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黒き乙女の鬼語  作者: 紅河崎アリス
食人鬼
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鳳仙院紅葉

俺のような人間の真似をするな

〜西口彰〜

端的に主観的に言わせて貰うとボクは人類の中でも五本の指に入る弱者である。


勿論ではあるがそれは身体能力だけに限った話ではない。


心理的、人間的、身体的、学術的、精神的。

全てを総合化した結果。


ボクが弱者と言う分類に属する事は必然的と言っても過言ではないだろう。


では、なぜボクが全てに措いて能力的にずば抜けている食人鬼や他の様々の敵を倒してこれたのか。


答えは簡単である。


運が良かったからだ。


例えば、少し前に戦った金髪と黒髪の食人鬼達。


彼らを例に出すとよくわかるがボクは運でしか勝てていない。


あの目にも留まらない早い攻撃。


あれをかわせたのはただの幸運だ。


限りなく奇跡にも近い。


そして、ボクの攻撃時。


彼らはたまたま偶然ボクの"領域"に入っていたに過ぎない。


だから、ボクは勝てた。


わかるだろうか。


本当にボクは運が良かっただけなのだ。


これで、わからないなら日常的に一つ例を挙げてみよう。


例えば、試験前にとても頑張って勉強している青年がいる。


夜も寝ずに真面目に几帳面にあるいは狂気的に彼は勉強した。


そして、彼は見事いい結果を残せた。


素晴らしい。


頑張っていたからいい点が取れたな。


口々に人々は言うだろう。


だがしかし、これにはもう一パターン解釈がある。


おお、運が良かったな。


当て勘で勉強したところが当たったな。


と、全てを運のお陰としてしまう解釈の仕方もある。


多分、誰もしないだろうが。


つまりは、そういう事だ。


"運"は"努力"にも勝る事がある。


まあ、なんの証明にもなっていないが、ボクの勝利は運によるものでありボク自身は非常に弱い殺人鬼である。


と、戦闘中ふと思った。


薄暗い工場の中、ボクは走っていた。


いや、決してボクが太ってしまったからダイエットをしている。と言うわけではない。


とある攻撃をかわしているのだ。


『しつこい女性は嫌われますよ!』


後ろから感じたのは疾風。


そして空気を引き裂くような風切り音。


なにも考えずに横合いに飛ぶ。


転がりながら隠れた障害物の後ろで聞こえたのは破壊音。


振り向くまでもない。


きっと振り向いた先にあるのは粉々に崩れ去った壁だろうから。


『…それは、しつこい男は嫌われる。じゃないかしら?凜』


その弓矢を射ってきた人物は冷静に返事をしてくる。


その声を聞いた瞬間、ため息を吐きたくなった。


この弓の腕前からしてもしやとは思っていた。


だけど、彼女が敵陣にいるなんて。


『人のボケに冷静に返さないで下さい。紅葉さん』


ゆっくりと障害物から姿を現しながら凜は言った。


そして、顔を上げる。


そこにいたのは女性。


キリッとした表情に黒髪を後ろで纏めた所謂ポニーテールと言う髪型。


七花さんと同じくらいの身長にプロポーション。


間違いなかった。


彼女の名前は鳳仙院紅葉。


雪さんの付き人だった人だ。


『ああ、それはすまない。あまりそういうのがわからないんだ』


そう言って彼女はまた弓を構えた。

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