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黒き乙女の鬼語  作者: 紅河崎アリス
ショートストーリー
44/79

弱点

貴様たち女は神々から授かった顔があるのに、それを化粧粉で塗りたくって全然別物のお面を作り上げる!

〜シェイクスピア〜

『はい、どうぞ』


それから三十分後、ボクと粉雪ちゃんは神鳴町警察署の前に訪れていた。


目的はもちろん雪さんからのお使いであるワインを受け取るためである。


『ありがとうございます、霊華さん』


『いえいえ、気にしないでください。どうせ、飲む暇もありませんし』


霊華さんは頼んでいたワインをすぐに用意してくれ少し気落ちした様子で渡してきた。


どうやら、少しの休みもないほど多忙に追われているらしい。


なんだか少し悪い気がしないでもないな。


『そんなに大変なんですか?』


『ええ。まあ、私の相棒が消えて以来あの子の仕事も全て私がやってますから大変なのは当たり前なんですけどね』


…相棒。


それは、自らを裏切り姿を消した知藺乃さんへの未だ潰えぬ信頼か何かなんだろうか。


それとも、彼女の裏切りを気付けなかった自分への皮肉なんだろうか。


霊華さんの内心は計り知れない。


裏切られた時に全てに当たり散らしたボクとは違い彼女は自らの心中に全てを隠し通しているのだから。


『…そうですか。ワインありがたくいただきます。ほら、粉雪ちゃんも…粉雪ちゃん?』


ワインのお礼を述べ粉雪ちゃんにも謝礼をさせようとすると粉雪ちゃんはしゃがみ込んでなにかを弄っていた。


『………はい?何か言いましたか?』


『いや、だから粉雪ちゃんも霊華さんにお礼を…って、なにやってるの?』


『いえ、猫がいたので一緒に遊んでたんですが。ほら、可愛くないですか?』


そう言って持ち上げたのは夜の闇のように真っ黒な黒猫。


人懐こい奴なのか粉雪ちゃんに持ち上げられても気にせずにクワァと大きなアクビをしながら体を伸ばしている。


『本当だ。確かに可愛い。しかも、人懐こい奴だね。あ、霊華さんも一緒に撫でますか?』


粉雪ちゃんの腕に抱かれた黒猫を撫でながら霊華さんにも尋ねてみる。


意外と霊華さんも猫好きだったりして。


そう思いながらの質問だったのだが。


『…霊華さん?』


振り向くと霊華さんはプルプルと震えながら隠れていた。


どうしたんだろうか。


彼女にしては珍しい。


『ち…近寄らないで下さい。猫は…私、猫だけはダメなんです』


そう言う彼女の足はまるで産まれたての子鹿のように震えていた。


…なぜか、知ってはいけない情報を知ってしまった気分だ。


そう思ってる間も子鹿のように震える霊華さんと虎の様に粉雪ちゃんの腕の中で踏ん反り返っている黒猫の睨み合いは続く。


『そ、それでは、私は、失礼します!』


遂には睨み合いに耐えきれず霊華さんは逃げ出してしまった。


うむ、霊華さんの意外過ぎる弱点を知ってしまった。


やっぱり、誰しも苦手な物くらいあるんだな。


…ん?苦手な物?


その瞬間巻き起こったのはとんでもなくつまらなくくだらない発想。


でも、知ってみたい。


見てみたい。


『…なぁ、粉雪ちゃん』


『はい?』


『雪さんの弱点…知りたくないか?』


吸血鬼・篠宮雪の弱点と彼女が慌てふためくところを。

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