貫き霊華ごと壁に突き刺さる。


霊華はピクリとも…


動かない。


『あーあ、《化物》もこんな程度か。つまらねえなー』


そう言ってアリーヤは霊華に向け止めを刺す為に歩き出した。

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