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黒き乙女の鬼語  作者: 紅河崎アリス
人魚姫
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Do It Yourself

「あなたが一番影響を受けた本はなんですか」

「銀行の預金通帳だよ」

〜バーナード・ショー〜

『これを見るとあれを思い出しますね。えーっと…なんでしたっけ?』


けたたましい音を立てながら回転しているリズの固有武器“斬殺麗美”を手の皮が裂ける事も気にせずに片手で受け止めながらそう言って霊華は笑う。


だが、リズは答えない。


そんな事を答える暇はないと言わんばかりに己の武器に力を込めようと歯を食いしばっているからだ。


『ああ、そうだ。思い出しました。ポレポレですね』


霊華はそんな目の前の少女の様子を知ってか知らずか続けた。


だが、リズにはポレポレがなにかわからないらしい。


霊華の話を無視して更に力を加える。


『知りませんか?ポレポレ。私が学生時代にはかなりお世話になったんですけどね。英文を読むには持ってこいの難易度でしたし特に書くわけでもないので身体がボロボロでも目さえ無事なら読めましたから。その中の長文の中にたしかあったんですよ。そう、たしかあれは“DIY”と言うんでしたっけ?』


『…なんの話?』


『おや、ようやく反応してくれましたね。重畳です。あれはたしかイギリスだかアメリカだったか…古い記憶なのであまり覚えていませんが。その長文の一説にこうあります』


ーー曰く、イギリス人だかアメリカ人は物作りが趣味になっていると。


“Do It Yourself”


あなた自身でそれをやれ。


『まあ、つまり自分で出来ることは自分でやりなさい。ってことですよ』


霊華は笑いながら説明を続ける。


相手の武器には万力のような力を加えながら。


少しずつ。


ゆっくりと。


時間を稼ぐために。


『だからなに?自分でやれることは自分でやる。他人には頼らない。当たり前の事だ』


『ああ、貴方はそうでしょうね』


リズがそう答えると霊華は待ってましたとばかりに答えを返す。


まるで、その言葉を待ってましたとばかりに。


だからこそ、リズはまた嵌まっていく。


霊華の時間稼ぎに。


『なんで…あたしが自分でやると?』


『ええ?だって貴方のこれって…』


『リズ‼︎早く“斬殺麗美”をその女から取り返しなさい!』


もう一人の女がリズに向け叫んだかもう遅い。


霊華はそう思い笑いながら続ける。


『家を作る為の木材を切る為に使っているんでしょう?』


リズと言う名の少女の精神を刺激するには十分すぎる言葉を。


そして、リズはその挑発に…


乗ってしまう。


『てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!!!!』


リズは激怒しながらバックステップ。


その時に自らのたった今小馬鹿にされた武器を霊華から取り返しそのまま前へと跳躍する。


狙いは単純。


“斬殺麗美”を振り上げてそのまま下ろすだけ。


先ほどは油断したが今度はいける筈だ。


自分のこの武器に切れないものが。


削れないものがある筈がない。


そんな気持ちを込めてそれを霊華に向けて振り下ろした。


だが、霊華はその場から動かない。


諦めたわけではない。


素直に敵に切られる為ではない。


削られる為ではない。


もう、動く必要がないからだ。


この少女との戦闘は既に…


終了している。


そうして霊華が拳を構えた瞬間。


それは起きた。


霊華の狙い通りに。


『…え?』


目の前に見えるのは少女の驚きの顔。


まるで世界が二回転半もしてしまったかのようなとびきりの驚き顔だ。


当たり前か。


自分の愛武器が振り下ろそうとした瞬間に粉々に空中で砕け散ったのだから。


そんなリズを見て霊華は一言。


『悪くない』


そう言って霊華は拳を振り上げ空中にいる少女に向け全力で振り抜いた。


突如、少女は霊華の拳が当たると同時に吹き飛ぶ。


マンションの屋上から軽く跳ね飛ばされ近隣の建物に突っ込む。


だが、まだ止まらない。


一軒、二軒、三軒。


それでもまだ止まらない。


あたりに轟音を轟かせながら更に吹き飛び続ける。


そして、神鳴町警察署の壁に直撃してようやくリズの勢いは止まった。


距離にしておよそ一km。


リズの様子はまるで見えないがそんな距離まで殴り飛ばせる力で殴られたのだ。


最早瀕死だろう。


『さってと…あと、一人ですか』


霊華は地面に落ちているリズの固有武器“斬殺麗美”の落ちた破片を拾い上げながらもう一人へとその身体を向けながらわらった。





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